19.大戦犯
Cycle of reverse 略してCOR
このゲームには大きく分けると二つのゲームモードがある。
一つはストーリモード、もう一つは対戦モードだ。
プレイヤーはまずストーリーモードをプレイしてその中で色々な魔法具や魔法を習得して、そのストーリーを完走することでそこで得たスキルや道具を対戦用のキャラクターに引き継ぐというのがこのゲームの進め方であった。
また、ストーリーモードを1回クリアすると次からは2周目に入り、その前に得た魔法や一部の道具、スキルを引き継いだ状態でもう一度レベルや経験値は初期状態に戻り新しくストーリーが始まる。
2周目以降は大体のストーリーは一緒だが一部キャラとのイベントや出てくる魔物のレベルや道具、習得できる魔法、中ボスやラスボスまで変わるという仕様であり、そこからはどんどん週を重ねるにつれて難易度がどんどん上がっていくのだった。また、親密度を上げることで特定の異性のプレイヤーとお付き合いすることもできたため、自分の意志で毎周違うイベントを見れたりもした。熱狂的なファンは同じヒロインしか選ばななかったみたいだが。
そして何より俺にとって重要だったのが、俺が意地でも習得しようとした最高位魔法たちはこのストーリーモードを何周もしないと習得できないものとなっていた。
だからライト勢は何周かしたらひたすら対戦モードをやってたし、俺みたいに全部の魔法をコンプリートしようとかいう謎のこだわりを持っていたやつらはストーリーモードをやりこみまくった。
馬鹿な俺らはただひたすら周回し続けた。何周も何周も。
毎周ちょっとずつストーリーや他キャラとの関係性や章ごとのボスが違う周もあったりしていたから飽きるということはあまりなかったが、このゲーム、10周目以降は負けるとその周の最初からになるという鬼畜仕が搭載されておりで何度心が折れそうになったことか。また習得ミッションもあほみたいに難しく数々の廃人プレイヤーを絶望に叩き落とした。
さらにいくつかのミッションを全てクリアしないと次の周にならないという鬼畜仕様もあり、ゲームでは10周目でもプレイは15周目なんてことはざらにあった。
ようは極めようとすればするほど沼にはまっていくっていうことだ。
少し長くはなったがその『ストーリーモード』でプレイヤーが操作することにになるのが東雲弘人なのだ。
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おれは体育館で行われた入学式中、そしてそれが終わって教室に向かう最中の今も、頭が真っ白のまんまだった。
あれから何度も掲示板を見直したがどのクラスにも東雲弘人の名前は見当たらなかった。
もはや言うまでもなく、彼が入学できなかったのは俺のせいであるに違いない。
『バタフライ効果』という言葉があるがおそらくはその類で、俺が入学したことによって何らかの影響が彼に出たのであろう。そしてもう一つ考えられる原因として・・・
「むっ、夕貴殿ではないか! こんなところで会えるとはな。名簿を見たがどうやら1年間同じ学び舎で過ごすことになるようだな。いやはや、知り合いがすでにいるのは心強い。よろしく頼むぞ!!」
目の前にいるこの緑のショートカットが特徴的な少女であろう。
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「お久しぶりです、柊さん」
「む、なんだ敬語なぞいらぬ。そんなにかしこまらずフレンドリーに話しかけよ!」
なんかこの会話誰かともした気がするな・・・
そして俺はなぜか同年代とわかっているのに敬語が出てしまう癖があるらしい。
『花の精の国』が俺らと同じ時の流れで年を取るかどうかは知らないが。
「じゃあ、柊さん。同じクラスみたいだね、一年間よろしく!」
「うむ! それでいい。私は一応勢力の小さい皇女ではあるがやはり敬語を使われるのは好かん」
「やっぱりそうだよなー。へっ?」
変な声が出た。口が開いたままふさがらない。もともと機能していなかった頭がさらに混乱する。
あんだけやりこんだと自負はしていたがこれに関してはまじで知らなかった。他国のお偉いさんというのは知っていたけど、ゲーム中はそこまで彼女と深くかかわらなかったし、まさか姫君だとは思っていなかった。そこらの貴族あたりだと思っていた。
そういえば前世においてある日急に柊さん推しに変わっていた友人がいた。
彼に聞いたら「え? お前まだ柊ルート通ってないの?そんだけやりこんでるのに? あれみたら見る目変わるぜまじで、やってみろって!!!」
と言っていた気がする。魔法習得のミッションにはかかわりがなかったから全部の魔法を習得したらやってみようとは思っていたがやれずに終わってしまったが。
おそらくそのルートを通っていれば柊さんについてはある程度理解できていたはずだが今は悔やんでも仕方ない。
「む、知らなかったのか? てっきり知っているものだと思っていたが。まあ、24いる皇子皇女の一人にすぎないがな。今日だって椿のやつがうるさくて仕方なかったわ。やれ危ないだの、見知らぬ人にはついていくなだの。覚えているか? あのとき私の近くにいたデカブツの護衛を」
あきれた様子で柊さんがため息交じりに話す。
その声にハッとし、またもや違うビジョンが頭を駆け巡る。
今度はこっちの世界での出来事だ。
「あああああ、あの、その、デパートでの件は本当にごめん!」
「デパート? ああ、あの突然主が嘔吐したときの事か。まあ・・・びっくりはしたが助かったのは事実だし私は全然気にしていないぞ。ただ、椿にはひと声かけておくとよいと思うが。結構嫌そうな顔で掃除しておったぞ」
思い出したくない過去がよみがえり冷汗が背中を伝う。
俺の黒歴史の今のとこNo.1に輝くエピソードである。
今度椿さんに会ったら五体投地で謝るしかない。まじで。
「そんなことよりおぬし、先ほどまで顔が真っ青だったが何かあったのか?」
そうだった。俺も彼女に聞きたいことがあったのを思い出した。
危うく黒歴史に心が蝕まれて終わるところであった。
「それ・・・なんですけど、あっ、なんだけど、その、入学試験ってどんな感じだった? とくに実技試験のほう」
彼女が一瞬怪訝そうな顔をしたからすぐに言い直す。
この学校の一般入試は実技試験、筆記試験、面接の三段階になっておりおそらく主人公が不合格になった原因は実技試験にあると思われる。
彼女はそれを聞いて「ふむ」と少し考えるしぐさをしてからこちらに向き直る。
「どう・・・と言われてもな。別に馬鹿でかいバーチャル室みたいなところに100人くらい受験生が押し込まれて仮想の魔物を制限時間中に何体倒せるかというものであったぞ。私の試験の時はほとんど私が倒したがな。まあ、公平性を保つために一定数倒したら満点として戻されるとのことだったが殲滅できないのは歯がゆくてちょろっと機械に結界で仕掛けはさせてもらったがな」
この人に何回驚かされているのかもはやわからない。大戦犯がここにいた。
おそらくそのグループに弘人がいたのであろう。
ただそもそも柊さんは俺がいなけりゃ柊さんはルーンさんの推薦枠だったし、ましてや他国の姫君を推薦じゃなくて一般入試を受けさせてる時点で学園側としては機嫌を損ねるわけにはいかなかっただろう。(これに関してはルーンさんのせいだし、それを快諾した柊さんも柊さんだが)
だから多少の異変は気づいても黙認したに違いない。そのせいで大変なことになっているが。
「主は私の代わりにルーンの推薦枠を使ったのだろう?近いうちにお手合わせをお願いしたいところだがな」
加えてこの人はかなりの戦闘狂だ。何もしないわけがなかった。
「ソ、ソウダネ。イツカヤロウ!」
思わず返事が片言になってしまうほどの絶望を覚えながらとりあえずこれからの事を考えることにした。
主人公ですがのちに重要人物として出てくるので忘れないで上げてください。
また修正作業ですが近いうちにやれたらなあと思います
さらにですが自分でもよくわからなくなってきたのでこれから『最上級魔法』に統一していきます。
拙い文章ですがよろしくお願いします。




