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僕たち、子供反乱軍  作者: 長谷川 健人
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第0話 終わりと、始まり 中編

月が沈み、太陽が昇り始めた頃。第二作戦会議室に男女八人の姿がある。


「では、第一支部に向かいたいと思います。皆さんここに笑顔で帰ってこれるように頑張りましょう」


「はい!」


麗鹿の言葉に逸早く反応したのはユーミ。それに続くように次々と個々に言葉を返していく。


「はっ!」


ライラは短い返事で。


「はい!」


彩はいつも通りの普通の返事。


「了解だぜ、た、隊ちょ…ぷっ、隊長」


昨日とは違い笑いながらも、しっかり『隊長』と言い切ったユー。


「もちろんなのである」


ドルトは独特の返事をする。


「は、はい」


レイガンは年が近く、友達である麗鹿にでも、少し落ち着かない感じで返事をする。


「お休…み……、」


いつも通りのリリータの気持ち良さそうな返事。

これで全員がこの場にいる全員が返事をした。


「じゃあ、行きましょうか!」


麗鹿の掛け声でこの部屋にいた者たちが、機体の置かれている第零倉庫へと向かって歩みを進める。

麗鹿、ユーミ、ライラ、彩、ユー、ドルト、レイガンの順に部屋を出て目的地へと向かう。

目的地の第零倉庫へとは直ぐに着いた。それぞれ自分の使う機体に乗り込み感覚を確認する。


『皆さん、用意は出来ましたか?』


機体同士の通信を全ての機体に繋いで現状況の確認を麗鹿。その通信にユーが答える。


『おう!用意出来たに決まってんじゃあねか』


『ユーさん、報告ありがとうございます。それでは、出撃し……』


『待って下さい、麗鹿!』


出撃を仕様としている時に、彩の麗鹿の出撃を止める声が全機体の通信機から響き渡る。

もちろん、全員出撃を止める。


『彩さん、何かありましたか?』


『麗鹿、リリータの姿がありません』


『なっ!』


彩の言葉を聞き、機体の数を数える麗鹿。その数は七機と一機足りない数だった。と言うことは、彩の言っていることは本当と言うことになる。


『すみません。これは自分のミスです。これでは隊長失格ですね…。はぁ…』


『麗鹿、ため息が聞こえてますよ。それよりも、早くリリータを探しましょう』


『その必要はないと思います』


『何故です麗鹿。それでは、リリータが何処に居るのか分からないではありませんか!』


麗鹿の言葉の意味を読み取り間違えた彩は、とても怒っているように他者からは見えた。

しかし、これが普通の彩なのである。いつも怒ってるいるように見せながらも、最も不安で心配で焦っているのは彩自身なのである。


『いえ、そう言う意味で言ったのではなくて、リリータさんが何処に居るのか予想がついていると言うことです』


『そう言うことでしたか…。それなら、とても安心ですね。麗鹿、リリータのことは任せましたよ』


『はい。任せて下さい』


そう言って、麗鹿は機体から降りて先程入ってきた入口の方へと向かって行く。

そんな麗鹿が向かったのは、先程まで全員でいた第二作戦会議室。


ガチャ、と。

麗鹿が扉を開ける音が響く。


「すぅ~~すぅ~~すぅ~~…」


扉を開けた先には椅子に座って気持ち良さそうな寝顔ですやすやと寝ているリリータがいる。


「はぁ…、やっぱりですか」


ため息を一つつきながら、ゆっくりと歩みを進める麗鹿。そんな麗鹿に気づく様子もなくリリータは気持ち良さそうに寝ている。

それでも、麗鹿はリリータを起こそうとリリータ本人の体を揺する。


「リリータさん。リリータさん。起きてください」


「うぅ…、あと10分……、」


「リリータさん。そんなこと言ってる場合じゃないですよ」


「じゃあ、あと5分……、」


リリータは時間を10分から5分変える発言をしてから、寝返りをして麗鹿とは逆の方を向く。

こうなってしまっては誰も手を出すことが出来ない。だから、麗鹿は静かにリリータが起きるのを待つ。そして、5分が経った。


「う~~ん!ライライ、おはよう!」


「リリータさん、おはようございます」


大きく背伸びをしながら麗鹿に朝の挨拶をしてくるリリータ。彼女の起きてすぐの顔はとても生き生きとしている。


「で、ライライ。なんで僕を起こしにきたの?まだ、10時じゃあないでしょ?」


「あの~、昨日のことって覚えてます?」


「うん!覚えてるよ。アレでしょ、アレ!あの皆で久し振りに集まったやつ」


先程までのリリータと違いとてもハッキリとした声で自信に満ち溢れていた。そんなリリータに麗鹿はちょっとだけ違和感を感じる。


「あの~リリータさん。先程『覚えてる』と言ってましたが、何処まで覚えてますか?」


「う~~んとねっ、皆が会議室に集まったくらいの時までかな!」


ほんの少し悩んだような仕草を見せながらも、すぐにハッキリとした答えを出すリリータ。

そんな彼女に麗鹿はため息を一つつく。


「ライライ、ため息を一つつく毎に幸せが一つ逃げちゃうよ!」


「はぁ……、」


「ほら!また幸せが一つ逃げた」


その後も麗鹿のため息は止まらずに出続ける。

そして、何かを決心したかのような表情を作り上げ、『はぁ…』以外の台詞を口にする。


「リリータさん。とりあえず、第零倉庫に行きましょうか」


そう言って、麗鹿をリリータを連れて皆の待つ第零倉庫へと向かう。そして、目的地に着いた麗鹿とリリータはそれぞれの機体に乗り込む。


『皆さん、お待たせをして申し訳ございませんでした。リリータさんが加わったことで全員揃いました。それでは、全員無事に帰ってくることを目標とし、出撃します!』


『『『『『『『はい!』』』』』』


七人の行きの揃った返事と共に、八機の機体が第零倉庫から外へと出撃していく。

第一支部までは片道4時間ほどの道のりを進む。勿論、今回の作戦について何も知らないリリータには、移動に費やされる長い時間を使い作戦が説明された。

そして、麗鹿たち一行が第一支部に着いたのは日が上りきった真昼時であった。


「いやいや、わざわざ本部よりお越しいただいてありがとうございます。こちらは感謝の気持ちで一杯です」


頭の上の辺りの髪の毛が薄い、小さめのお年寄り?にも見える東洋人の17歳。第一支部長 チェ・ライが機体から降りてくる麗鹿たちを出迎えてくれる。

チェの横には良く似た双子の黒人が立っている。二人は第一支部の副支部長、姉 ミレ・ミリアーと妹 リヤ・ミリアー。二人も17歳である。

その三人の正面に麗鹿を先頭に機体から降りてきたメンバーが並んでいく。


「いや気にするな。これは任務だ」


先程まで柔らかな口調が嘘だったかのような硬い口調へと変わる麗鹿。それに慣れている七人は気にせずに話を聞き続ける。


「そんなことを言わないで下さい。私たちからしてみれば、あなたの仕切る零部隊に入ることは夢なのですから」


「そうか。それで状況の方を教えてくれ」


「ちょっと、隊長!流石にそれは!」


麗鹿の後ろにいたユーミが首を突っ込んでくる。

それを制止させるように、チェが手を前に出す。

その行動にユーミの口は動きを止める。


「良いんですよ。今はそんなことより大切なことがありますから。それで現在の此方の状況は良くありません。先程入った情報によると、ブリタニア王国軍の動きが早くなり始めているそうです。このままだと、私たちが逃げるより早くに攻撃が開始されるかもしれません」


深刻そうな表情でチェは話を進める。その話を聞きながら麗鹿を抜いた他のメンバーの表情は少しずつ不安そうな表情へと変わっていく。

そんな状況でも表情を全く変えないで麗鹿は言う。


「分かった。で、俺たちの部屋は何処だ?」


「えっ、あっはい、此方です」


麗鹿のあっさりとした返事。そして、急な話題の変更に少し戸惑うチェとミレ、リヤの三人。しかし、これに慣れている他のメンバーは三人の反応に少し笑いを堪えていた。

そんな中チェは直ぐに気を取り直し、近くにいた黒人の少年に声をかけ、麗鹿たちを部屋の方へと案内するように指示をし、その場を後にした。


「えっ、え~と、零部隊の皆様を案内させて頂きます。リーヤ・トルベルです」


「やぁ~、リーヤくん、宜しくね」


「こ、此方こそ宜しくお願いします」


ユーの軽めの挨拶に、丁寧に返しをするリーヤ。その後、リーヤは部屋部屋への案内を始める。


「ところでリーヤくん、君には夢ってあるの?」


「ユー、初対面の人にいきなり何を聞いているのですか!少しは考えて行動しなさい!」


「彩殿の言うとおりである」


「ぼ、僕もそう思った」


「あっははははは、ユーって本当にバカだ」


「リリータ!お前は笑うな!」


彩、ドルト、レイガンの三人にユーは興味本意で聞いたことを注意されたあげく、あのリリータの笑い者にされ、落ち込むユー。そんなユーに気を使ったのかリーヤは質問に答える。


「自分の夢は零部隊に入って皆様と一緒に第一線で戦うことです。まぁ、自分には不可能だと思いますけど、これだけは絶対に諦められない夢です」


「へぇ~、お前いい夢もってんじゃねぇか」


リーヤの背後からユーが飛びかかる。

急なことに驚いたリーヤは手前に倒れこむ。


「な、何ですか!」


「お前が上に上がってきた時には、俺が鍛えてやるよ。だから、しっかり俺達の所まで来いよ!」


「はいっ!」


希望に満ち溢れた笑顔で元気にリーヤは返事を返す。そんなリーヤはとても若々しかった。


「ところで、お前っていくなんだ?」


「自分は今年で14になります」


そんなこんなしている間に目的の場所に着いた。

麗鹿たちは、一人一人が違う部屋へと案内された。

最後に麗鹿を部屋へと案内したチェは、今後のことの話し合いの時間と場所を麗鹿に伝えてから部屋を出ていった。それを確認した麗鹿はそのままの姿で付属のベッドへと飛び込んだ。


「はぁ~~~~。疲れた~~~~」


素の自分に戻った麗鹿は自分しか居ない部屋で独り言を言い始めた。


「もう何だよ!『ブリタニアの方の動きが早くなった』って、そんなの無しだろ!こんなこと前回・・は無かったじゃん!これじゃあ、またやり直しじゃんかよ!もう~本当に何だよ…、はぁ~」


コンコン、と。

麗鹿のいる部屋の扉がノックされた。

その音が耳に入るなり麗鹿は先程とは一変し、あの麗鹿へと変わった。


「誰だ?」


「ユーミ・アルファーです。入っていいですか?」


「あぁ」


ガチャ、と。

部屋の扉が開けられた。そして、そこにはユーミが居た。しかし、そこには居たのはユーミだけではなかった。


「よっ!麗鹿、会いに来てやったぞ」


バン!と。

調子に乗ってユーミの後ろから出て来たユーの頭を彩が叩く。もちろん、思いっきり。


「痛って~~~~!!」


「ユー、今はそんな修学旅行のような感じで来た訳ではないです。それをあなたは分かっているのですか!」


「分かってるよ!」


「そうですか。まぁ、ユーの場合『分かってるよ!』と少し強い口調で返してきた際は分かっていないのでしょうが」


「おいっ!流石にそんなことを勝手に決めつけんのは酷くねか!」


「はい、はい。無駄話はそこら辺にして、そろそろ本題に移っても良いですか、麗鹿?」


ユーが彩に向けて放った言葉など存在すらしなかったかのように、話題を変える彩。

そんな彩の言葉に首を縦に振る麗鹿。


「では、皆さん入って下さい」


彩が部屋の外へと声をかけると、その場に居なかった他の四人が部屋の中へと入って来る。一人、二人と人が入って来る度に人口密度が高くなっていく。

そして、麗鹿の部屋に八人全員が入ると、部屋の扉は閉められ、室内はとても狭く、少し息苦しい感じがある状態となった。

唯一の救いは麗鹿の部屋にだけ付いていた窓が開いていることだった。しかし、それも束の間、彩が麗鹿にとあるお願いをしてくる。


「麗鹿、今から話すことが外に漏れたら大変なことになるかも知れないので、そこの窓を閉めてはもらえませんか」


「へぇ?」


「だから、そこの窓を閉めてはもらえませんか?と言っているのです」


「(前回はこんなことなかったじゃあないかよ…、こんなんなら、もっと色々やるべきだった…、はぁ…)」


「麗鹿?どうしたのですか?」


「………………………………、」


彩の言葉に反応しなくなった麗鹿。

その時の麗鹿は今まで誰一人として見たことのないような麗鹿であった。その為、彩は麗鹿の隣にいて二番目に窓に近かったユーミにお願いをする。


「ユーミ副隊長、申し訳ないのですが窓の方を閉めては頂けないでしょうか?」


「えぇ、別に構いませんが…、」


チラッと麗鹿の方を見てみると、麗鹿がパクパクと小さく口を動かして、とても小さな声で何かを呟き続けている。そんな麗鹿を初めて見たユーミは、『今は窓を開けておいた方が良いのでは』と思い、窓を閉めるのを躊躇っていた。

そんなユーミに気をつかいユーが口を開く。


「副隊長様、そんなに気をつかわなくて大丈夫ですよ。麗鹿やつは昔っから、自分の望まないことを自分がやるように頼まれると、急に小さい声で何かを唱え始めて、一時的に制御不能に落ちいっちゃうんですよ。だから、心配せずに窓を閉めて下さい」


開いていた窓をゆっくりと閉めたユーミ。これで、五畳有るか無いかくらいの部屋はほぼ密閉された空間となった。その部屋の中で初陣をきったのは、この集まりの首謀者的な存在の彩であった。


「それでなのですが、実はこの支部の内部の…、」


ドーン!!と。

麗鹿達の下の方から鈍い爆発音が響いてきた。それと同時に、支部内の警報がなり始める。


「おい、おい!なんだよ、行きなり!俺たちここに来てからまだそなに時間経ってないぞ!」


「ユー!少し黙って居て下さい!麗鹿っ、これは一体何ですか!」


「すみません、僕も何が起こっているのかさっぱりです。とりあえず、皆部屋の外へ!」


「分かりました、麗鹿。皆さん、部屋のそ……、」


ドッン!!と。

部屋を出ようとした瞬間に先程よりもはっきりとした爆発音が鳴り響いてきた。その爆発のせいだろうか、支部全体が大きく揺れる。揺れに耐える為に皆近くにあった物にしがみついている。


「み、皆さん外へ!」


麗鹿の言葉に背中を押され、麗鹿を含む8人は外へと出ていく。


「らっ、麗鹿、くん。こ、これは一体!?」


「なっ!」


部屋を出た麗鹿達八人は絶句した。

先程までは、それなりの大きさのあった第一支部。しかし、今ては対面にもあった部屋の扉より先が荒れ地へと化していた。


「はっ、はや…く、逃げて…く…ださい…」


「おっ、お前どうしたんだ?」


元々は左右に扉の並んでいた廊下だった道を這いつくばりながら、血まみれのリーヤがやって来る。

そんなリーヤにユーは駆け寄っていく。そして、這いつくばっているリーヤのもとへ行き、リーヤを仰向けの状態で抱えあげる。


「は…やく。に…げて、く……ださ、い」


「だから、どうしたんだよ!おい!何があった!」


「ウラ…ぎ……られま、した」


「(裏切られた?誰にだ?今までにそんなことは……、無かったはずだが……いや、違う!今までずっと内部の者に殺られてきたのか!)」


リーヤの言葉を聞き、麗鹿はぶつぶつと誰にも聞こえないくらいの大きさの声で呟く。

それから直ぐに、大きな声で怒鳴り付けるように瀕死に近い状態のリーヤに問いかける。


「誰にだ!誰に裏切られた!」


「麗鹿!今はそんなことはどうでもいい!それよりもこいつをどうにか…、どうにかしないと……、」


残された力を振り絞り、リーヤはユーの口を手で塞ぐ。そして、言葉を口にする。


「じぶ…ぶぁっ!」


口から大量の血へどをはくリーヤ。それでも、リーヤは言葉を続ける。


「じぶん…は……み、なさん……に、ぶぁっ!あ、あえ…た…だけでも、し…あわせ…です…ぶぁっ!」


「もういい。もうそれ以上何も言うな、もう…何も……、」


ユーの口の所にあったリーヤの手は力を失い地面に落ちていた。リーヤ自身の生命力はほぼ尽きている状態だった。その為、リーヤは視界はほとんど何も捉えられていなかった。それでもリーヤは続ける。


「たい……ちょう…ぶぁっ!つぎのと…きは、じ…ぶんも………、れて…く…さい」


言葉は途切れ途切れになり、残された時間が余り無いことを物語っていた。


「あぁ、次の時は必ず入れてやる!だから、最後に裏切り者が誰かを教えてくれ!」


「麗鹿!!!!テメェーーーーー!!!!!」


ユーが涙を浮かべた瞳に怒りの感情を浮かべて麗鹿を睨み付ける。そんなことなど気にせずに麗鹿は、リーヤの答えだけを待っていた。

そんな中、リーヤが力を振り絞り言葉を発した。


「………ラ………んと、………ミ……ー……さ…す……………………………………………………」


「リーヤ、リーヤ、リーヤーーーーー!!!!!」


リーヤの息が止まった。

最後のリーヤは涙を流さず、笑っていた。故14歳。平均の半分すら生きることが出来ずに彼は死んでいった。


「麗鹿…………、リーヤはお前が!!!!」


「あぁ、殺した。だが、彼のお陰でこの地獄からもやっと解放されることが出来る」


「麗鹿、お前は何を言ってる。地獄?それはお前の中の話だろ?そんなこと言って、現実から逃げんのか!」


「逃げない。ただ、僕…いや、俺のいる現実とユー、お前のいる現実は全くの別物だと感じている。そう、お前の人生ゲームは一発で終わりなのかもしれない、でも俺のは違う。俺の人生ゲームに終わりはない。要するに逃げられない。だから、俺は今回・・のリーヤの死亡ゲームオーバーを無駄にはしない。それに、また約束事クエストを受けちまったからな」


「お前、さっきから何を言ってんだ?」


麗鹿の話を聞いていた者全てが?マークを頭上に出現させている。そんな困惑状態の中、終わりは突然にやって来る。


ドォッン!!と。

大きな爆発音と共に麗鹿達の視界が光りにつつまれ視界が奪われ、それに続いて聴覚も奪われた。痛覚も、嗅覚さえまともに機能していない。

全ての感覚が機能しなくなっていると彼らが理解をした時には彼らはもう死んでいた。


先程まで麗鹿達のいた場所は跡形もない更地へと化していた。

第一支部のあったさら地の上空に一機の真っ赤に染まった機体が浮遊していた。その機体の左肩には『No.33』という文字が刻まれている。


目的物ターゲットの消失を確認。これにて任務完了とする』


『了解。直ちに帰還せよ』


『了解』


何処かとの通信とおぼしきものを終えたNo.33は第一支部の跡地を後にした。


白い光だけが広がる空間に二人の若い男女の声が響き渡る。


「いや~、今回も良かった。やはり、らいかの頭の中には『生死』と言う言葉がないようだ」


「それはないと思われます。彼も立派な人間の一人。まぁ、此方の世界が彼方・・世界・・のようであれば、無きにしも非ず…ですが…、普通に考えればソレは無いと私は思いますが…、」


「まぁ、それが妥当な考えだね。でも、彼は違うと君は思わないかい?」


彼方・・世界・・のようにですか?」


「あぁ、そうだ。以外に誰がいる?」


「………………………………、」


女の方が急に黙る。なぜ黙ったのか、はっきりとは男にはわからない。なので、男は話を進める。


「まぁ、話はこのぐらいにするか」


「時間がきましたか?」


「あぁ、時間だ。そろそろいつもの……、いや、今回は特別なタイプの準備を始めろ!」


「特別…、と言いますと?」


はぁ、と男は一つため息を付く。そして、


「アレだ!アレ!あの記念すべき、1京回目の再開始スタートを彩るアレだよ!」


「アレをやるんですか?」


「あぁ、アレをやるだ!」


「…………、畏まりました」


やる気のない返事をした女は、気を入れ直してはっきりとした声で男の名を言う。


「偉大なる我らがゴッド・オブ・ゴッドよ」


そう言って、女は白い光の中へと消えていった。


「さぁ、まだまだ楽しませてくれ、轟 麗鹿」


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