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4.ルーン視点

私は対魔物討伐精鋭部隊、3番隊隊長 フォルゴレ・ルーンだ。

長ったらしい名前からしてわかると思うが、私の仕事は街に出現した魔物を駆逐する。端的に言えばそれだけだ。だが魔物との戦いは常に死と隣り合わせだし、私はこの仕事に誇りを持っている。



この国において魔物の出現の報告はワープゲートを感知する装置によるものと、国民からの通報によるものの主に二つに分けられる。

ただこのワープゲートを感知する装置、通称ワープレーダーは一匹の魔物の襲来において、その時に発せられるエネルギーが製作段階の想定よりも低いためその出没を感知できない時があるという欠陥が最近になって判明した。

しかし、魔物は基本群れをで生活しているので単体で攻めてくるということはほぼないことから半ばそういうもの、単なるエラーだとして放置されている。


国家はそれをひた隠し、世間体にはワープレーダー頼りではなくちゃんと通報することを呼び掛けているが、あほな大人ほどこのワープレーダーを過信している。

私たち国家の軍人も一部のものはこれを直すように抗議しているが老害どもは首を縦に振らない。

そのせいで先日とある中学校に魔物が出現したとき私たちのもとに出撃命令が来るのが遅かったし、あわや大惨事になるところであった。



*****



通報による知らせを受け全速力で目的地に向かいもうすぐ着くといったところで見たあの巨大を雷を見た時、わたしはすべてが終わったと思った。魔物により大切な国民が蹂躙されたと。


だが、いざ私たちがその中学校駆け付けるとそこにはもうすでに魔物はおらず、グラウンドの中央に大きなくぼみができておりその中央には少年が黒煙を上げて倒れていた。


私たちがその少年のもとに駆け寄ると同時にぼろぼろの少女が近づいてきて私たちに泣きながら言い放った。


「なんでこんなに来るのが遅いんですか! もう少し早ければ兄はっ! 兄は・・・」


・・・そうか、間に合わなかったのか。


「申し訳ない・・・すべて私たちの責任だ」

「責任とかそんなものどうでもいいんです! 兄は・・・」


おそらく妹だと思われる少女にかみつかれていると、隊員の一人が声を上げた


「隊長!! まだかすかですが脈があります! すぐに病院にいけば間に合うかもしれません!」


それを聞いてからの行動は早かった。巷で雷神とよばれている力のありったけを振り絞り部下を置きざりにする猛スピードで国で一番大きな病院に彼を担ぎこんだ。そして次の日には彼が全回復したという知らせを聞き、心の底から安心したのだった。だがこの時点であの雷は魔物が落としたものなのか、はたまたほかの誰かが魔物に向かって放ったのかはわからなかった。


*****


あの事件が起こってから4日後だったか、私はもう一度謝罪をするためにあの中学校を訪れてあの少女を呼び出してもらった。


「あの件は本当に申し訳なかった」

「いえ・・・、私はもう大丈夫です。ただ、兄には一度謝っていただきたいです。回復したとはいえ、一度瀕死になっているので」

「ああ、もちろんだ。今その兄はどこにいる?」

「兄でしたらこの中学校の向かいの公園に・・・あっ、でももう兄には先に帰ってくれと伝えてあるのでもしかしたらもう帰っているかもしれません」

「そうか、では日を改めてまた来よう。少し話が変わるが、あの時落ちた雷は・・・」


そこまで言いかけた時だった、あの時と同じ轟音と閃光があたりを覆いつくす。

二人で顔を見合わせたと同時に教室を飛び出て音のした公園へ向かった

案の定というべきか、そこにはこの前と同じようにクレーターがあり、黒煙を上げながら少年が倒れていた。




*****


わたしとあの少年は何かの因縁でもあるのだろうか。

2回目の落雷を見てから3日後くらいの事だった。あの件の少年が再び担ぎ込まれた病院から通報があったのである。またもやワープレーダーは反応しなかったが。

ワープレーダーに出ずに通報があったという最悪の状況で出現したのは、氷の竜とのことだったのでとりあえず隊員の中から炎魔法に特化した精鋭部隊を引き連れ、全力で向かった。



出現場所の屋上の扉を勢い良く開けるとそこには二匹の氷の竜と人のような、木のような何かであった。

この前のように後手に回ってたまるかと後衛の隊員に最高火力の炎魔法を浴びさせる。

ちょっとは効いててくれという思いもむなしく、その2匹の竜に難なく防がれてしまった。

昔、ワープゲート越しに現れた氷の巨人をいとも容易く葬った我々討伐部隊が誇る渾身の炎魔法がである。



あまりの力量の差とあっけなさに、もう勝てるわけがないと全員が思ったのであろう。

みな同じように肩をがっくりさせ下を向き、死の覚悟を決めた時である。

急に氷の竜、いやそれだけでなくあたり一面を覆っていた氷がすべて消えた。

それと同時に屋上の中央にいた何かの正体もわかった。

・・・あの少年だった。



*****


少年の病室で話を聞くことになりとりあえず分かったのは、この少年の名前は成瀬夕貴、その妹は成瀬レイであるということである。試しに雷について、さも今知ったかのようにカマをかけてみると見事に引っかかった。これであの雷と今回の氷魔法はこの少年が発動したということも分かった。



・・・正直かなり困惑したし、どこまで本当かわからない。

何よりこの少年はほぼ魔法は使えないのに強力な魔法()()は使えるといい始めたし、妹のほうはすでに知っていたという顔をしている。


どうしようもなくなった私はとりあえず一時休戦という形をとり、退院後に詳しい話を聞くことにした。

上への報告もしなければならないからな。


また、その間にいろいろとこの少年についても調査しておくことにした。

幸いにもこの病院は王国立であるためこっちが要求すれば大体の調査はさせてもらえる。

少年には悪いが隅から隅まで調べさせてもらおう。



この数日間でいろいろなことがありすぎたが、とりあえずはこの少年---成瀬夕貴が大体のことに関わっていると胸にしまい、彼が退院するのを待つことにした。










評価、誤字脱字報告、コメント本当にありがとうございます。

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