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45.何色の目

「こんにちは、成瀬君。噂はかねがねいろいろなところから聞いているよ。まずは遠くからわざわざ来てくれてありがとう、歓迎するよ」


扉を開けた先に待っていたのはエルサと同じ深紅の髪を腰まで伸ばした、年齢を全く感じさせない超絶美青年な男性であった。肌は白く、顔は整っておりその目はエルサと同じように朱く輝いている。

おそらくこの人が・・・。


「フェニクス家第19代当主、カイム・フェニクスだ。よろしく」


エルサのお父さんにして現フェニクス侯爵家当主のカイムさんだ。


この国にはひとえに貴族といっても公爵、侯爵、伯爵、子爵、男爵というように権力や領地によって位がわけられており、その爵位からわかるようにこの国でもかなりの有力者だ。

だからこそいろんなもめごとや後継ぎ争いがめんどくさいことになっているらしいが・・・。

この人も今はさわやかそうに笑っているけど裏では大変なんだろうな。


その美貌にほれぼれしていると差し出されていた右手に気づけずにいた。


「ユーキ! 前!!」

「え? あぁ! ごめんなさい!!」


急いで差し出されていた右手に握手で返す。エルサの声がなければ気づかなかったところだった。

これって不敬とかでたたっ切られたりするのかな・・・。


「いやいいよ、それにしても君の右手はすごいね。全部やけどの跡かい?」

「え、ええまぁ、僕の魔法の影響が大きいですね」

「自分の身をも焦がす炎魔法か・・・。ふむ、ますます興味がわいてきたよ。いったん部屋について落ち着いたらまたここに来てほしい。そこで色々聞きたいことがあるんだ。エルサ、成瀬君を客人の部屋に案内してあげなさい」


「わかりました。行こうユーキ」

「え、うんわかった。失礼します」


先に頭を下げすたすたと歩いていくエルサにおいてかれまいとすぐにお辞儀をしてエルサについていく。


部屋の扉を開け出たところでエルサはうつむいたまま俺の事を待っていた。

「エ、エルサ、どうしたの?」

「私には見向きもしてくれないのにユーキには目を見て話してくれるのね」

「エルサ?」

「やっぱり私なんて必要とされてないの」

「エルサ!! しっかりしろ!! どうしたんだよ急に!?」

我慢できなくなりうつむくエルサの肩を両手でつかみ揺さぶる。

それでようやく意識がしっかりしたようで顔を上にあげる。


「っ!! ご、ごめんユーキ、ちょっと考え事してて・・・・ついてきて」


エルサがくるっと背を向けずんずん歩いていく。

このように情緒が不安定になる様子はあのバグハンド戦以降増えてきた気がする。

さっきまであんなに楽しそうに話してくれていたのに今はもう振り向いてすらくれない。

声をかけようと思ったが喉まででかかっところでやめた。今の俺が何を言っても逆効果だ。

とりあえず俺も何も話すことなく彼女の後ろをついていくことにした。



今、俺の前を歩く彼女の目は何色に光っているのだろうか。



*****


案内された部屋のベッドに一度横たわり天井を眺める。

やはり最近のエルサの様子は明らかにおかしい。もしかしたら何かあったのかもしれない、いやあったに違いない。原因として考えられるのは今のところ一つしかないが。

どうしたもんか・・。


コンコン


考え事をしていると部屋のドアがノックされる。


「・・・どうぞ」

「失礼します」

凛とした声とともに入ってきたのは一人の使用人らしき風貌をした女性であった。

この屋敷にいる大半の人と同じようにその短髪は赤色に染まっており目まで燃えるような紅色だ。


「私はこの屋敷に使える使用人、エマと申します。何か御用があれば何なりとお申し付けください」

「よろしくお願いします・・・。」


この屋敷の使用人らしき人と初めて向かい合ってちゃんと喋るがどこか違和感がある。気にならないと言えば気にはならないがなんかこう、しっくりこない感じがある。


「早速で申し訳ありませんがご主人様がお呼びになっておられます。お疲れのところ申し訳ありませんが会談のほどよろしくお願いいたします」

「わかりました、すぐ準備します」


そう言ってベッドから立ち上がり服のしわを伸ばしていく。

流石にみすぼらしい格好で行くわけにはいかないよなと思いベッドに寝てしまったせいでしわができた服から着替えることにする。が、その時最初に彼女に対して感じた違和感の正体が若干分かった気がした。

ついでだし今軽く聞いておくか。


「エマ・・・さんでしたっけ? どうしてあなたは・・・・」



*****


コンコン


「失礼します、成瀬夕貴です」

「待っていたよ、中に入ってくれ」


部屋の中から返事が返ってきたためその重厚なドアを開け中に入る。後ろにはエマさんがついてきており部屋に入ると扉の前で控えている。

中にはカイムさんしかいないようだ。


「いやはや、本当に急に呼んでしまってすまなかった。どうしても君の魔法が気になってね。今回のパーティーにもぜひ参加していってほしい」

「え・・・、でもこのパーティーはフェニクス家だけが参加するものではないんですか? 俺みたいな部外者が入ったらいけない気がするんですけど」


「確かに今まではそうだった。ただ今回は違う。それに現当主の私が許可したと言えばだれも口答えはできんよ。早速で悪いが君の炎魔法を見せてくれないか?」

「こんな本だらけのところで発動していいんですか? 多分全部燃えてしまいますよ」

「心配には及ばないよ。この部屋は私の炎にも耐えれるように特殊な結界を張っているから燃えることはないよ。君の魔法が私以上であったら燃えてしまうがね」


「わかりました。じゃあ発動しますね。 神話の拒絶(カグツチ)


詠唱とともに右手の掌がほんのり輝いたと思えば爆風があたりに立ち込め次の瞬間には俺の右手に一太刀の刀が握られている。そして毎度のことながら熱い。


「・・・これが神話の拒絶(カグツチ)。すごい熱量だ、私のそれに引けを取らない・・・。そうだ、試しに軽い魔法を放ってくれないか? 私のものより強力ならこの部屋の結界が壊れるはずだ」

「わかりました。確かこっちのほうは庭が広がってるだけですよね?」

そういって窓の方を指さす。

「ああ、こっちに打てば特に問題はないはずだ」

「よし、行きます。炎舞壱ノ太刀 閃火」


その紅く燃え盛る炎にその名を呼んでやると、瞬く間に真っ白な光を輝く刀に豹変する。

それを横なぎに払うといとも簡単に目の前のものを焼き払い、横一線にぽっかりと穴が開いてしまった。

だが俺ももう割と暑さが限界まで来ていたため技を放つとともにカグツチを解除したがその爪痕はあまりにも強烈に残っていた。


「なっ・・・・。まさかとは思っていたがこんなにいとも簡単に超えられるとは・・・・・。本当に君はすごいな。その魔法、じっくりと見させてくれないか!?」


俺のはなった魔法にかなり興奮している様子で俺の手を握るカイムさんであったが俺は一つの疑問点が生まれていた。いや、もはや疑問は一つなんかじゃ済まない。考えれば考えるほど俺が知っているフェニクス家の関係者の印象と今の印象がかけ離れている。そもそもこの大型連休にパーティーがあるなんて知らなかったし。


「二つ・・・質問してもよろしいですか?」

「なんだい? 私が答えられることであったら何でも答えるよ」


「一つ目ですが、エルサにはこうやって今の俺みたいに褒めてあげたことがありますか?」

「ないな。それで、二つ目はなんだい?」

「・・・では二つ目ですが」




「俺の魔法を何に使おうとしているのですか?」






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