33.負けられない戦い
午後の部が始まり2回戦の相手校、ブロンズ学園との試合も快勝に終わった。
2回戦といっても出場校が8校しかいないからもう準決勝というくくりになってしまうのはなんだか変な感じがするが形上は決勝にコマを進めたということになった。
試合内容としては体を動かしたくてうずうずしていた男子たちがカリバンを筆頭にして猪突猛進に駆け抜け俺や柊さんは後方支援に回り血気盛んな奴らを好きなだけ動かさせてやったところ開始10分でリーダーを含む全員を倒すことができた。俺らのチームのリーダーであるエルサも我先にと戦場を駆け抜けていたから若干ひやひやはしていたがなんてことはなかった。
続く試合、弘人が属している学園のフロイド学園も2回戦をものにし、決勝は当初の予定通りアドミラ学園VSフロイド学園というものになった。
フロイド学園が決勝にコマを進めた時の観客の歓声は俺らの比じゃなかったことから俺らのほうが人気はないということが分かってしまったが仕方がない。
決勝戦の開始時時刻が刻一刻と迫る中、俺らは控室で最後の選手ミーティングを行うことにした。
「もう結果はみんな知ってると思うけど私たちの決勝の相手はフロイド学園になったわ。この学園の試合を両方私は見てたけど、見た感じリーダーの東雲君を筆頭にあと二人の選手が相手陣地に攻め入ってそれをほかの選手たちが支援するって感じだった。だから鍵となるのはこの三人ね。」
「俺は自分の調整に時間を割いてたからわかんねえんだけどよ、そいつらの得意な魔法の属性はなんだったんだ?それが分かってりゃ対応もしやすいだろ」
「弘人・・・じゃなかった、東雲君は全部の魔法を使ってたよ。見た感じ得意そうなのは火っぽいけど。あとの二人は光と水だったかな」
「おっ!なら俺の水魔法とは相性がいいじゃねえか!ならこっちは接近戦に強いやつが三人をマークする感じでいいんじゃねえか?」
「そうだね、カリバンはこの三人のマークについたほうがいいと思う。あとは・・・どうする?」
「そうだなあ・・・。やっぱり私が行くしかないんじゃない!!」
「エルサは自分がリーダーだってこともうちょい自覚してくれ・・・。まあ負けるとは思ってないけどさ」
「ぶー、じゃあ誰がこの三人を主に相手取る?カリバンだけじゃきついんじゃない?」
「・・・わたしが・・・いく・・」
「私も行きましょう。光属性なら私もやりやすいですし」
「俺もいく!!」
「ほかはいない?いなさそうならこのあたりにやってもらうけどいい?・・・いないみたいね。じゃあとりあえずはカリバン、リラ、レイ、ユーキが頑張ってその三人とやりあって後の子は三人以外を抑えたり後方支援だったり遠距離攻撃だったりでいこうかな!あとだけど、決勝戦だけはチームがまとまったところに転移されるとは限らないらしいの。だからとりあえず合流することを目標にしよう!!!柊さんがそこはうまいことやってほしいな。あなたが一番早いだろうし。じゃあみんなこんな感じでいいかな」
みんなの意見が一致したところで最後のミーティングを終える。
ちょうどそのタイミングで控室内にアナウンスが響く。
『あと3分で決勝戦、アドミラ学園対フロイド学園を行います。選手の皆さんは準備してください』
円になっている周りのチームメイトをぐるっと見渡す。
みんな表情は真剣そのもので負けたくないという意志を強く感じる。空気がひりついているのが分かる。
『時間になりました。ただ今より決勝戦をおこないます』
「よし!みんな行くよ!!」
エルサのその声を最後に俺の意識は途絶えた。
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決勝戦の舞台は西洋の街並みを模したものだった。
初戦でやったビル街とは違い、建物一つ一つが低いのが特徴的だ。だからこそ地上での戦いが多くなると思われる。
そして今回いつもとは違い、転移先の座標がチーム内でも少し違っており今俺の近くにいるのは柊さん、カリバン、そしてレイと同じクラスの女子生徒のルナだけだ。
「みんなちゃんと転送できたかな。柊さん、今相手チームどこにいるかわかる?」
「今やっておる。・・・ふむ、どうやら相手チームも合流したのち全員で移動する作戦のようだな。まだこちらの場所は特定できてないようだが集まろうとしているようだ。先ほどのユーキ殿の魔法を見てよくもまあそんな作戦が取れたものだな」
「とりあえずはみんなと合流するほうがいいよね。みんなはどこにいるんだろう」
「魔力が大きくて一番わかりやすいのはあのリラという少女だが私らからは若干遠いな。周りには6つ魔力が検知できるから綺麗に二つに分かれたようだな。よし、とりあえずは私たちも合流するとしよう」
柊さんの指示に従いまずはエルサたちとの合流を優先することにした。
早く移動する術を俺だけ持っていないため必然的に俺の走るペースにみんなが合わせる形になってしまうため中々エルサたちのところまで行けない。
運動があまり得意でなさそうなルナさんでさえ俺よりも早いんだからもう俺の立場がない。
ある程度まで近づけたところでまた柊さんが口を開いた。
「む、向こうもこちらの場所がつかめたいみたいだな。向こうはもう合流できたみたいだがご丁寧にも全員で向かって来とるわ。まああの魔法を見たらその場に停滞するという作戦には至らんだろし順当だの。もうぼちぼちつくから皆も魔法を発動させておいたほうが良いかもな。・・・ちょっと待て。何者かが近くにいる気がする。いったん止まって様子を見よう。動きながらだと不利になることが多いしな」
「あ、ああそうだね。近くに敵がいるの?」
「いや、魔力は探知できないが・・・はっ!まさか!!!」
「その通りだ」
「っ!!ユーキ殿、上だ!!!」
柊さんの言う通り上を見上げると目の前にある建物の上でメラメラと燃え盛る剣を構える弘人の姿があった。
まずい。俺は移動中に周りの仲間に被害が出るのがいやだったからまだ神話の拒絶を発動できていない。
「烈火斬!!!」
そんな無防備な俺に向かって無慈悲にもその燃え盛る剣を俺らに向かって振り下ろす。
その炎が俺らに到達する前に柊さんが防御結界を張ってくれて守ってくれたから事なきを得たがはじかれた炎は飛び散りあたりを燃やす。
「随分と早い到着ではないか。おぬしも魔力探知に秀でているのか?」
「・・・いや、別にそんなことはない。ただ君の魔法を一回戦目で見て真似してみたらできただけだ」
「なっ!!い、一回見ただけで私の魔法を見切ったというのか!?」
「まあそうだ。君の結界魔法は固有の技だから中々再現はできないけど、ある程度公にされてる魔力探知ならほとんど君と同じくらいのクオリティでできるようになったぞ」
「・・・ということは魔力探知を使って私らの居場所を確認した後それを仲間に告げておぬしだけで攻め入ってきたということか。随分となめられたものだな」
「こっちとしてもあの奇襲で一人はやれる予定だったんだけど・・・さすがにそうはいかないか」
「いいのかよ、これでお前と俺らは1対4になっちまったぞ。それに俺は水魔法の使い手だ。相性は悪いんじゃねえか?」
「まあ、普通ならそうだろうな。でももう大丈夫だ。だって・・・もう仲間が来てくれたからな」
弘人と目が合い心臓がドクンと波打つ。背中には冷や汗が流れ鳥肌が立つ。
「神話の拒絶!!!」
弘人が発するなぞの威圧感に負けて反射的に神話の拒絶を発動してしまう。
発動時の爆風で味方を巻き込むことはなかったが焦って発動したため右手が若干焼けた感触がある。
「君のそれ、本当にすごいよな。見てもなんか全くできる気がしないんだよ。まぁだからって負ける気もないけどな。悪いけど先に君たちの4人からつぶさせてもらうぞ」
じゃあ、いくぞ。
その声を合図に弘人の後ろのほうから大量の遠距離魔法が俺らめがけて飛んでくる。
なるほど、仲間がもういるとは本当だったみたいだ。
だが俺らはそんなんで崩されるほどやわでもない。
「さあ気ぃ引き締めろ!!勝つのはぜってえ俺たちだからな!!そうだろうユーキ!!」
「いや、勝つのは俺たちフロイド学園だ。行くぞみんな!!」
カリバンの声に後押しされて俺は弘人に向かって大地を蹴った。
・・・のだがいきなり目の前を巨大な氷に阻まれる。向かってきた魔法たちもこの氷に阻まれ消えていく。俺はこの巨大な氷を見たことがある。これは・・・
「ユーキ・・・私たちを待たすだけ待たせといて・・・何そっちだけで楽しもうとしてるの?」
「リラ!!なんでどうしてここが?」
「何を言ってるんですか兄さん。兄さんが神話の拒絶を発動したら火柱が立つから場所が分かるに決まってるじゃないですか。いつまで待っても来ないからこちらから来たんです。まさかもう交戦しているとは思わなかったですけど」
「確かに・・・。カグツチってそんな使い方もできるのか」
「裏を返せば無駄に目立つってこどですけどね」
「もしかして今ここに全員集まったか?まぁちょうどいいやそっちもリーダーがわざわざ来てくれたみたいだしこざかしいことはもうなしで行こう。こっからは真剣勝負、正真正銘の総力戦だ」
「そうね。わざわざ来てあげたんだから楽しませて頂戴ね。フロイド学園のリーダーさん?」
リーダー同士の簡単な会話が終わりその場にいる全員が再び戦闘態勢をとる。
今この場にいるのは合計20人。
その全員の意地とプライドをかけた戦いが今この瞬間始まったのであった。




