24.報告会
制限時間になり、まだ戻ってきてなかった生徒も全員帰ってきたところで今回の摸擬戦は一段落する・・・はずだったのだが控室に帰ってきても誰もいないというのが現状であった。
「そういえば、ほかのクラスメイトの人たちいないね」
「おおかた先ほどの落雷で全員避難したのであろう。外にでもいるのではないか?」
「そうかもしれないね。とりあえず外に出てみようか」
「おい、ちょっ、待てっ!」
状況をそこまで理解していないウノを放置し外へと向かう。
柊さんの言う通り、摸擬戦場の外にクラスの人たちが輪になって集まっていた。
俺らが近づいていくと向こうも気づいたようでわらわらと集まってきた、
「お、おい! さっきまで戦ってたのお前だよな? 一体何が中であったんだ!? 誰かの魔法なのか!?」
「あぁ、その通りだよ。それはこの俺のペアの金髪ヤンキーが・・・痛っ!」
横にいるウノが俺の尻をつねる。意外と痛い。
それによりちょっと体勢を崩した俺の耳元でウノがささやきかけてくる。
「おいっ、まじでおれがやったことにするのか? なんで俺がそんなこと!」
かなり焦っているようで顔と顔がめちゃくちゃ近い距離になる。
やっぱこいつまじかで見ると怖い顔してるな。
「・・・ウノ、これに乗ってくれたらお前のあこがれのルーンさんと会わせてやる。だから頼む」
「なっ、はぁ!? ぐっ...」
「悪い条件じゃないだろう? ちょっと茶番に付き合ってくれれば憧れの人に会えるんだぞ」
「......ちっ、わかった。やってやる。だがちょっとでも面倒ごとになったらお前が責任取れよ」
「ああ、わかってる。じゃあ頼んだぞ」
「おい、どうした?なにがあったんだ!?」
「あ、あれはその、あー、俺の魔法だ。こう、何か月かためた電気をこう、解き放つ系のやつで・・・」
なかなかにきつい演技に見える。演技下手か。
ただこんな演技を見てもほかの生徒たちは
「えーっ、すげえ! あんなに馬鹿でかい雷魔法打てるのかよ!」
「あーだからいつも周りにも電気を浴びせちゃうのね!」
「すげえなそれ! 第何階級くらいだよその魔法!!」
などなど、開始前はみんなあんなにウノの事を馬鹿にしてたくせにすごいとわかった途端これである。
もしこれが嘘だとバレてしまったらさらに不名誉なレッテルを張られてしまうかもしれないが、実際ウノは魔力も才能もセンスもあるだろうし、もしルーンさんあたりにしっかり稽古つけてもらえれば化ける気がする。ウノには申し訳ないが、彼ならこの皆の評価に自分の手でたどり着けるかもしれない。
最初と評価が一転してしまい面倒事に巻き込んでしまったがもしなんかウノに怒ったら全力で助けようと思う。巻き込んだのは俺だしな。
「おまえら静かにしろ!! これで今日の授業は終わりだ!! 帰りのホームルームはやらないから各自このまま教室に戻りかばんを持って寮に帰るように。じゃあ今日はこれで解散だ!!!」
騒がしかった場が一瞬で静かになる。
こういう場を引き締める能力はあるなこの人。まだ苦手意識があるけど。
「あと、成瀬はこの後俺のところに来い」
...どうやらこの後個人指導があるみたいだ
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「はぁ、本当に頭が痛くなるなお前は」
先生が分かりやすく頭を抱え座っている状態から話しかけてくる。
なんだか摸擬戦が始まる前よりも老けた感じがする。気のせいかもしれないけど。
「え・・・なんかその、ごめんなさい。それで何か俺に用事でもあるのですか?」
「・・・今日この後1年生の担任と学園長が集まって会議がある。そこで俺はお前のことについて報告しなければならない。・・・単刀直入に言う。お前は何者だ? なんであんな魔法が使える?」
「ごめんなさい、俺も本当にわからないんです。ただ言えるのは、ある日急に全属性の最上級魔法が使えるようになったってことだけです」
「そうか。もしお前がここで何か秘密を隠していたりしたら俺はもうお前をかばえなくなるがそれでも大丈夫か? ・・・考えたくはないが例えば呪いの類に手を出していたりとかそういうな」
「はい、大丈夫です。俺はこの力を悪いことに使おうとは思っていません」
「・・・わかった。あと、先ほど柊とも喋っていたようだがお前はあまり力をおおっぴろげに使うな。この学園には私利私欲で動いているやつも多いからな」
「・・・・・・わかりました」
「おい、なんだその間は?」
「いえ、その、先生はあまり生徒に関心がないような人なのかと思っていたのでちょっとびっくりしただけです」
「そうやってすぐ人を信用するな。お前は力はあるようだが精神的には未熟だ。お前が見たものだけを信じていたらいつか痛い目を見るぞ」
「そうですか・・・。わかりました気を付けます」
「話はこれでおしまいだ。今日は早く帰れ」
「・・・ありがとうございました」
見たものだけを信じるなと言われたが、俺はこの人は信用してもいいのかなと少し思った。
その目は前世の時の恩師と同じ、教師の目をしていたから。
どの世界にいても変わらないものってあるのかもな。
*****
――― 時は夕暮れ、職員会議室
「はい! 今日は集まっていただきありがとうございます! いやー早いものでもう4月、もう新入生の入学式が来てしまいましたね! 時の流れは本当に無常ですよええ。今ここに集まっていただいてるのは新一年生のクラス担任を持った先生たち4人ですがどうでした? 今年の一年生は。A、Cクラスは今日は摸擬戦のお試し、B、Dクラスはオリエンテーションのペーパーテストを行いましたがそれぞれの用を今日は報告してもらいます!! じゃあAクラスから行きましょうか」
いつも通りの長い話で学園長が切り出す。ここにいるのは4人の1年生クラス担任、教頭、学園長の計6人だ。
「はい、まずはこの私、Aクラスの担任ゲルグが報告させていただきます。こちらは今日摸擬戦の体験を行いましたがやはりエルサ・フェニクスともう一人カリバン・サルエラが頭一つ抜きんでてる印象でした。それぞれ別のペアでしたがともに10人以上の撃破数を記録しています。ほかにも多くの未来ある生徒たちがその才能の一端を垣間見せてくれて非常に有意義な摸擬戦だったと思われます」
「そうですか、それは何よりです! いやー将来有望な生徒たちが多くいるようで楽しみですね! BクラスとDクラスは今日は筆記試験だけでしたが何か報告することはありますか?」
「は、はい! わ、わたし、そのDクラス担任のレイラからはほうこきゅ・・・ほ、報告することはあ、ありません」
「Bクラスからも特にありませんわ。ふふっ、明日の摸擬戦が楽しみです」
俺以外の担任が次々と報告を終えていく。
そしてなぜ最後まで俺が残されているのかも簡単に想像できる。
「じゃあ・・・最後にCクラス! ・・・このクラスはいろいろと報告することがあるんじゃないですか?」
ああ、そうやって注目させないでほしい。
まあそれほどまでの事をやつがしでかしたから仕方はないと言えば仕方ないが。
「Cクラスですが、結果だけ見ると花の精の国からの留学生、柊と牡丹がダントツでした。開始早々多くの銃弾を放ちものの5分でかなりの生徒たちを転移に追いやってましたから。あと・・・もう一人頭が痛くなるような生徒が・・・」
「それはあの推薦入試で派手にやったあの男子生徒か? たしか名前は・・・そう、成瀬だったか」
Aクラス担任のゲルグが突っ込んでくる。
こいつは見てくれはメガネのインテリ野郎にしか見えねえが頭は出世の事しか考えていない超野心家の自己中野郎だ。人を利用できるか否かでしか見ていない。
「そうだ。報告を続けますがやはりこの摸擬戦でも見たことの無い炎魔法を使っていました」
「ふむ? 俺はあの魔法を知っているぞ?」
「なっ!!」
「当たり前だろう俺を誰だと思っている。お前と違って俺は氷と炎の10階級魔法まで使えるんだ。それよりも強力な魔法について無知のまま居られると思うか?」
「じゃああの魔法はなんなんだ?」
「こっちだけが情報を流すのはフェアじゃない。なにかこっちが得する情報と引き換えにならたっぷりと語ってやろう」
「・・・このクソ合理主義野郎が」
「なにか言ったかね? まあ今はそこじゃない。報告を続けたまえよ」
「そうですね。まだ報告の続きじゃないですか!!」
「・・・わかりました。それでその炎魔法で何組か焼き払った後、柊、牡丹ペアとの交戦になり最後は成瀬のペアのウノという男子生徒の雷魔法の暴発により全員同時に戦闘不能になりました。一通りの動きを監視していましたが結局あの成瀬夕貴という少年の謎は解けぬままです。報告は以上です」
「ほーう? それなら私が調べてやろうかぁ? ふふっ、体の隅から隅までね♡」
Bクラスの担任、アルグレイが艶やかな声で舌なめずりする。こいつは研究の事しか頭にないマッドサイエンティストだ。いったい何人の男性教員がいろんな意味で犠牲になったか。
このAクラスとBクラスの担任二人は要注意だな。成瀬に危害が及ぶ可能性がある。
・・・・なんで今年度の1年担任は碌な奴がいないのか。俺が一番まともじゃないか。
「ありがとうございましたハーゲンさん!報告はそれで終わりでいいんですね?」
「ええ、これが今日のすべてです」
「わかりました! それじゃあ今日の報告会はこれで終わりとします。お疲れさまでした明日も頑張りましょう!」
「お疲れ様です」
「ふふっお疲れ様です」
「・・・お疲れ様です」
「お、おちゅ、おつかれさまです!」
なんとか今日の報告会を乗り切ったと胸をなでおろす。
きょうは早く家に帰って一人で晩酌でもしよう。嫌なことは酒と一緒に流すのが俺の流儀だからな。
「あ、ハーゲン先生はちょっと残ってくださいね」
訂正しよう。どうやらここからが本当の戦いみたいだ。




