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2.最上級魔法のデメリット 光+氷

目が覚めるとそこは見知らぬ天井であったーー

似たようなことが最近もあったなぁとなぜか痛む全身にムチ打ちなんとか起き上がってみる。

外を見てみると空がオレンジ色に染まっている。多分夕方なのかな。

ツンとくる薬品の匂いから多分ここは病院か保健室なのだろう。

そんなことを思っているとドアのほうに気配を感じた。


「兄さん! 起きたのですね!」


ドアから制服姿のレイが起き上がっている俺に抱き着いてくる。

中学生の割には大きいほうだと思われる胸部が俺に押し付けられ、薬品臭かった周りが急にいい匂いになったように思われた。正直かなり興奮する。


「よかった、本当に良かったっ! もう目覚めなかったらどうしようかと・・」

「俺もレイが無事で本当に良かったよ。ただ何であんな無茶なことしたんだ」

「その言葉そのままお返しします。無謀なことをしたのは兄さんでしょう? あの時()()()()落雷が魔物に落ちたから事なきを得ましたが本来ならもう死んでいるところだったのですよ?そもそも落雷が落ちたのに生きているのが不思議なくらです」


どうやらあの落雷はたまたまの自然現象として扱われてるみたいだ。

まぁ俺が魔法をほぼ使えないのは周知の事実だし当たり前か。


「なんだかんだ言ってお互い生きているからよかったじゃないか」

「兄さんは楽観的すぎです! もし死んでしまったら私はっ!」


そのときドアが開く音がした。

「あら、目を覚ましたのねユーキ」

「母さん・・・」

「なんだかいろいろ大変だったみたいね。でも二人ともこうして元気そうでよかったわ」


そこからは、あんだけのことがあったのにのほほーんとしている俺と母さん、そしておろおろしているレイと三人で日が暮れるまでその後の経緯について話した。


今回の事件の顛末としては突如降ってきた落雷により魔物は消滅。ただ、ワープゲートが出現してから部隊が来るのが非常に遅かったのが問題となり、いまいろいろ調査されているみたいだ。

結果として死者はゼロ。レイも目立った怪我もなく済んだらしい。

俺はというと意識を失った後そのまますぐ病院に運ばれてある一日寝てたとのこと。


そのあと病院の検査を受け、退院することができたのはあの事件が起こってから4日後のことだった。


*****


あの事件以降初の学校に行くと俺は妹を守った英雄?としてなのか、そこそこの有名人となっていた。


ただ、俺のあだ名が「避雷針」となったのは許せない。

新聞部発行しているポスターに『避雷針、決死の覚悟で妹を救う』なんて書かれているのをみたときは流石に胸に来るものがあった。


なんやかんやでその日の授業が終わりいつものように学校の前の公園でレイを待っていると携帯電話にレイからのメールが来た。

《すみませんが、先生に呼び出されてしまったので帰るのが遅くなると思われます。先に帰っていてください。 レイ》


あの事件がきっかけでレイはさらに注目を浴びることになった。もしかしたらどっかからオファーが来たのかもしれない。対する俺は走ってたらたまたま雷が落ちた歩く避雷針扱いだ。まあもともと魔法が使えなかったからどう思われても仕方がないけど。


「レイはすごいな・・・」


羨望と若干の嫉妬をはらんだ独り言が無意識にこぼれた。

と同時にあの時の光景がフラッシュバックし、体はまだ覚えてるぞと言わんばかりに激しく鼓動が波打つ。


・・・もしかしたらあの魔法、今でも使えるかもしれない。


そう思ってからは早かった。近くのいつも目印にしている公園の中央にあるあの大木に向き合い、周りに人がいないのを確認して目を閉じ神経を研ぎ澄ませる。

―――いける。感覚はあの時と同じだ。

目を見開き、照準を大木に向け俺は高らかにあの名前を呼ぶ。


雷神の怒り(トラローク)


直後雲一つなかったそれに鉛のような雲ができそこから一直線にとんでもなくでかい雷が落ちてくる。


・・・俺に向かって


「ぎゃああああああああっ」


全身に激痛が走り周りは音の衝撃波が広がる。

俺が的にしたはずの大木はその衝撃波でありえないほどしなる。


「もしかしたらこれ、()()()()落とせないのか・・・?」

そんなことを考えながら俺はまたもや意識を手放した。



******



目が覚めると・・・いやもういいこのくだり何回目だ?また見知らぬ天井だし。

ただこの前と似ている気がする・・・多分、前と同じ病院だ。


前回と違う点として今回はすでにレイが椅子に座って俺のベッドを枕にして眠っている。

茶色がかった俺の髪色とは違う真っ黒で艶のある髪をなでるとレイが目を開ける。


「悪ぃ、起こしちまったか?」

「・・・兄さん、私が聞きたいのはその言葉ではないことわかってますよね?」

「え、えーっと? その、ごめんなさい?」

「はぁ、『ごめんなさい』ということはやはりあの落雷は兄さんが起こしているのですね」

「あ、あぁ突然使えるようになった」


正直言うかどうか悩んだけどレイに隠し通すのは無理だと感じとりあえず理由がわからないが使えるようになったことを伝える。


「あれって光属性の最上級魔法ですよね? なぜほぼ魔法の使えない兄さんが突然あんな誰も使えないはずの13階級の魔法を使えるようになったのか疑問で仕方がないのですが?」

「み、見てたのか?」

「まぁあんな爆音が轟いたら誰でも外を見るでしょうに・・・。それよりも早く質問に答えてください」

「俺に聞くなよ・・・。正直いま落雷の影響で頭がガンガンするから深く考えられない」


「ふぅまぁいいでしょう。とりあえずあの魔法はもう使わないでください。兄さんの命に関わることなので」

といって俺の頭を優しくなでる。その顔は聖母のようですっかり見入ってしまった。


「わかった。なるべく善処する」


ただ、この笑顔を守るためなら命に引き換えても使う。と心の中で付け加えて。



*****



今回の入院は前回と違って割と長引くーと主治医の先生に言われた。

確かに一週間で二回雷に打たれそれでもピンピンしている人間を見たら隅々まで調査するのは当然なのかもしれない。

いつものようにベッドで上体だけ起こして外を眺めているとあることに気づいた。


「確かあの魔物(ムカデ)と戦ったときに頭に入ってきたのは光魔法だけじゃないよな・・・」


思いだしてしまってはもう抑えられない。

看護婦さんには散歩といってとりあえず人目につかなさそうな広い場所を探す。

多分病院の屋上なら人がいないし、広いということに気づき屋上へと向かとうとそこに人はおらず、いい感じの広さが広がっていた。


「ここで試すなら“氷”だよな」


CORにおいて光の最上級魔法『雷神の怒り(トラローク)』は単体火力が一番の魔法であったが、今から試そうとしている氷魔法は全体に高火力が出せるものであった。


「この魔法なら多分俺に影響は少ないだろう」


そう言って神経を集中させる。大丈夫、イメージは十分についている。

魔法式を頭に浮かべ始めるとあたりの温度がぐんぐん下がるのが分かる。

いけるっ!


氷帝の憂い(クライオニクス)


言い終えたあと、自分を中心として螺旋状に氷の世界が広がっていく。

また、自分の止めたいところで止めることができたため、周りに影響が出ることは防げた。

魔法はちゃんと発動したし、今までのように意識を失うことはなかった。

ただ一つ、これにも欠陥があった。


自分の腰から下も見事に凍り付いている


「あれっ、ちょっ! 動けない! まって!」


叫び声むなしく下半身が氷漬けになっている男の醜い銅像がここに完成した。




**************



最上級魔法紹介:雷神の怒り(トラローク)


CORにおいて光の最上級魔法。

対象にした一か所に空から超強力な雷を落としさらにその衝撃波で周りにもダメージを与える。

この魔法を防げるものはいないが、自分が一定時間行動不能になるというデメリットもある。

そのため、相手をある程度削ってからフィニッシャーとして使われることが多い。


この世界においてユーキが使用すると対象は自分自身しか選べず、使用すると丸一日行動不能になる。









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