幕間4-6:脱出行/武装警官部隊
おっさんは行った。
後には俺だけが残された。
周囲警戒のために飛ばしていた蜂たちを回収する。戦闘と周囲警戒を同時に行うのは流石に無理があるからだ。
だが――
「さっさとケリつけておっさんの方に行かねぇとな」
――手早く始末つけちまえばなんの問題もねぇ。
俺は手持ち無沙汰のままでフード付きジャケットのポケットに両手を突っ込んだまま佇んだ。頭には目深にフードをかぶる。まだ素顔を晒す段階じゃない、
明かりが落ちて月明かりだけの芝生広場――、2分ほど待てば足音は着実に聞こえてくる。
「来たな?」
襲来者の総数把握のために周囲警戒の蜂を2匹ほど放つ。高度を一気に取り、俯瞰で見下ろす。光学系のホログラム迷彩機能は見られない、せいぜい熱サーモステルスくらいだろう。光学フィルター処理をした映像でそのシルエットはハッキリと判る。
「ふうん、そんなもんか」
総数は20機くらい。純白のプロテクターは日本警察お抱えのあの連中だ。
「武装警官部隊が2小隊か、ずいぶん高く評価してくれてるじゃねえか」
1小隊が10人、なので20人で2小隊、1小隊が前に出て攻撃して、残りが後方からの支援と見るべきだろう。
俺一人つぶやいていると芝生広場の突き当りの左手奥の坂へとつながるところから一気になだれ込んでくるシルエットがあった。
全身を包み込む純白のプロテクター、目元のカメラゴーグルが特徴的な甲冑型のシルエット。武装は2種類、遠距離攻撃を想定したU.S.M240E6カスタムモデルが10機、前列での速攻制圧を目的としたCZスコーピオンEVO3サブマシンガンが10機、一斉に列をなして俺の方へと銃口を向けていた。
プロテクターの両肩には小型サーチライトが取り付けられていて俺へと一斉に猛烈な光が浴びせられていたのだ。
『不法侵入者に注ぐ!』
後列中程の一人が拡声器越しの声を発している。俺への警告だろう。
『退路は無い! おとなしく投降しろ! さもなくば攻撃を加える!』
お約束どおりの陳腐なセリフ、だがこれくらいでハイわかりましたと言える俺じゃない。
ふてぶてしさを隠さずに俺は両手をフード付きジャケットのポケットに突っ込んだまま物陰から芝生広場の真っ只中へ歩き出した。
『止まれ!』
警告の声が響く。だが俺は無視する。顔の中に隠してるのが〝虫〟だけに――ってか? おい、笑えそこ。
――ザッ――
俺は敵対する20騎の武装警官たちを前に連中が最も攻撃しやすいところで足を止めた。そしてまだ頭部のフードは降ろさない。俺のフードには特殊なカモフラージュ装置が仕込まれている。フードを降ろさない限り遠目には顔のあたりが黒いモヤにかかったようにしか見えないのだ。
武装警官どもが沈黙する。俺が足を止めたことで素直に言うことを聞いたとでも思ったのだろう。
『そのまま両手を頭の後ろへ移動させて組め』
さらなる指示を下してくる。だが俺は言うとおりに両手を頭の後ろで組むふりをして――
「うるせーんだよ。白坊主どもがよぉ!」
――両手で払いのけるように頭に目深にかぶったフードを後ろへとおろしたのだ。





