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22/62

22.雷が降る

――― いったい何が起こっている?

さっきまで俺と口げんかしていた魔力が糞しょぼい情けない顔したペアの男はどこに行った?

何だこの皮膚が焼けつくような熱気は。

やつが放った炎は前方のはずなのに後ろにいる俺でさえその熱気に驚きを隠せない。

見つめるだけで眼球の水分が沸騰し皮膚が焦げるような感覚が体を支配する。

その水分が沸き立つ目で先ほどまで見つめていた天を指すような摩天楼が立ち並ぶビル街は目の前の男の一振り、その炎によって抉れるように灰になってしまった。攻撃を仕掛けてきた二人の生徒もろとも。

こんなのは俺が知っている魔法じゃない。

これはまるで・・・



*****


「ごめんちょっと巻き込んだ」

先ほどまで纏っていた魔法を解き未だなお茫然と立ちつくす金髪ヤンキーにひと声かける。

「でも大丈夫かなあの人たち。重症になる前に転移されてるといいけど」

「あ、ああ確か転移すると同時に高度な回復魔法(ヒール)が発動する仕組みになってるらしいから大丈夫じゃねえか・・・多分」

「そうなんだ、それならよかった。今腕輪見たら撃破数6になってるからどっか別のペアも巻き込んだみたいだ。時間もなさそうだし次いこう」

「いやちょ、ちょちょっとまて! 俺に説明しろ!!!」

「説明? どれについて?」

「全部、全部だよ!!! あの魔法もだし推薦入学のくだりも!」

「ごめん、そこについては本当に何も言えないし俺自身よくわかりきってない。ただ言えるのは俺はウノの味方だし、君が見るものすべてが真実っていうことくらい。それに今のでわかったかもしれないけど俺なら多分君の暴走する魔法にも耐えれる・・・と思う。どうだい?一緒に頑張らないかい?」


そういって先ほどまであの刀を握っていた右手を差し出す。

まだその右手は熱を持ち、真っ赤になっていた

「!てめえなんだこの右手!! 皮はボロボロだし傷と水ぶくれだらけじゃねえか!!」

「そうだよ。君と同じように俺も魔法を全く使いこなせてないんだ。仲間じゃないか。仲間同士手を取り合ってもっと高みをみてみようよ」

「・・・ふっ、確かにてめえとなら面白いもんが見れそうだ」

「てめえじゃなくてユーキと呼んでほしいな」

「ちっ、しゃーねーな。・・・おい、ユーキ!この摸擬戦絶対勝つぞ」

「うん。絶対勝つ」


両者の男らしい、ごつごつした手で握手を交わす。

先ほど手にできたやけどに少ししみて片目をつむると意地悪な、でもどこか満足そうなウノの笑みが見えた。

こうしてこの世界で初めての男友達ができたユーキであった。


*****


「あ、あと多分だけどウノが使ってる魔法、電光石火(ライトニング)じゃないよ」

「はぁ!? おいどういうことだ!」

二人で移動しながら会話を始める。

「俺この前本物のやつ見たけどそんな感じじゃなかったし、多分ウノのは2級かなんかの放電(チャージ)じゃないかな? それだと周りに被害が行くのも納得できる。多分、ウノは魔力がけた外れに多いんじゃない?そのせいでコントロールできなかったりするのかもね」

「いや、それは・・・その、俺は!あ、ある人に憧れてそのまねをしてたから独学っていうかその」

「もしかしてそれってルーンさんの事?」

「な、なんでそれを知ってる!」

「この前見たってのはルーンさんの事だし何より俺はルーンさんにこの学園を推薦してもらったからね。ちなみに魔力どんなもんなの?」

「1000だ」

「ふーん1000ねぇ、っておい1000!? バケモンじゃねえか!!!」

「生まれつき魔力が多いんだよ。その代わりにセンスがねえみてえだからあんなふうになったり勝手に暴発しちまったりするんだけどよ。後ユーキに化け物って言われたくねえ」

「俺なんて50だぜ20分の1だぜ。泣けてくるよ」

「そのわりにあんな魔法ぶっ放してピンピンしてるじゃねえか」

「なんか俺その魔力を使うって感覚がないんだよ。なんかこう、勝手に出る感じ」

「ますますわかんねえよ。っとおい、前に敵がいるぞ」

ウノに言われて前を見るとそこには緑色のショートカットが特徴的な少女が佇んでいた。


「これはこれは夕貴殿ではないか。奇遇だな!」

「・・・絶対奇遇なんかじゃないでしょ。なんか追跡できる魔法でもあるの?」

「おまえはこの方を誰だと知って発言をしている!! この方は、へぶっ!」

「やかましいわ牡丹。話の中に入ってくる出ない」

柊さんの後ろで執事のようにふるまっていた牡丹さんが声を上げたと同時にそこそこ痛そうな顔面パンチを食らう。でもなんか心なしかうれしそう。

「まあ魔力追跡は得意だからの。夕貴殿は少なすぎて少々わかりづらい、いやもはやわからないが横の殿方はかなりのものを持っているようだからすぐにわかったわ」

「おい、ナチュラルにディスられたよ俺。やっぱそんな深刻なの俺?」

「まあ、そうだな」

凄く憐れむような眼で俺を見るウノを小突く。。


「まあ時間もないし行かせてもらうぞ。ちなみに夕貴殿たちはいま撃破数どれくらいだ?」

「俺らは6だね。柊さんたちは?」

「私たちは・・・そうだな・・・」

「「22だ!!」」


柊さんの両手にたくさんの緑色の立方体が現れる。

その一つ一つは透き通っており、いわゆる結界術といわれるものだ。

牡丹さんはというと背中にしょってた多くの輪がつく杖を巧みに振り回し、何やら結界を張っている。


「ウノは自由にやって! 俺も俺で自由にやる!」

「いわれなくても勝手にやるわ!!おらぁああ!!!」


またもや全身に電気を帯びるウノ。

迫りくる電撃を緑髪二人は半透明な結界で防ぐが、俺は何もしなかった。

「ひ、ひぎゃああああああああああああああああああ」

「は? おい、てめえ何やってんだ!!!!」

「がはっ! だ、大丈夫・・・ウノは魔法を解かないで・・・うがあああああああ!」

「あの者たちは何をやっているのですかね? 自爆のようにしか見えないのですが」

「ふむ、夕貴殿の事だ。何か考えがあるのだろう」

「くそっ、何か考えでもあるのか? このままだとお前転送される(とばされる)ぞ!」

「い゛や・・・もう大丈夫! 創造新の欲望(アリグナク)!!」


俺の声に応じ、周りの建物から、今足をつけてる地面の遥かしたから途轍もない量の鉄の塊が集まってくる

危惧していたウノによる感電も、この魔法を使い地面に接地することによって完全に防ぐことができた。

炎魔法を使いたい気持ちもあったが、彼女が使う『結界』とは相性が悪いのはわかっているため使うのは憚られた。


「さっきと違う魔法・・・!? なんか知らねえがちゃんとやれよ!!!」

「げほ、ああ、はぁ、ま、まかせとけ」

「ふむ、フォルムチェンジは終わったみたいんだな!行くぞ!」

『残り時間はは5分です』

機械的なアナウンスが会場に響き渡る。

こうして2対2の真剣勝負の火ぶたが切って降ろされた。



*****



――― 結界魔法

それは花の精の国で独自に栄えた風魔法の一種。

全ての気の流れに特殊な魔力を通すことで結界を作り上げ主に防御に優れた魔法といえる。

・・・はずなのだが目の前の少女はどうやら常識やぶりらしい。


「ほらどうした行くぞ!!」

その手から放たれた緑色の立方体はまるで銃弾のように加速し俺めがけて飛んでくる。

それだけじゃない。動こうとするといたるところに見えない結界が張られておりむやみに動くと衝突して体勢を崩される。

こちらも向こうの結界銃弾を銀色の羽で防ぐが向こうのは消えずにまた柊さんの元へと戻っていく。

「私の弾をはじくとは・・・中々に良い盾だな!!」

負けじと鉄の塊を無数に作り彼女めがけて飛ばすが分厚い半透明の壁に阻まれて消滅してしまう。

「これが効かないなら・・・こうだ!」

おれはすでに無数にある鉄の粒子たちを地面からタコの足のように8本生やしてその鉄の塊で叩き潰すべくふりまわすが、まるで瞬間移動のようにヒュンヒュン移動されてしまうため全然狙いが定まらない。


「なんだよそれ! 瞬間移動!?」

「いや違うぞ。転移結界というやつだ。まあこれを使える奴は私の国には私ともう一人しかいないがな」


なんだよそれ! そんな魔法あったか!?

瞬間移動的なものは闇魔法で代用できるから風魔法のその類は知らなかった。

銃弾をはじきつつ、彼女が近づいてきたら体に憑依して接近戦にという形にはなっているものの、風魔法をまとった拳や蹴りは中々に強烈だし、急に目の前に結界が現れて行動を制限されたりともはや手の上で転がされているような感覚になっていく。


「ウノ! そっちはどうだ!?」

「どうもこうも、がは! 押されっぱなしだ糞が!!」

横を見るとどうも同じように無数に張り巡らされている結界にかなり手間取っているように見える。

が、熟練の戦士であろう牡丹さんにギリギリ立ち向かえている時点でやはりかなりの実力者ではあろうことが見て取れる。

それに加え牡丹さんもその長い杖からいろんな効果を持つ結界を駆使して戦っているからかなり押されているようだ。


「また結界っ・・・急に来るなほんと!」

「ふふ、これが2対2であることを忘れたか?」

「・・・やっぱりお互いに張り合ってるんだね」

「まあの。こっちが一瞬収まったら向こうを手助けするといった感じよ。負けたくはないからな。まあ牡丹のほうは若干手を抜いているようだが」


『残り時間 1分です』


「ほう、もうそんな時間か。夕貴殿も、あの金髪の男もよく耐えたがもう終わりにしようか。なかなか楽しかったぞ」

正直このまま行ったら俺は勝てない。あくまで“俺”は。


一瞬の隙を見てウノのほうに全力で走る。

全ての鉄を身にまとい目の前にある結界をたたき割りながら強引にウノのもとにつく。

それに応じるように目の前に瞬間移動してくる柊さん。

「死ぬときは一緒に、か? それがこの国の文化なのか?」

いまおれの半径2m範囲内に4人全員がいるという形になった。

「てめえ急に近づいてきてどうし、ぐはあ!」

ウノに近づくと同時に鉄の塊で彼をできるだけ遠くに吹っ飛ばす。これで死んだらもう知らん。


これによって形としては牡丹さんと交戦していたウノと俺の位置が入れ替わりその目の前に柊さんが瞬間移動しているようなものとなった。

「いや、一緒に死ぬのはあんたたちとだ!!


雷神の怒り(トラローク)!!!」


晴天を模していたこの会場にどす黒い暗雲が即座に形成されそこからありえないほどの超高圧で巨大な落雷が俺めがけて降り注ぐ。

それは白色の火柱のようなものになり轟音とともにその近辺にあるものすべてを蹴散らし、大地をえぐり何もかもを破壊してしまった。

音が鳴りやんだ時その場所に残ったのは巨大なクレーターだけであった。




その爆音で意識が覚醒したウノはその日目の当たりにした2つの魔法についてのちにこう語る。


―――あれは、魔法じゃなく天災だ。


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