16.VSエルサ② +エルサの過去
彼女の扱う蒼い炎は触れても熱くはない。
その代わりに普通の炎と違い触った感触があり、もはやオーラの塊のようなものだ。
彼女の真骨頂、それは炎からあらゆるものを生成し思いのままに操ることである。
相手に炎の塊をぶつけてもやけどはしないが衝撃で吹き飛び、。炎から銃を生成して打ち込んだり剣を創って切り込むとと普通の銃や剣と大差ない威力が出せるという中々にチートな能力である。
ただ本来のフェニクス家が使用する、すべてを焼き尽くす炎を有して戦う戦闘スタイルからはあまりにかけ離れているが。
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全身に身体強化魔法をかけ、さらに右手に魔法陣を重ね掛けする。
彼女は迫りくる俺に対して蒼い炎で壁を作る。
俺の拳と炎がぶつかり合う。炎を殴っているとは到底思えないような衝撃が右腕に響く。
「見た目よりも全然感触が違うでしょう?そうやって驚いた人の顔を見るのが好きなのに・・・あなたは驚かないのですね」
「まぁな。想像の範疇を出なかったって感じか」
「おもしろいですねあなた。じゃあ、これならどうですか?」
急に炎が消え、開けた視界に移った彼女が右手には剣、左手には拳銃を携えこちらに銃口を向けていた。
「もっと楽しませてくださいね。私が飽きるまで」
彼女が放った銃を間一髪よけ距離をとる。
ある程度の間合いを取ったところでこちらも漆黒の剣を召喚し左手に持ち替える。
そこからフェニクスさんの銃での遠距離攻撃を防御の魔法陣で防ぎつつこちらも背後にいくつか発動した魔法陣からレーザーを何本も放つ。だがそんな俺の攻撃も彼女の炎の壁を打ち砕くことはできず消滅していく。遠距離では分が悪いと踏んだ俺は空中に魔法陣をいくつも出しそれを踏み台にして高速で詰め寄り剣の攻防が始まったがやはり3か月しか剣をふるっていない俺と日ごろから英才教育を受けてきたフェニクスさんとは大きな壁があり、さらに自身の炎をうまいこと盾に使いながら戦う彼女に決定打を与えられずにいた。
一方彼女も高速で動き回る俺には手を焼いているようで戦いはほぼ膠着状態であった。
「くっ、この、ちょこまかと! さきほどの魔法のほうが派手で強かったのでは!?」
「そういうあんたも大口切った割にこういうちまちまとした戦いが得意なのかよ」
「ええ、私にとって勝ちこそがすべてです。過程なんてどうでもいいの」
「ああそうかい。確かにこれじゃあフェニクス家の名を継ぐには自信はなくなるわな」
「・・・安い挑発ですね。見た感じ貴方はそういうことをする人には見えなかったのに」
「そりゃ今のあんたを見ればそう思うだろうよ。いまのあんたはまるであえて派手に戦っていないように見える」
「どういうことですか?私がわざと力を抑えているとでも?」
「ああ。だってその背中から出てる炎を自身のみにまとって戦ったりしたほうが本来の不死鳥っぽいしそのほうがいろいろできることないか?」
「いきなり何を言い出すかと思えばそんなことですか。これが私の戦闘スタイルなんです! わかったような口きかないでください!!」
しょうもない口論をしているうちに頭に血が上ってきたのか、先ほどよりもガードがだんだん薄くなってきている気がする。
「動揺しているんじゃないのか!隙があるぞ!!」
そういってわずかに生まれた隙に魔法陣をまとわせた右手を振りぬく。
予想通り、今度こそ俺の拳は何にも阻まれることなくフェニクスさんの腹部に直撃する。
身体強化を重ね掛けした俺の拳はいともたやすく彼女を壁まで弾き飛ばす。
ちょっとやりすぎたかと思い駆け寄ろうとしたがそんな不安も杞憂に終わった。
「ふふ、ふふふ。よくも私に一撃を入れましたね・・・。絶対に、絶対に許さない! あなたには見るも無残な敗北を味わってもらうわ。この魔法こそ私の努力の結晶。私の強さの原点!! 骨の髄まで味わいなさい!!!『双羽陽炎』」
彼女の目が本気になりさらに口調が変わる。
彼女の背中から炎が噴き出したと思えば彼女の周りを全て包んでいく。
炎が晴れた時、そこにはフェニクスさんが二人いた。
「「どっちが本物かわかるかしら?ここからが本番よ。」」
彼女が『神童』と呼ばれる所以が、目の前に現れた。
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たしか、ゲーム内で彼女の親密度を最大まで上げておくと冬休みのイベントあたりで彼女のこの魔法について聞くことができた。そのときの場面が頭によぎる。
『私が有名になった理由って知ってる?私は生まれた時から薄炎だなんだって出来損ないのレッテルを張られ続けて周りから同情とか好奇な目で見られたり、直接罵声を浴びせられたりしてたの。もちろんお父様は守ってくれたりしなかったし、お母様は私が小さいときに家を出ていったっきり会ってなかったからだれも私の事を守ってくれなかったわ。でもね、私の炎は私が想像できればなんでも作れるの。だから私はつらいとき、炎で私自身を作ってたの。だってそうすれば虐げられてるのは私じゃなくってこの炎だって思えたから。その炎だけが私の味方だったから。でもそんな毎日を過ごしてたらある日、炎でできたもう一人の私を見た使用人が私にこう言ったわ。「こんな魔法見たことがない。すごいです」って。そこから世間の私に対する評価は180°変わったの。こんな炎見たことがないとか、私のにらんだ通り、蒼い炎は可能性の塊だったんだ!とか。そのとき私は気づいたの。力こそこの世界のすべてだって。力さえあればすべての人に、お父様に認めてもらえるって。そんなときだったわ。空想のはずのもう一人の私がこういったの。「あなたはもう一人じゃない。私と一緒に戦おう」ってね。それから私の評価はぐんぐん上がっていったけどその分戦い間の記憶がなくなっていくようになったわ。もしかしたらもう一人の私が頑張ってくれてるのかもしれないわね。ふぅ、なんで私こんなに話しちゃったのかしら!ごめんね急に語っちゃって。そういえば・・・』
このいま目の前で発動された魔法こそ彼女の闇の根源、彼女の原点、そして彼女の唯一の理解者であるのだ。
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「「ふふ、驚いたでしょう。構えなさい、さもなくば瞬殺しちゃうわよ」」
「それがあんたの奥義か。ほんとに瓜二つだな」
「「あら、私のこの魔法をしっているのね。ならば話は早い。行かせてもらうわ」」
そういって二人同時に駆け出す。一人は片手に銃、もう片方に剣を持ちもう一人は両方に剣を持っている。
もしこれが息のそろった双子とか、長年連れ添ったパートナーとかならあくまで他人だから少しのコンビネーションミスや呼吸の乱れがあるだろうに、この魔法はフェニクスさんがもう一人を手足のように動かしているため全く隙がない。
銃での攻撃から防御の陣で守っているともう一方に後ろから太刀を入れられる。しかも炎のほうは実態が本来はないため消えて違うところに急に出現する、いわゆる瞬間移動で俺を惑わしてくるし、銃を持っているのも本体と陽炎で交互にやっている。本当にわからない。
そうこうしているうちに二人に囲まれいつの間にか両方二刀流になっている4本の剣で俺を徹底的に痛めつけに来た。
「「ほら、手が止まってきてるわよ。さっきまでの威勢はどうしたの!?」」
「うる、さいっ! ぐっ、この、がはっ!」
おれの腹部に強烈な蹴りが、顔面に拳が入れられる。身体強化をしているはずなのに鈍い痛みが俺を襲う。
その後も必死にレーザーで、拳で攻撃を試みるが全然当たらない。
「「もう終わりですか??? つまらない!!!」」
二人が同時に口を開く。はたから見るともはやリンチだ。大方そろそろ学長が辞めの合図を出すだろう。
だが俺にはまだ希望がある。
「まだだ、まだ俺は戦える! 闇の火柱!」
俺の真下にでかい魔法陣が出現し、そこから巨大な真っ黒な火柱が噴き出る。
魔法陣が出たとたん、危険を察知したのか彼女たちは魔法陣から慌てて外に出て距離をとる。
直後俺以外のすべてを塵にする火柱がグラウンド内であがったが不発に終わった。
ように見えたのであろう。
彼女たちは安心した顔をしている。ただ俺は彼女たちと距離さえ取れればよかった。手がざわつくんのが分かる。闇魔法と併用したことはないからどうなるかわからないがまあ何とかなるだろう。
「さぁ俺のもとに集まってこい! 創造新の欲望」
たちまちのうちに俺の右手は銀色の鎧で覆われ、背中からは翼が生えている。
「まだ、勝負はついていないぞ・・・!」
まだ、終わっていない。




