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21.ウノと一緒に

「おい、てめえが7番だろ」

「そう、だよ。多分君とペアになる成瀬夕貴だ。よろしく。君の名前はウノだよね?」

「今回偶々ペアになるだけだ。それ以上でもそれ以下でもない」

「そんな悲しいこと言うなよ・・・。これから仲良くしようよ!」

「うるせえな。おれは一人のほうが楽なんだよ。それにてめえさっきから左手で腕輪隠してるけどてめえもしかして相当低いのか? とんだカスと当たっちまったぜ。おら、みせてみろよ!!」

「ちょ待っ!」


ウノに左手を引っぺがされて高々と俺の右腕が掲げられ俺の数字があらわになる。

そこには爛々と50の値が示されていた。

「な、50だと? ただのカスじゃねえか」

俺とウノのやり取りを聞いていたのか周りの生徒たちが声を上げて笑い始める。


「ぷっ、50! 50だと! くすっ、それはひでぇな。なんであいつみたいなやつがこの学園に入れるんだよ」

「裏口入学とか? 大金積んで入ったんじゃね?」

「あーそれならあり得るかもー裏口入学とか信じらんない}

「まだ中学生とかのほうがあるんじゃないの?」

「この学園の恥じゃない! おもしろいけど!」


そう、そうだ。これが俺の“普通”の評価だ。

今まであったリラとかエルサが異常だっただけで俺はこの社会の目と戦って生きていかないといけないのだ。学園には入れて浮かれていたけどおれはどこに行ったって落ちこぼれの評価から始まるのだ。


「もともとペアを組む気なんてさらさらなかったがさらに組む気が失せた。てめえはひっこんでろ」

「な! やってみなくちゃわかんねえだろ!」

「そのしょぼい魔力でどう戦うってんだ。お前多分学校辞めたほうがいいぞ」


俺とウノが少々ヒートアップしてきたところでさっきまで笑っていた男子生徒が話しかけてくる。


「くくっ! お前のその魔力じゃ論外だけどそもそもその男と組むのはやめたほうがいいし近寄らないほうがいいぜ!なんせそいつは中学の大会で味方全員巻き添えにして大敗を喫した『跳弾王』の異名を持つ落ちこぼれだからなあ! 近くにいるだけで巻き添えくらうぜ! もともと顔が怖いし近寄る奴なんてそもそもいないし、まあお前ならどんな奴でも巻き添えになりそうだけど!」


またもや大爆笑が起こる。

こいつら王立学園に入学しただけあってやっぱりプライドが高い。

人を嘲ることに快感を覚えているのだろうか。いやそうに違いない。

なんかかなり癪に障る煽り方をしてくる。

自分が貶されるのはギリギリ我慢できるが他人が馬鹿にされると無性にイライラする。

とくに温室育ちであろう貴族様たちがこうも寄ってたかって馬鹿にしている様を見ると我慢できない。


「そういうわけだ。もともと俺は他人を巻き込まずして戦えねえ。てめえみたいなカスはすっこんでろ」

「いや、でも相方が強けりゃ巻き込まれてもそんなダメージにならねえだろ。ってことはその時の見方も、今目の前で笑ってくこいつらも全員ウノより弱いってことじゃねえか」

そういって目の前にいる男子生徒たちを指さす。

「はっ、魔力50野郎がどの口きいてやがる粋がるのもたいがいにしろよ」

「粋がってなんかない。多分俺はお前らよりも強いし俺ならお前の攻撃にも耐えてお前のパートナーになってやる。どうだ? こいつらに一泡吹かせてみないか!?」


「おいおいおい、僕たちを差し置いてなんていう会話をしているんだい? せっかくかわいそうな君に忠告してあげたのに僕らが君たちより弱いだって? たかだか魔力50の糞カス貧乏人が? 僕らに勝てるだって?? 冗談が過ぎないかみんな!!!」

「こう言ってるが君はどうなんだ?ウノ」

「・・・てめえのその自信がどこから生まれてきてんのか知らねえが・・・勝手にしろ」

「よし、じゃあ向かおうか! 君たちと戦えるの楽しみにしてるよ! エリート様方!!」


「おい、お前らそこで何やってる!! 早く摸擬戦場には入れ!!!」

先生の怒声が響き渡り俺らは腕輪をはめ、茫然としている男子生徒たちを置いて摸擬場の中へと入っていった。



*****

俺らはまず待機部屋に案内された。

どうやら致命傷寸前のダメージを食らったらここに無理やり転送させられるらしい



「ルールは簡単だ! 今から10分間、二人一組のペアになってほかの組と戦ってもらう。この摸擬戦場は今は何もない空間だが様々な場所を投影して実際硬さ、質量を持つ立体映像を映し出せる!今回はビル街だ。こちらで開始の合図を出すからそこからは他のペアをできるだけ倒せ! よし、それではお前らの腕輪の中央を見ろ。赤く光ってるはずだ。それを押したら摸擬戦場へとワープする! 準備できたものから押せ!」


説明が終わり順に生徒たちがワープしていく。

俺はスイッチを押す前にウノのほうを見ると目が合った。

「・・・俺の魔法で一撃で死んでも知らねえぞ」

「任せとけって。俺らが勝つから」

「・・・」


俺は力強くスイッチを押す。

瞬間、視界が真っ黒になり気付いた時にはビル街の中の一角のビルの頂上にいた。隣にはウノがいる。


『よし、全員ワープしたな! これより第一回摸擬戦を始める!!!』


こうして高校生活初めての魔法を使った戦闘訓練が始まった。



****


「さあてどうするかな。たしかクラスは36人だったから、俺ら抜いて17組か・・・結構多いな」

「・・・敵が来たら俺は魔法を発動する。そのあとは巻き込まれるなり死ぬなり勝手にしろ」

「俺が死ぬ前提かよ・・・。まあ見とけって!」

「そんなしょぼい魔力のやつに何言われても信用も信頼もできない」

「じゃあ目に焼き付けてくれよ。おっといきなりお出ましだ!」

前方から火の玉が飛んでくる。

俺はまだ度の魔法を使おうか決めかねていたためとりあえず避けようと足に力を込めた時だった。

電光石火(ライトニング)!」

横の金髪男があのルーンさんも使っていた第8階級魔法を発動する。

こいつそんなの使えるのかと感心したのも束の間、突如として俺の全身に電撃が走る。

「おい、ちょっ! ひぎゃああああああああああっ!」

恐らく古典的な漫画の表記では俺の骨が一瞬透けていたに違いない。

それほどの電流が俺の全身に走った。


ウノが火の玉を相殺してすぐに魔法を解いたからギリギリ転移装置は発動しなかったが俺は大ダメージを負ってしまった。開始数秒にして。

「だからいっただろ。俺の魔法は人を巻き込まずに戦えねえって。わかったらすっこんでろぼんくら」

高圧電流を浴びてプスプスと黒煙を上げて倒れる俺に向かって暴言を浴びせる金髪男。心なしか先ほどよりも冷徹に見える。

「い、いやまだまだこれから・・・」

「頭爆発ししてんぞ。もう無理だろ」

「ま、まかせとけって・・・」


まさかここまでとは思ってはいなかったが・・・

さあ、どの魔法を使おうか。


*****


「命中したか?」

「いえ、雷の魔法に防がれたみたいです」

「ちっ、でもまぁあれでもう片方の魔力50男は死んだだろ。もう片割れ倒しに行くぞ」

「了解です」


少し遠くからウノと夕貴を見つけた男女のペアは二人に向かって攻撃を仕掛けたものの不発に終わったことにより接近戦にすることに変えた。それが彼女らの過ちであったと言えよう。



「どうすんだお前、さすがに次は耐えれねえだろ」

「それなんだけど今2択なんだ。君を炎か氷のどちらで巻き込んで戦うか」

「はあ!? 何を言ってやがる。お前みたいなやつが2属性の魔法を使いこなせるわけねえだろ!」

「そのとおりだよ。だから巻き込んじゃうんだ。一応闇魔法も考えたけど、酔いが転移後で起こったら困るからちょっと今日は使いたくないし、一番無難な土魔法はもしかしたら俺が君の魔法で感電する恐れがあるから。多分大丈夫だけど」

「わけわかんねえよ。勝手にしろ」

「じゃあ動きやすい炎魔法にする。巻き添えになっても文句言わないでね」

「はあ!?? さっきからてめえはなんなんだよ!! てめえごときに巻き込まれるわけねえだろ!!!」


「やあこんにちは落ちこぼれ諸君。僕が倒しに来てあげたよ」


俺らの会話をさえぎりいやらしい笑顔を張り付けてこちらに向かってきたのは先ほど俺らと言い争いになった男子生徒と無言で後ろを歩く一人の女子生徒。

「さっきの雷でそっちの50男は死んだと思っていたが・・・運がいいみたいだね。そういうのを雑草魂っていうのかな? 僕には無縁の言葉だけど。まあこっちの敵はそっちの金髪ヤンキーだけだしほら、いつもみたいに雷を暴発させてみろよ!」

「ちっ、うるせえな! いわれなくてもやってやるよ!!」

また先ほどの魔法を身にまとおうと魔力を練るウノを手で制し一歩前に出る。

「いや、まずは俺を倒してからだな。ウノはやばいと思ったら逃げてくれ。多分巻き込む」

「ああもうてめえはいい加減に・・・」

神話の拒絶(カグツチ)


突如として熱風が吹き荒れあたりが赤色に照らされる。

いつ使ってもこの炎は熱く、その強さを俺に骨の髄まで染み入らせようと紅く燃え滾る。

ウノはというと召喚したときの熱風で屋上の端のほうまで飛ばされてしまった。なんかすまん。

刀を少し動かしただけで熱風がその場を充満させる。


「な、なんだよその魔法・・・見たことないぞ!おい、あんた火魔法の使い手だろ!あれはなんだ!」

「いえ、あれは流石に私も知りません!なに・・・あれ・・・!?」


驚く二人を尻目にウノのほうを振り返る。

尻を打ったのか痛そうにさすりながらゆっくりとこちらに近づいてくる。

「おいっなんだこれは!!! お前は何者なんだ・・・!?」

「すまんなふっとばしちゃって。俺は、そうだな。この学園の推薦入学者だよ。その目に俺の魔法を焼き付けておいてくれ」


おびえる二人に向き直り切っ先を向ける。

「二人には悪いけどここでどんだけ魔法をぶっ放しても死なないみたいだから加減なしでやらせてもらうね。炎舞一ノ太刀 閃火」


掛け声に呼応し真っ白に輝いた刀を横なぎに払う。

そこからあまりにも高熱の斬撃が形あるものすべてを焼き尽くす。

一瞬の無音な時間が生まれた後、俺のたった一振りの刀によって今見える前方は焦土と化してしまった。




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