8、「迷い家の黒猫」
side Kirisame Marisa
──妖怪の山(迷い家)
「はて。こんなところに家があったっけ?」
雪が吹き付ける中、しばらく飛び続けていると、見慣れない場所に家を見つけた。
「無かったと思うぜ。ここは人間の様な何かが棲みそうな所だな。猫とか、犬とか、狐とか」
「呼ばれて飛び出て......」
「......出る杭は打たれる、か?」
「どっちかと言うと、出る杭を打つ、の方が正しいと思うわよ。勿論、打つのは私達ね」
目の前に現れた猫みみに猫のしっぽを二本持つ、化け猫だった。
容姿は赤いベストに赤いスカート。首元にピンク色の蝶結びのリボンをつけて、頭には緑の帽子を被っている。
「で、何の用?」
「四本足の生き物に用などないぜ」
「迷い家にやってきたって事は、道に迷ったんでしょ〜?」
「道なんて無かったけどな」
「そうね。で、たしか迷い家ってここにあるものを持ち帰れば幸運になれるって......」
「なれるわよ」
マジかよ......それなら、やることは決まりだな。この妖怪には悪いが。
「霊夢、少し寄り道していいか?」
「えぇ、勿論いいわよ。じゃぁ、略奪開始ー」
「なんだって? ここは私達の里よ。人間は出てってくれる?」
「迷い家って二度と戻れないとか聞いたことあるぜ」
「まぁ、合ってるよ。じゃ、力尽くでも帰ってもらうしかないようね!」
「あぁ、力尽くでも奪うしかないな。霊夢、ここは任せてくれないか?」
「いいわよ。その間に、私は軽くて身近な日常品でも探しておくわ」
霊夢は先ほど見つけた家へと入っていった。
「あ、待てー!」
「おっと、お前の相手は私だぜ? さぁ、早めに倒されて、ここにあるものを渡してもらおうか!」
「くっ、化け猫の恐ろしさを味わってもらうわ!」
こうして、私は化け猫と弾幕ごっこをすることになる────
side Renata Scarlet
──妖怪の山近く(上空)
「オネー様、桜あった」
「はい、ありがとうございますね。......結構集めましたね。このまま集めていたら、異変の黒幕のところまで行けるのでしょうか......」
「これ以外の方法なんて霊夢や魔理沙を見つけるしかないし、こうするしかないと思うよ」
「それもそうですね」
アリスと会ってから、私達は桜の花びら......いや、春度を集めている。
森の上だというのに桜の花びらが飛んでいるし、やっぱりこれは普通の桜じゃないんだなぁ。......いや、森の上でも風次第では翔んでいるのかな? よく分からないけど。
「お姉様、どうしたの?」
「ん、いえ、何でもありませんよ。それよりも、先ほどから吹雪が凄いですけど、大丈夫ですか?」
「それくらい大丈夫よ。それほど強いとも思ってないしね」
「うん、私も」
んー、結構強いと思うんだけどなぁ。やっぱり、これ以上強い時に外で遊んだせいでもあるのかな?
あの時はお姉様に怒られたくらい酷かったし......。フランもルナも楽しそうだったし、元気だったけどね。
「......お姉様、ちょっと寒いわ」
「え? あ、ちょっ......」
フランがそう言って、私の腕にしがみついてきた。......うん、ちょっと暖かいね。
「あ、フランずるい。オネー様、私も!」
「え、二人だと......はぁー......」
ルナも同じように片方の腕にしがみついてきた。
流石に笑ってちょっと飛びにくいんだけどなぁ。まぁ、フランとルナが嬉しそうだからいいけど......。
「オネー様、暖かい」
「うん、そうだね。三人だともっと暖かいねー」
「飛びにくいですけどね......」
「暖かい方がいいでしょ?」
「そうですけど......吸血鬼ですし、人間よりはマシだと思いますけどね......」
「お姉様、いつも人間と比べるけどさ、霊夢とか魔理沙とかそんなに寒いと思ってないと思うよ?」
「いえ、あれは人間と言う名の別物ですよ、絶対に」
私の前世の時と今世の人間はちょっと違うからね。フランがおかしく思うのも仕方ないね。......ちょっとどころか、結構違うか。こっちは空飛んだり、弾幕撃ったりするし。
「ふーん......やっぱり、霊夢や魔理沙は普通とは違うのね。お姉様、私達は普通?」
「え? ......はい、普通ですよ。全く以て普通の、私の可愛い妹です」
「うん、そう言ってもらうだけでも嬉しいよ。ね、ルナ」
「うん、私もそう思う」
「......おや、雲の上から桜の花びらが落ちてきてますね」
吹雪で気づきにくいが、よく見ると雲の上から桜の花びらが落ちてきているのが見えた。
もしかして、冥界って雲の上にあるのかな? ......行ってみるしかないか。
「フラン、ルナ。雲の上に行こうと思いますので、フードをしっかりと被ってくださいね。多分、そうしないと日光に焼かれるので」
「うん、分かった。......ほんと、太陽って嫌い」
「そうだね。まぁ、太陽がないと、月が見えないし、ちょっとくらいは我慢してあげるけどね」
「フラン、上から目線過ぎません? 別にいいですけど......。ではまぁ、行きましょうか」
「うん、準備はいいよ。あ、手は離さないでね?」
「はいはい。分かってますよ」
こうして、私達は雲の上へと登って行くことにしたのであった────
side Kirisame Marisa
──妖怪の山(迷い家)
「よし、これくらいでいいわね。さ、行くわよ」
「あぁ、そうだな」
「うぅ。強い......」
あの後、スペルカードを使って化け猫を倒し、家から幾つか役に立ちそうな物を奪って......いや、借りてきた。
これから異変を解決しに行く、ということもあって借りたのは少なめだけど。
「さて......あら? ちょっと魔理沙、桜の花びら......雲の上から落ちてきてない?」
「はぁ? 何を言ってるんだ?」
「だから、雲の上から落ちてるのよ。桜の花びらがね」
桜の花びらが雲の上から? そんなの有り得るわけ......。いや、霊夢が言ってるんだし、本当のことか。
「......行ってみるか?」
「行くしかないわよ。異変を解決する為にもね」
「それもそうだな。じゃぁ、行くとするか」
雲の上でも桜が舞い散る......一体、どうなってるんだろう。私は異変が解決さえすればいいけど。
「......あら、別に何ともないわね。でも、桜の花びらはあるのね」
雲の上を抜けると、当然のごとく吹雪は止んでいて、特に変わった様子はなかった。が、桜の花びらが舞っているという、不思議な光景が広がっていた。
「やっぱり、お前の言った通りかもな。......行くか」
「えぇ、そうね。......あら、あれは何かしら?」
霊夢が指差した方向には、何か人型のものが三つほど浮かんでいた。
あれは......フードを被っているのか? それに、何か背中に生えている気がするな。
「......あぁ、めんどくさい奴の妹達だわ。こんなところでどうしたのかしら?」
「え? めんどくさい奴って誰だ? それに、妹達って......」
「貴方も知ってる奴よ。確か、れ......レプリカ?」
「あぁ、レミリアだな。と言うか、どうして間違えてるんだ? 毎日のように会うだろ?」
「めんどくさい奴の名前は憶えようとは思わないのよ」
「あぁ、うん、なるほどな......」
やっぱり、妖怪に対しては......いや、これはレミリアだからか?
「とりあえず話しかけるか」
「えぇ、そうね。......特に嫌な予感はしないし、黒幕に関係あるとは思わないわよ」
「そうか。霊夢がそう言うなら大丈夫そうだな」
こいつの勘は凄く当たるし、レミリアの妹......レナ達も悪い奴ではないから大丈夫だよな。
どれだけいい奴でも妖怪は妖怪だから、一応警戒はするけどな。
「おーい! レナー! フラーン! ルナー!」
「ん、あ、魔理沙ー!」
「え、ちょっ、うわっ!」
フランがかなり速いスピードで突進してきた。
太陽があるせいか、そこまで勢いはなかったけど......少し痛い。
「あ、フラン! すいません、魔理沙」
「いや、大丈夫だぜ」
「魔理沙......と霊夢だよね? ようやく会えたね」
「......フラン、そろそろ離れてあげて下さい」
「ん、あ、ごめんなさいね」
「フランは気に入った人を抱きしめる癖がありますからね......えぇ、癖ですよね......」
レナが羨ましそうに私を見ている。そんな顔で見られてもなぁ。
「お姉様、羨ましいの? 後でしてあげるから我慢してね?」
「......はい、それなら我慢しますね」
「......オネー様、私もしてあげようか?」
「はい、喜んで」
「......もういいかしら?」
「おっと。すいません。何ですか?」
......やっぱり、こいつらはちょっとズレてるんだろうな。色々と。
「貴方達はここで何をしてたの?」
「え? 異変解決しに来たのよ?」
「そう、異変を......って、えぇ!? ......まぁ、そう言うこともあるか」
「いやいや、意外と軽いな!?」
「だって、妖怪が異変を解決してはいけない、っていうルールは無かったでしょ? と言うか作らなかったはずよ......多分」
確かにそうか。......それに、悪い奴ではないし、異変を一緒に解決してくれるってなら、それはそれで嬉しいしな。
「と言うか、そこは多分なのかよ」
「さ、早く行きましょう。おそらくですが、咲夜が先に言ってるので......心配ですし」
「あいつも来てるのか? お前らって結構異変を積極的に解決する奴らなんだな。異変を起こす側だったのに」
「異変を起こしたのはレミリアお姉様だしね。私とお姉様は地下にずっと居たし」
「私も、その時はまだフランと一緒だったしね」
おっと......これは言わない方がよかったのか? ......いや、大丈夫そうだな。まぁ、出来るだけ言わないようにするか。
「......あぁ、そうだったな。さ、行こうぜ」
「うん、そうね。行こっか。春度を追いに.....ね」
こうして、私達は桜の花びらを集めながら、先へと進んでいった────




