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29.新たな出会いの予感

一限目始まりのチャイムが鳴る。

確か今日の最初の授業は土魔法の座学だったかな。今頃みんなは受けているのだろう。

そんなみんなと違って俺は今職員室の中にあるちっちゃめの会議室みたいなところで先生と向かい合って話す形になっている。俺ら以外に人はいない。


「ふーー、おい成瀬、なんで呼ばれたかお前はわかってるよな?」

「多分、そのーテスト結果ですよね」

「・・・確かに世の中にはそういう反抗の仕方もあるかもしれない。ただこれはお前らの実力を測るテストだ。いくら簡単とはいえほぼ白紙で出すというのは違うだろう。・・・俺も学生の時に先生たちに歯向かったりもしたがそんなもの若気の至りだ。この学園に通うようなものがすることではないことぐらいお前も分かっているだろう?」

いつもと違い先生が冷静に見えるが内心相当怒っているのだろう。なんかいつもと纏っているオーラが違う。

そしておれはその先生に、「へっこんなの簡単すぎてやる価値もねーぜ。白紙で出してやんよ!」的なことをした盛大に勘違いされている。

「いえ、その、大変申し訳にくいのですがそれが僕の実力です」

「・・・・どういうことだ?この結果が本当のお前の実力とでも?」

そういってさっきみんなに配っていたのと同じ紙を渡されるそこに書かれていた点数は、火:11点、水:9点、風:5点、土:18点、闇:22点、光:13点という見るも無残な点数であった。


「はい・・・。本当にこれが俺の最大限の力です。もしよろしければ俺の中学の時の成績もみてください同じような風になっているはずです。それでももしまだ不満でしたら僕を推薦したルーンさんに聞いてみてください。僕にはあの魔法たちを出すことしかできない落ちこぼれだとわかるはずです」

「・・・そこまで言うのなら本当なのか。わかった、お前を信じてみるとしよう。ただそれとこれは別の話だ。お前この点数でどうするつもりだ?」

「それは、その・・・これから頑張っていくつもりです」

「俺もお前の魔法を実際に直接見て、お前には期待できると思った。ただお前のこれは勉強ができないというレベルではない。お前がこの学園で本気で上を目指すというなら死ぬ気で頑張るしかないぞ」

「「はい、わかってます。なんとかしてみせます」

「そうか、わかった。授業に戻れ。課題に関してもさっき言ったのと同じだ。まあお前はあまりに量が膨大だから来週まで待つ。それまでに仕上げるように」

「わかりました。それでは授業に戻ります」


そういって会議室のドアを閉め教室へと向かった。


*****


成瀬がいなくなった後俺も会議室の外に出る。

「ふふ、随分と存在感を出しているみたいですね彼は」

「っ学園長!いつからそこに?」

「いえ、昨日の会議で報告を受けて気になってましたからね。流石に私もあの点数には驚きました」

「そうですね・・・。あいつがクラスで浮いたりしないか少し不安です」

「それならば彼を新人戦のメンバーに選ぶのはどうでしょうか。強大な力を見せつければいざこざは少なくなるかもしれませんよ」


――― 新人戦。

毎年入学式から大体1ヵ月後に行われる大きな摸擬戦のようなものだ。

これは他の学園との勝負になり勝ち抜きのトーナメントで毎年8校がエントリーしている。

何より参加するのは1年生だけというのが特徴だ。これにより各学園はその年どれほど有望な一年生が入ったかを見極めることができるのだ。

メンバーは合計で10名選出され、実際の戦いも10対10の乱戦となる。

アドミラ学園の選出方法はクラス内の生徒による投票で各クラス二人ずつ計8人と、学園長の推薦で二人の計10人という形になる。

多分、嫌絶対成瀬はクラス投票では選ばれないから・・・


「それなら学園長が彼を推薦するということですか?」

「まあそうなりますね。ただ私が推薦するとなるとその学生の担任の許可がいりますし結局はあなた次第になりますけどね。その子が選ばれたらクラスで暴動がおこるとかはありえない話ではないですから」

「そうですね。それならこちらからはすぐに結論を出すことができません。選出時期はいつ頃でしたっけ」

「確か・・・今から2週間後だったはずです」

「わかりました。それまでにいろいろ考えておきます。それじゃあ私はこれで」

「はい、よろしくお願いしますね」


こうして俺はあいつは何でこんなにも問題を抱えているんだと若干の苛立ちを覚えながらその苛立ちを解消すべく喫煙室へと向かった。


*****


あの後何事もなかったかのように後ろのドアから教室に入り授業を受けた。

内容はさっぱり理解できなかったけど。


キーンコーンカーンコーン

一限目の終わりを告げるチャイムが鳴る。

職員室でごたごたあったから俺は半分くらいしか授業受けてないけど。

「おい、なんで呼ばれたんだよ?」

後ろから眠そうなウノに話しかけられる。

「ウノが思ってる通りだよ。あまりにも低すぎて怒られた」

そういって俺の結果を見せる。てっきり大笑いされるかと思ったがもはや引いているという顔だった。

「これは・・・ひどいってレベルじゃねえぞ。どうすんだお前。課題大量にあるんじゃねえか?」

「そうなんだよ。だから誰かに教えてもらいながらやろうかなーって・・・」


「うむ、風魔法の分野でよければ私が教えるぞ!!ほかの属性も夕貴殿ならあてがあるのではないか?」

声のする方を向くと柊さんが自信気に立っていた。言われて気付いたが俺の周りは各属性のエキスパートがそろっているじゃないか。

「確かに・・・炎はエルサがいるし氷はリラがいる。光はウノがいるし闇はレイがいるからあとは土魔法だけか。そうだ!みんなの力を借りればいいんだ!!」

「うむ、困ったときは助け合いが大事だからな!」

「おい今俺の名前を言ったか!?俺はぜってえ教えねえからな」

「シルフとかどうだろう?聞いてみるか!」

「おい!人の話聞けって!!」


煩いウノを無視してシルフのもとへと向かう。

どうやらシルフはもうたくさん友達ができたみたいで何人かでシルフの周りに集まって話していた。


「シルフ、ちょっといい?」

「ユーキじゃないか?僕になんか用?」

「ああ、ちょっと聞きたいことがあって・・」

そこまで言いかけるも途中で授業開始のチャイムが鳴ってしまう。

「じゃあ、今日の授業終わりにでも話を聞くよ」

「了解。ありがとう」


こうして元の席について今日の分の座学をすべて終えた。

言ってる内容はまじで一ミリも理解できなかったけど。



*****


午前の授業がすべて終わり今日はもう帰れるのである程度の人は帰り支度を終え次第に帰っていく。

そんなわちゃわちゃした中で人をかき分けシルフが近づいてくる。

「じゃあねまた明日!ああ、いたいた。僕に用ってなんだい?」

「・・・いや、用の前にその、なんか随分とキャラが違うね。元はこっちなの?」

「そうだね。恥ずかしいけど僕も最初は見栄を張ろうとしてたんだ。最初が肝心だっていうからクラスで目立つためにもちょっと虚勢を張ってたんだ。でも君と戦って僕なんか大したことないって思えてもうそんなもの必要ないって思えたんだ」

「そう、か。うんシルフはそっちのほうがいいよ。かっこいいし雰囲気いいと思う」

「お世辞はよしてくれよ。で?話ってなんだい?」

「まずはこれを見てほしいんだ」

そういって俺のテスト結果を見せる。

反応は大体ウノと同じ感じだ。

「えっこれがユーキの結果なのか?」

「うん恥ずかしながら。課題もいっぱいある」

「勘弁してくれよ・・・。この前僕のせいで広まったユーキが裏口で入ったかもしれないって話を頑張って撤回してる最中なのに・・・これじゃあ火に油じゃないか!」

「そんなことしてくれてるの!?ありがとう!」

「いや、もともとは僕のせいだから・・・じゃなくて!どうすんのこれ!」

「そ、そうなんだよ。で今んとこ友達に土魔法以外は得意な奴がそれぞれ見つかったんだけどどうしても土魔法だけ見つからなくて・・・心当たりとかない?それかシルフが得意だったりしない?」

「僕はそんな特筆して得意なのはないから何とも言えないな。土魔法かぁ。まあ僕でよければ教えるけど・・・。ただ僕9割ギリ超えてるくらいだよ」

「それで十分だよ!!お願い俺に教えて!!!てか課題を一緒にといて!!」

「あぁまあそれくらいならいいよ。ちょうどお腹もすいてきたしお昼ご飯でも行こうか」

「そうだね。俺も朝から何も食べてないんだ。あー腹減った」


こうして何とか俺は友達の中から各属性の先生を見つけることができたのであった。


それからというもの、毎日授業後に代わる代わる俺のもとを友人たちが訪れて勉強を教えてくれたため課題はかなり順調に進んでいた。光魔法を除けばだが。

どうやらウノが教えるのを渋っていたのは本当にあいつは教えるのが苦手だったかららしい。一回だけ俺に授業もどきをしてくれたが感覚ですべてを語るもんだから俺は全く理解することができなかったし。あれ以来彼は俺に教えてくれなくなった何よりあいつも課題組だから俺があいつの負担になるわけにもいかなかったから無理に頼めなかった。今では一緒にレイの闇魔法講義を二人で受けている。


そんなこんなでほかの魔法は大方片付いたが光魔法だけはほぼ進展しないまま日々は流れた。



*****


・・・なんでだ。どうしてこうなった。

光魔法以外の課題を終え、後残すは光魔法だけとなった俺は今、生徒会室の前に立っている。

目の前のドアを開けねばならないのだがなかなかその勇気が振り絞れない。

ふーっと息を吐いてこうなった状況を軽く整理する。そうすべてはつい昨日のあの電話、ルーンさんからの電話から始まった。


あれは昨日の・・・確かご飯を食べ終えて部屋でゴロゴロしていた時だった気がする。そんなときにルーンさんから電話が突然来たのだ。

『もしもし、ユーキか?』

「もしもし、え、ちょ急にどうしたんですか?なんか俺やらかしましたか?テストの件ならもう耳にタコができるほど怒られてるので勘弁してください」

『ああ、そういえばそんな話もされたな。いや、今日は特に報告もない。ただ学園生活がどんな感じなのか、楽しく遅れているのか気になって連絡しただけだ』

「そうですか・・・えっとですね・・・」


俺は入学式からこれまでにあったことを包み隠さずに全部報告した。なんだかこの人になら全部喋っていい気がしたからだ。


「ってなわけで今光魔法の課題に大いにつまずいてまして・・・」

『ふむぅ私教えてやれれば一番なのだがいかんせん仕事があるからな・・・。そうだ。確か私のいとこがお前の学園にいるはずだから当たってみると言い。そうだな、それがいい。何、安心するなこっちから連絡はつけておいてやろう』

「え!ルーンさんの従妹さんこの学園にいるんですか?」

『ああそうだ。確か生徒会長をやっているはずだから名前くらいは知っているのではないか?』

「え、せ、生徒会長!?もしかして・・・」

『アリア・フォースターだ』


その名を聞き携帯電話を握ったまま茫然と立ち尽くす。

まただ。また訳の分からないところで物語が絡み合う。

――― アリア・フォースター。このゲームのヒロインの一人であり二つ上の現生徒会長でもある才女。



どうやら俺は未だなお逃れられないシナリオという名のレールの上に立っているようだ。



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