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3.氷魔法のメリットとデメリット そして出会い

人というものは焦れば焦るほど判断力が鈍っていく。

だからピンチでも焦らず冷静に判断できる人は一般的に“できる人”と認識される傾向にある


そんなことは百も承知だし今まさに必死に落ち着かせようと言い聞かせている最中である。

今までと違い今回は意識を失っていないことはいい点だと思う。ただ意識があったらあったでパニックになるだけであることが分かった。


「やばっ、え、まじかほんとに動けないんだけど!」


はたから見たら今の俺は氷でできた木のようになっているのだろう。あの公園の大木みたいな。

俺の記憶上確か指パッチンを合図に発動した氷はすべて解けるはずなのに一向に溶ける気配はない。


すなわち今どうしようもない状況に陥ってしまっているのだ。


幸い、冷たさはあまり感じないので俺の中には選択肢が二つ浮かんでいる。


1、誰かが来るまで待ち続ける

2.いっそのこと派手に魔法を使って気づいてもらう


「誰もいないところを選んだのが裏目に出たな・・・。携帯電話は病室においてきちまったしどうすんだこれ。おーい! 誰かいませんか!!」


叫び声むなしく誰も反応してくれない。


「はぁ、もういい。プラン2でいこう」


今発動している『氷帝の憂い(クライオニクス)』は一度氷のフィールドを広げたところから、自由に氷柱や氷塊を生成できる魔法である。さすがに雷を落とすわけにもいかないし、氷をある程度派手に生成したらだれか気づいてくれるだろう。

試しに今広がっている氷のフィールドから2匹の氷の竜を生成し、屋上から下の階の窓に向かって顔をのぞかせてみる。どうせならと口を大きく開けて威嚇のポーズをとらせる。割とかっこいいと思う。この竜たち。

だがプランが定まってようやく冷静になってきた俺はあることに気づいてしまった。


「ん? ちょっとまて、これ、はたから見たら魔物に見えたりするのかな?」


そう思った矢先、叫び声とともに病院内部からサイレンが聞こえる。このサイレンは聞いたことがある。

あのムカデの時だ。


「げっ、やばいまじか! ちょ、ちょっとまって!」


焦りながらもとりあえず作った三体の氷の竜を消そうとするが、消えない。考えてみれば数分前何度も氷を消そうとしたが消えなかったことを思い出す。


「やばいやばいやばいこのままだと俺が駆逐されちまう・・・!」


この前みたいにくるのに時間がかかりますようにと願ってみるが、逆にこの前の名誉挽回と言わんばかりにとんでもなく早く魔物討伐部隊が到着し、屋上のドアが力強く開けられる。


「人間の生活を脅かす魔物どもよ。われらが始末してくれる!」

「ちょっ待っ!」


一番偉いと思われる金髪の軍服を着た女性の声を合図に有無を言わさずこちらに魔法を放つ精鋭部隊。

とっさにさっき作った氷の竜で俺を守るようにとぐろを巻かせてしのごうと思ったが、相手は国家の精鋭部隊。流石に破られるだろうと目をつむったが。一向に体にダメージはない。


「ば、馬鹿な・・・第9階級の炎魔法だぞ・・・なぜ相性有利の氷に勝てんのだ・・・」

「しかも三人で放ったんだぞ・・・」

「ば、化け物め!」


恐る恐る氷の竜をどかすとそこには戦意喪失したかに思われる戦士たちと必死に恐怖と驚きを隠しているであろう女長官が立っていた。


その瞬間、俺の発動していたすべての氷魔法は解け、屋上には戦士3人、女長官、そして病院着の俺が無言で向かい合うという構図になった。



*****



「それで、いったい何があったというのですか。兄さん?」


病室でニコニコ顔のレイに背筋が凍るような声で話しかけられる。


「その、えーっと、ちょっと強そうな氷魔法を思いついて、屋上で試してたら制御ができなくて、その・・・国家部隊の人たちのお世話になったというか・・・」

「氷魔法はほぼ使えない兄さんが? そんなたいそう派手な魔法を? またこの前みたいに? 私たちを心配させて!!」

「ごめんなさい!本当に!」


目の前に国家部隊の人たちがいるというのにこってり絞られる僕かわいそう・・・。

そんな俺とレイのやり取りを無言で見ていた女長官様がついに口を開いた。


「あれはお前の魔法なのか?」


正直に答えるかどうか迷う。ただ、このままだと魔物界の使徒と思われかねないのでとりあえず正直に答えることにする。


「・・・はい。僕がやりました」

「話を聞く限りお前は魔法をほぼ使えないみたいだが?」

「その、なんか最近になって使えるようになりまして・・・」

「あと横の妹とさっきの話から察するに、この前2件立て続けに起こった巨大な落雷もお前が関係しているのではないか」

「・・・・・・おっしゃる通りです」


ここにきてレイが有名になったことが裏目に出てしまった。

バレなくていいことまでバレてしまった。


「・・・お前は人間か?」

「えっ、い、いや人間ですよ! 何ですか急に! 成瀬夕貴っていう中学3年生ですっ!」

「魔物とのつながりは?」

「ないです。一切ないです!」

「じゃあなぜあのような強大な魔法を使えるのだ?悪魔と契約でもしたのか?」

「本当にわからないんです! てかそもそも悪魔なんているんですか!?」

「そんなもの私も知らん。ふぅ、頭が痛くなる話だな。どういうことかさっぱりわからない」


なんかめちゃくちゃ疑われてるー・・・

そして、向こうがどこまで俺の話を信じてくれているのかこっちもさっぱりわからない。


「もういい、わかった。とりあえず上には魔物はもう逃走したと伝えておこう。お前は退院したらまずここに連絡をしろ。私の名前はルーンだ。覚えておけ。・・・あとこの前は到着が遅れて済まなかった」


そういって俺の手に名刺を握らせて頭を下げたと思えば、上着を翻し病室から出て行った。

そのあとを追いかけるように部下たちも出ていき、あんなに騒がしかった病室は急に静まり返った。


「兄さんの尋問タイムはまだ終わってませんからね」


どうやらこの病室は当分騒がしくなりそうだ。



*****


レイにこってり絞られ、後から来た母さんに笑い飛ばされ気づけばもう夜になっていた。

俺以外に誰もいなくなった病室で今まで判明している二つの魔法を振り返ってみることにした。


光の最上級魔法:雷神の怒り(トラローク)

こいつは超強力な雷を空から落とすことができるが標的を俺にしかできない。

多分俺に対するダメージは相当カットされているんだろう。学校で使ったときにグラウンドにでかい穴が開いていた。俺以外があの雷に当たるとおそらく意識を失うじゃ済まない。

ただ周りに爆音と衝撃波が生じるから使いどころには注意が必要だと思われる。

しかもその衝撃で体に激痛は走るし、なにより1日行動不能になるのはいろいろヤバイ。


氷の最上級魔法:氷帝の憂い(クライオニクス)

こいつはトラロークと違って俺にダメージが入ったり無作為に周りを巻き込む恐れはただ少ないと思われる。一度自分を中心に氷のフィールドを広げちまえばそこからいろんな攻撃や防壁が作れるから多分かなり便利だと思う。ただ、これを発動すると下半身から凍るから俺は一切移動できなくなるし、何より一番やばいのは解除が自分の意志でできない。時間にして多分10分しないくらいで急に解ける。

このせいでなんかあったときに俺だけ避難できないし、味方を凍らせてしまったときに解除ができないなどのいろいろな弊害がある。


まだ試していない属性は火、風、土、闇。


「多分ほかの4つもなんかいろいろあんだろうなぁ」


もう深くは考えずにとりあえず退院までは何もせずに安静に生きることにした。








*****


最上級魔法紹介:氷帝の憂い(クライオニクス)

CORにおいて、自分を中心に螺旋状に氷のフィールドを作ってそこから強力な氷魔法を放つという全体攻撃に優れた技。

さらにフィールドは何個でも作れ、遠隔操作もできるためトラップのように使ったり、もしくは大きめのフィールドを作って一網打尽にしたりと汎用性はかなり高い。

あと視界にあれば指パッチンで好きなところだけ溶かしたりとかもできる。


この世界においてはユーキの分析を参照。欠陥が結構多い。が、光よりは使えそう?







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