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四の弐:明治村後編/乾坤一擲

 ガトリング男が言う。

 

「最後まで生き残れたら言ってやるよ」

「そうかよ」


 細長い敷地の中、ジリジリと二人は移動する。カツは両手に握りしめたガバメントとP320をガトリング男へと向けながら、攻撃するチャンスを伺っていた。そして――

 

――その時は来たのだった。


――ザッ!――


 足元を強く踏みしめながらガトリング男が言う。


「覚悟決めろよ」

「やなこった」

「そうかよ」


――ギュイイイン――


 頭部のガトリングの回転がトップスピードになる。マズルが赤熱する。ガトリング男の怒りが火を放ちとうとしていた――

 

「どうした?!」


――だが聞こえてきたのはガトリング男の不審げな声。どこかと通信をしているらしかった。


「なに? 居ない? どう言うことだ?」


 そのセリフから推察されるのは唯一つだ。つまり――

 

「カツ! 左だ!!」


――俺は叫んだ。敵はまんまと分断された。そして――


「オラァっ!!」


――追い詰められていたのは奴らの方なのだ。


――ガッ!!――


 カツのやつがシューズの左のかかとを強く踏み鳴らす。石畳に叩きつけるように思い切り踏みしめた。そしてそこには――

 

――カッ!――


――フラッシュグレネードが仕込まれているのだ。


 凄まじい閃光がほとばしる。そしてそれは電子カメラの受光素子を麻痺させるには十分すぎる光量だったのである。

 完全なる不意打ち。完全にすきを突く攻撃。ガトリング男が苦悶の声をあげる。

 

「がああぁっ!」


 畳み掛けるならば今だ。

 俺は仕掛けを発動させる。

 ガトリング男の右手側の茂みには予備の電磁パルス装置を仕込んでおいた。

 

――バチイィッ!――


 これで一気に落とせるわけではないが、敵の行動を止めるには十分だった。

 そして、トドメは俺が決める。

 

――ザザッ――


 茂みの中から飛び出すと一気に肉薄する。

 そして、腰の裏のホルスターから、俺の専用のカスタムスタンガンを取り出すと、ガトリング男の背後から飛びかかり、スタンガンをヤツの背骨へと押し付ける。

 

「カツ! 抑えろ!」

「はいっ!!」


 俺の動きに呼応してカツも飛びついてくる。正面からがっぷりに組み付くと逃げられないようにする。これで決まりだ。もう逃さねぇ。

 

「喰らえええっ!」


 俺は一気呵成に叫んだ。そしてカスタムスタンガンのトリガーを引く。スタンガンのモードは高周波放電――、人間よりもアンドロイドやサイボーグの電子装置を阻害することを狙った機能モードだ。

 高周波サイクルの高電圧がほとばしりガトリング男の体内機能を焼いていく。

 

「落ちろおぉぉ!」


 俺の叫びがこだまする。この一瞬、このチャンスこそが全てだった。確信はない。ただ任務完遂への思いがあるだけだ。

 俺とカツとで押さえ込み1分ほどそうしていただろうか?

 スタンガンのスイッチから手を離し、ガトリング男のからだから離れる。

 そして――

 

――ズッ――


――巨体が揺らめく。


――ズシャッ――


 ゆっくりと地面へと崩れて落ちていく。

 ラストはあっけなかった。拍子抜けするほどだった。

 ブレーカーの落ちた家電品のように敵はその巨体を沈黙させたのだ、

 荒い息をたてながら俺たちはゆっくりと立ち上がりながら、ガトリング男を見下ろしていた。

 汗を手の甲で拭きながらカツが問うてくる。

 

「死んだんですかね?」


 俺はシャツの襟首を緩めながら面倒臭そうに答えた。


「さぁな、人間やサイボーグじゃぁなさそうだしな。まぁ、なんとかなるだろう」

 

 ほんと、なんとかなってほしい。このまま死なれたら困るのはオレたちの方なのだから。

 

「はぁ――」


 カツのやつが盛大にため息をつく。

 

「ご苦労だったな」

「いえ、兄貴こそ」


 俺たちのからだを心地よい疲労と緊張感からのこわばりが襲っている。

 決着は付いた。これで〝面接〟には勝利したと俺は信じたかったのだ。


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