蛙の夢
下らないし文章力もありませんがよろしければ最後までお付き合いくださいませ。
男は目が覚めるとカエルになっていました。
やけに視界が広いのです。360度くらい見えそうです。
舌を伸ばそうとするとビヨーンと伸びました。
声を出そうとするとブオーと音が鳴りました。
(なるほどウシガエルか・・・)
とカエルは思いました。違う、今はそんなことは重要じゃないと真面目に考えようとします。
しかし何も分からないのです。
カエルはなんだか不安になってきて家に帰ろうと思いました。家にカエル。
そもそもここがどこか分からないのです。闇雲に草むらをピョコピョコと跳ねていくと見知った風景が見えました。
どうやら家の近所らしいです。カエルは安心しました。
家に向かう途中、女子高生がこちらを汚いものを見るような目つきで見てきてご褒美ですとか思ったり、スカートの傍まで行ったのに上が見えないからパンツが見れなくてがっかりもしましたがなんとかドアの前まで着くことができました。
そこでカエルは気づきます。
(ドア、開けられないやん・・・)
さらにカエルは気づきます。
(あれ?俺ってホントにこの家住んでたっけ?)
(そもそもなんで最初にカエルになったとか思ったんだ?)
(自分がどんな人間だったかも思い出せないぞ?)
(もしかして元からカエルだったんじゃないか?)
だんだん自分が分からなくなってきたカエルは来た道を引き返しました。引きカエルとかはもう言わないのです。
そして昼近くまで道行く女性のスカートの中を覗く作業に徹しました。
しかし大した成果も得られず、徒労感と空腹感に囚われるばかりでした。
(なんかすごい疲れたなあ、カエルってこんなに辛かったっけ?)
カエルは諦め、草むらに戻って寝ようとしました。
その時です。
カエルから見て右側から二人の女子高生とおぼしき人たちがカエルの目に入りました。
(こいつぁラストチャンスってやつだぜ!)
カエルは目をギョロッギョロさせ、喉を激しく膨らませたり引っ込めたりします。やる気満々です。
今までの失敗からカエルは学んでいました。
彼女たちに姿を見せてしまうと気持ち悪がられ、ちょうど理想郷がみえない絶妙な距離感をとられてしまうことを。
かといって気づかれないようにスカートの下に潜り込んでもカエルに上は向けません。
目の前の理想郷に手が届かない状況、これをカエルは太陽に近づきすぎた英雄状態と名付けました。
つまりこれまでの失敗を踏まえると、カエルの取るべき作戦は彼女たちに気づかれないように正面から約1.2メートルの距離で横向きに待つこと。これを成し遂げたとき、理想郷へと達することができるのです。
カエルは見つかりにくく、なおかつ理想郷と自分の視界の間に障害がないベストポジションを探し出すと、体を彼女たちに大して横向きにしてスタンバイ完了です。
(さあ来い!)
(俺はチャンスをものにできるカエルだ!)
(だが、焦るな。ここで見つかってはすべてが水の泡だ。)
(俺はできるカエル!俺はできるカエル!)
カエルは理想郷を前に、冷静さを必死に保ちながらも自分を鼓舞しました。
「あ!カエルだ!」
可愛らしい声がカエルの耳に届きます。そしてそれは作戦の失敗を意味するものでした。
(しくじった!)
(理想郷への視界を優先しすぎてあまりにも丸見えだった!)
(また太陽に近づきすぎた英雄状態かよ・・・)
カエルは落胆の色を隠しきれません。萎え萎えです。こんなんじゃその長い舌も3センチしか伸びません。
「見て見て!可愛い~!」
「え~!どこどこ!」
予想外の事態が起こりました。最近世間ではキモかわいいなるものが流行っているとは聞きますが時代はこんなにも進んでいたのかとカエルは素直に驚きました。
幸運は続きます。
なんと、女子高生二人は、カエルの正面に、しゃがんだのです!!!
突然ではありますがここで豆知識の紹介です。
カエルの目は動くものを見ることに特化しているため、止まっているものはみえないのです。
つまりこの時カエルには自分のわずか鼻先数十センチの理想郷に到達できずにいたのです。
この時ほどカエルは自分の動くものしか見えないその目を恨めしいと思ったことはありませんでした。
しかしここであきらめるほどカエルは根性なしではありません。
(まだだ!)
(まだやれる!俺はこんなところであきらめるようなカエルじゃねえ!)
(何か!何か彼女たちを動かす方法はないか!)
(・・・)
(・・・そうだ!彼女たちに向かって跳ねればきっと驚いて彼女たちは動くはず!)
(さらに理想郷との距離も縮まる!)
(俺は天才か!天才カエルなのか!)
思いついたカエルの足は誰にも止められません。カエルは思いっきり体を沈ませると、全力で彼女たちへ、理想郷へと、大きくジャンプしました。
カエルの目論見通り彼女たちは驚き、後ろへ動き出します。それより遥に速いスピードで理想郷へ迫るカエル。
少しずつカエルの視界は鮮明になっていきます。
ぼんやりと血色のいい肌色とその間にある輝きがあらわになっていきます。
カエルは思いました。
(カエルに生まれてよかったああああああ!!!!)
・・・・・
カエルは目覚めると人間の男になっていました。
「死にたい」
男はぼそりと布団のなかで呟きました。
読んでいただいてありがとうございます。




