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20.初授業

柊さんと話しながら体育館から俺らのクラスであるCクラスに向かい、黒板に張り出されている座席表通りの席に座る。教室の感じはゲームで見たまんまであり少しホッとする。まあ前世の時の教室ともあまり大差ないけど。

ホームルーム開始までまだ時間があるようでクラスの人たちは大体半分くらいが立ち上がって自己紹介を始めていたり元々友達だったのか、固まってしゃべったりしている。柊さんはと言うと自分の席に座るなり一人の男子生徒にしゃべりかけられている。その男子生徒も柊さんと同じ緑髪であった。

やっぱ柊さんは有名なのかなぁなんてお気楽な事を考えてながらその様子を見ていると不意に振り返ったその男子生徒とばっちり目が合ってしまった。

なんとなく会釈で返してみるも途轍もなく怖い形相でにらまれてしまい俺のメンタルゲージが音を立てて削られていくのがわかる。もう帰りたくなってくる。

柊さんがその男子生徒の頭をひっ叩いているのはその時の俺は見ることができなかった。


さらにここで一つ困ったことがある。いや、主人公がいない時点で困ったどころかもはやゲームオーバーな気がしないでもないが。

・・・クラスの人たちの事前情報が全くない。

いや、これに関しては前世の高校の入学式と同じだしそれが当たり前だという人もいるかもしれないが、せっかくほぼすべての情報が先にわかっている世界に来れたというのにそのアドバンテージが全く役に立たないという状況なのである。

これで俺がもしもDクラスならゲーム通りの構成だろうから人生イージーモードであっただろうに柊さん以外はまじで初めまして状態である。ここにきてニューゲームが始まってしまった。

とりあえずは友好関係を広げていかねばと、俺の間後ろの席に座って窓の外を頬杖をついて眺めている金髪の男子生徒に意を決して話しかけてみることにした。ちなみに俺の席は窓際の後ろから2番目というなかなかいい席であった。その後ろに金髪男子生徒がいる。


「や、やあはじめまして。俺は成瀬夕貴っていうんだけど・・・きみは?」

「・・・・・」


ガン無視である。

こっちを一瞥すらしてくれない。もはや人として判別されているかどうかすら怪しい対応である。

さっきの緑髪といい後ろの金髪といいもうこのクラスにまともな奴いないんじゃねえかとばらばらに砕けたハートを必死に抱えながら前を向き直るとちょうどいいタイミングで前のドアが盛大に開く。


「おい、やかましいぞ! 今立っているものはすぐに自分の席につけ!ホームルームを始める!」


THE・体育系のような発言とともに俺らの教室に入ってきたのはやけに見覚えがある30代くらいのおっさん。ドアを閉めゆっくりと教卓の上に昇りあたりを見渡す。さっきまであんなに騒がしかった教室も急に静かになる。


「今からホームルームを始める。俺がこのクラスの担任のハーゲン・グラシャだ。一年間お前たちの担任をやる。お前たちはこの学校を由緒正しきアドミラ学園とわかって入学したわけだがその自覚が本当にあるのか?」


開口一番説教から始まるこのおっさんの事を俺は知っている。

あの推薦入試の時にも俺に食って掛かってきたあのおっさんだ。


どうやら俺は男運というのが欠落しているらしい。



*****


あのあと30分くらいこの学校の歴史や品格についてなど長ったらしく説教まがいな演説を聞き、クラス内で自己紹介をした。

とりあえず、俺は差しさわりの無いことだけ述べて俺の番は終えた。一応何となくだが推薦入試で入ったことは伏せておいた。

この自己紹介タイムで後ろの金髪はウノ、さっきにらんできた緑髪の男子生徒は牡丹ということが判明した。牡丹に関しては柊と同じ花の精の国出身とのことだからおそらく柊の護衛なのだろう。

担任のグラシャ先生含めたこの三人は今初めて知ったということはあまり物語にはかかわってこないのだろう。


「これで全員の自己紹介は終わりか。一年同じクラスなのだから顔と名前くらいは覚えておけ。これからについてだが、いまからお前たちには模擬戦場にいってそこでこの学校が誇る設備の紹介をする。まあ時間が余れば軽い運動くらいはするかもしれないがな。時間もそこまでないから早く移動するぞ。席をたて!」


摸擬戦の設備といえば心当たりは一つしかない。だがその説明は今日ではないはず。これはCクラスだからなのかはたまたシナリオが変わってしまったのか。どっちにしてももう前世の記憶はほぼ役に立たないことが判明してしまったが。

もう考えだしたらきりがない不安を抱えながら重い足取りで先生の後ろをついていき摸擬戦場へと向かうことにした。



*****


推薦入試で使った闘技場とは違い、それよりも数倍おおきな建物に一行は向かう。

中に入るとそこは大きなガラス張りの空間になっており、それ以外は何もないただただ広い空間が広がっていた。


「これがこの学園、いやこの国が誇る最新鋭の摸擬戦場だ。今から一人一つこの腕輪を渡す。受け取ったら自分の名前がちゃんと表示されているか確認しろ。この腕輪はセーフティバンクルといってこれをつけてここで摸擬戦を行えば、0.0001秒刻みで自分の体にある一定以上のダメージが入ったときに待機室に強制的にワープさせるという優れものだ。まあつまりは仮に俺の心臓が誰かに刺されたとして致命傷になる寸前のタイミングで無理やり転移させられるってわけだ。この一定値は人によって違うからまずは自分の魔力をそこに込めろ。自分の体、能力にあった値がそこで設定されるからな。次からはつけるたびに自動で更新されていくから安心して鍛錬に励め。これから摸擬戦は基本ここで行う。実践の戦いと違って死ぬことはおそらくないが緊張感をもって行うように! 実際の戦場では命は一つしかないからな。よし、確認が終わったやつからこれを手にはめろ!! あと絶対なくすなよ。摸擬戦の勝敗やあとから説明する順位戦の管理はすべてこの腕輪で行うから回収はしないからな。まあ学生証みたいなものだ」


説明が終わり先生が一人一人その腕輪を渡していく。

渡されたときにボソッと「おまえの実力、この目で確かめさせてもらう」みたいなことを言われてとっさに何も言い返せなかったが要はこの学園生活で結果を示せばいいのだ。


この仕様はゲームと丸々一緒だし何よりこの設備、この方式は俺の魔法にあまりにも相性が良すぎる。

恐らくだが光と炎魔法はかなり相性がいいんじゃないか。

そんなこんな考えながら腕輪をはめ、表示されたとおりに魔力を込める。

「はああ!」

必死に込めた俺の魔力は腕輪に伝わり俺仕様の俺のためだけの腕輪、もとい学生証が完成する。

「おいお前の魔力の値どうだった? おれ300!」

「え! お前すげえな俺なんて250だよ」

そんな会話がいろんなところからちらほら上がってくる。

話を聞く限りではみんなだいたいその辺らしい。確かゲームでも入学初期の魔力ステータスはそんなもんだった気がするし妥当であろう。

一方の俺はというと

「・・・・50ってまじか」

完全に俺の魔力量が少ないということを忘れていた。

この魔力量はだいたい中学一年生と同じくらいである、と俺の記憶が言っている。

とてもじゃないけどこんな数字だれにもみられるわけにはいかない。

そっと腕輪を左手で隠すように包む。

だいたい腕輪が全員にいきわたったようでみんなそれぞれ設定が終わったように見受けられるあたりで先生が口を開く。


「よし、物は試しという言葉もあるし今日は出席番号が隣同氏のやつらでペアを組んで軽く摸擬戦をする!さあ早くペアをつくれ!」


出席番号が隣同士、つまり1と2、3と4・・・みたいな感じで組むわけか。

・・・あれ確か席順って出席番号順だったような?

俺の番号は7番。これは奇数だし、おそらく俺のペアは後ろの席のやつでは・・・?


「おい、てめえが7番だろ」

俺の目の前に現れたのはさっき見かけた大柄の眼付きの悪いヤンキーみたいな風貌のやつ。

このガラの悪い金髪男が俺のパートナーのようだ。


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