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30.歯車のずれる音

結局あの後俺が口を動かす前に

『すまん急用が入った。こっちから今日中には連絡をしておくから明日にでも生徒会室を訪ねてみろ』

と言われて一方的に切られてしまった。


正直俺は彼女に会いたいけど会いたくない。出来れば会わないまま終わりたかった。

ゲームにおいてアリア・フォースターという学生とは別に関わらなくてもシナリオは進む。

もちろん彼女とのイベントでしか得られないスキルや魔法、道具が多くあるため普通は彼女と接触するルートをとるのが定石だがその分厄介なイベントが増えるということだ。

さらに言えばこの生徒会長は何人かいるヒロインの中でも一番攻略難易度が高いといわれている最難関ヒロインだ。今の俺がどうとかできるとは思えない。

正直今のままでもうお腹いっぱいだしこれ以上不確定要素を増やしたくないと思った矢先にこのありさまである。


ただやっぱりゲームのヒロインとだけあって彼女は魅力的だし会ってしゃべりたいし・・・いや、でも・・・

なんて考えていると目の前のドアが突然開く。


「いつまでドアの前に立っているの?早く中に入りなさい」

「のわっ!びっくりしたっ!」

「あなたが中々入ってこないようだったからこっちから行っただけですよ。ほら、おいしいお茶でも入れてあげるますから」

「わかりました・・・。失礼します」


こうして俺は本来立ち入らないはずであった、ゲームでは何度も訪れた生徒会室へと足を踏み入れるのであった。



*****


促されるまま椅子につき生徒会長が出してくれたあったかい紅茶を飲みながら向かい合う。

あらためて会長をまじまじと見るが本当にびっくりするくらい美人だ。流石ゲームのヒロインと言えよう。

ルーンさんと同じ金色に輝く髪を腰あたりまで伸ばしている。ルーンさんはもう少し短いか。

あとルーンさんとの一番の違いは目の色だ。ルーンさんはサファイアのような蒼色の目だったが彼女は例えるならばエメラルドグリーン、碧色だ。これに関しては従妹だからであろう。どっちにせよ美しいことに変わりはないが。

そしてだが出してくれた紅茶だがびっくりするほどうまい。そういえば会長の紅茶はめちゃめちゃおいしいっていう描写があったな。主人公はよくここで生徒会長の紅茶を飲んでたっけ。

まあそのルートは生徒会に入らないといけないものだったが。


「さて、成瀬君。姉さまからいろいろと聞いてはいますがなにやら勉強で困っているようで?」

「ルーンさんからどんな風に聞いているかはわかりませんが・・・まあそんなところです。いやっ、その無理に教えていただかなくても大丈夫です!僕は自分で・・・」

「いえ、私が教えて差し上げます。ほかならぬ姉さんの頼みですし私もあなたの事が気になってますから。なんでもあの光魔法の最上級魔法を市街地で2度も使用したとか。ふふ、私でも見たことがない魔法なのにすごいですね」

「っ!?・・・それもルーンさんからですよね?」

「ええ、まああなたの事はあなたが入学する前からいろいろ聞いてましたからね。なんとも不思議な魔法を使う男子生徒を推薦したと」

「そうですか。じゃあその、特別課題が終わるまでの間僕に勉強を教えていただいてもよろしいですか?終わったらもうお世話にはなりませんので!」

「別にいいですけど・・・。なんだかそれでは私を突き放しているように聞こえますね。そんなに私と関わりたくありませんか?ひどいですね。これでも私は生徒会長なのですよ?深い関係性を持っておいて損はないと思うのですが」

「いやそういうわけではっ!その、会長のお手を煩わせるのは心苦しいというか・・・」


面倒事は増やすまいと突き放そうとするが見抜かれてしまう。さっきまでおっとりとした印象を持っていたのに突然剃刀のように鋭くなる。え?俺ってそんなにわかりやすいの?


「別にそんなことはありませんよ。人にものを教えるのは好きですし成瀬君が課題程度の問題を教えてもらっただけでこの先のテストをやっていけるとも思えませんからね。それに心苦しいと思っているのなら私のお願いを一つ聞いてくれませんか?」

「お、お願いですか?」

「ええ、あなたにしかできないことです。やっていただけますか」

「まあ、ぼくにできることならやりますけど・・・」

「なんてことはありません、簡単なことです。成瀬君は新人戦については何か知っていますか?」

「新人戦・・・。まあある程度は」

ゲームの知識でほとんどの事は知っているが一応は濁しておく。

「成瀬君には学園長推薦枠でそれに出てもらいます。そこでなんですけど・・・」

「いやちょっと待って!!!何それ俺聞いてないんだけど!!!」

「ええ、私もさっき聞きましたし。で、そこでこう大げさに世間にアピールしてほしいんです。この学園を、成瀬君という存在を。新人戦は各種メディアに取り上げられるほど大きなものですし」

「ちょちょ頭が追い付かないんだけど!なにその学園長推薦枠って!!あれってクラスメイトの投票で決まるんじゃないの!?」

「もちろんそれもありますがそれとは別に二人、学園長が選ぶんです。それに選ばれたみたいですよ」

「わけわかんねえよ・・・。そ、それにクラスの子たちが認めないと思いますよ!?」

「そこはあなたの力で納得させてください。私たちではなくあなたがやることですよ」

「~っ!・・・・・・どうせそれって拒否権ないですよね」

「ええ、恐らくは。そこでですよ、いやいや出るのではなくてあなたの本気を世間に知らしめてほしいのです。そうすればこの学園の価値も上がりますしあなたも有名になれる。一石二鳥では?」

「別に俺はそんなに有名になりたいわけでは・・・。まあやれることはやりますけど・・・」

「ではお願いしますね。それでは本題の勉強に移りましょうか。時間もないですし今ならほかの役員もいませんから心置きなく教えることができます。あの人たち私が仕事をさぼってると煩いんですよね」

「わかりました。じゃあお願いします」


俺のカバンから課題として渡された問題集を取り出そうと椅子から立ち上がり後ろを振り返る。

「あ、言い忘れてましたが負けたら覚悟しておいてくださいね?あと私直々に勉強を教えて差し上げるんです。またテストで変な点数を取ったらそれはもうどう責任をとればいいのやら」

突然の威圧感を感じ声のする先を場バッと振り返る。

さっきと同じ笑顔のはずなのになぜかその身にまとうオーラは先ほどまでのおっとりしたものではなく失敗したら〇すぞと言わんばかりに鋭い。にっこりと閉じていた眼がゆっくりと開く。その目はギラギラと輝いていた。あの俺を本気で叩きのめそうとかかってきたルーンさんと同じ瞳だ。手に汗がにじむ。

あ、やばいわこの人。

「返事はどうしたのですか?」

「ひゃ、ひゃい!が、ががんばります・・・」

「ふふ、がんばってくださいね」


どうやらこの人には逆らわないほうがいいらしい。




*****



月日は流れ気づいたら新人戦まであと3日というところまで迫っていた。

生徒会長のおかげですべての課題を提出することができたがその代償は大きかった。

多分変な事したら大変なことになるわまじで。


話は変わるが新人戦選出の日が1週間とちょっと前にあってそこで俺のクラスでは柊さんと牡丹さんが選ばれた。まあ順当と言えよう。そのほかのクラスで選出されて俺が知っているのはエルサ、レイ、そしてリラだった。

主人公がいたDクラスのもう一人の生徒は名前も知らない女子学生であった。


今俺たちは摸擬戦場に降りリラが自主練習に励んでいる。あの夜リラと会ったときはあんなに弱弱しかったのにそれからの2週間ほどでメキメキと頭角を現してきたらしい。なぜか俺があげたパーカーをずっと着てるけど。流石に昼間はもう暑いだろあのパーカー。

それ以外はゲームでもあまり紹介がなかったからわからないけど多分みんなそれなりの実力を持つ生徒が集まっているはずだ。そして場違いにも俺が選ばれた。


最初のほうは多くの選抜者から反発もされたが何度か10人で手合わせをしているうちにみんなが認めてくれるようになった。ていうか最初の手合わせで火魔法で一思いに焼き払ったらみんなが手のひらを返してくれた。。

まだクラスメイトからは何であいつがという声が多く上がっているらしいが、そこはシルフや柊さんがうまくまとめてくれた。彼らはなぜか「本番までは力を見せないで行こう。そのほうがおもしろい」と言ってきかなかったため俺はただの落ちこぼれとしてクラスメイトに映っているから仕方がないが。


また、この新人戦というものには少し変わったルールがあり10人のうちから1人リーダーを決め、そのリーダーが撃破された場合その時点でそのチームの負けになる。

リーダーが撃破されなければ制限時間内に残った数になるがおそらくはリーダーを撃破するのが手っ取り早いだろう。どうやらリーダーは名前も公表され、試合ごとに変更することができないみたいらしい。

だが、このリーダーになったものは魔力探知に引っかからないよう特殊で高価な魔法具が与えられるらしい。一応のリーダーになるアドバンテージといったところか。おれはそもそも魔力探知できないから意味ないけど。


まあ要はこの新人戦、リーダーというものがかなり大事になる。

俺は自分の魔法で死ぬ可能性があるから辞退して結局俺らの学園からはエルサがリーダーとなることになった。そして登録票を提出してそれをまとめられた書類が今日配布されたのだ。

みんな寄ってたかって「あいつ中等部の時すごかった」とか「あ、こいつこの学園に言ってるんだ」とか「そのフロイド学園ってとこ名前知ってるやつ多いな」など思い思いの事をつぶやいていたが俺はある一人から視線をずらすことができなかった。


私立フロイド学園 リーダー 東雲弘人(しののめひろと)


あぁいた。お前はこんなところにいたのか。

リーダーを張ってるってことはそれなりに存在感を表してるってことだ。

やはり主人公はどこに行っても主人公らしい。


「弘人、お前にだけは絶対負けない。お前も俺なんかに負けちゃだめだ」


大きな矛盾をはらんだ言葉が不意に口から洩れた。



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