終わりの始まり
新年一発目です。
思いつきにアドリブが入りました(意味不明)
「もしも人類が滅ぶとしたら、最後に何したい?」
いつだったか……こんな質問されたのは。
俺は何て答えたんだっけ? ……思い出せないな。
二階建ての家のベランダで、星が散らばる夜空を仰ぎながら、俺は最後にしたい事を考えていた。だが、何も出てこない。何もしたいと思わない。
美味しいものを食べたいとか、好きな人と一緒にいたいとか、そんな事をしたいとはいくら考えても思えないのだ。
どうせ人類が滅ぶのなら、それこそ何でも出来そうなものなのに。例えば、強盗だってし放題だし、人を殺したって裁かれない、どんなに変な事を言ったり、変な行動しても大丈夫。滅ぶんだから。
でも俺は、何かをしたいとは思わない。
俺って空っぽの人間なんだなと今更ながら思う。何もしたくない、欲がない。俺は一体……何の為に生まれてきたんだ?
……分からない。
それが分かったのは、つい昨日。
細かい事は忘れたが、何でも、大昔に恐竜を絶滅させた時の数百倍の大きさである隕石が地球に落ちるとの事。
地球直撃の可能性は九十九パーセント。現代科学の最先端が出した予想だ。これが覆る事はないだろう。
規模がデカ過ぎて思考が単調になるが、その時俺が思ったのはヤベェと終わっただ。
どんなにバカでも、助からない事ぐらい分かる。恐竜の次は人類の番だな……絶滅は。
早ければ今日の夜明けぐらいに衝突だっけ?
俺は明るくなって来た空を見上げる。あれが今から当たるんだなぁ……。視線の先には、赤く輝く大きな球。
我ながら呑気だな、俺。
もうすぐ夜明け。
……つまらないな。もう終わりかよ、俺の人生。
最後に何かしたいとは思う。でも、したい事が見つからない。
「――そうだ! あの隕石を止めて見ようかな! こう、両手で持ち上げる感じで!」
……何言ってんだろ俺。ついにおかしくなっちゃったか。にしても、眠いな。今日寝てないからか。
……寝るか。
俺は睡眠したいが為にベランダを出て、そのまま部屋のベッドにダイブした。すると、あっという間に眠気が全身へ行き渡る。
何をする訳でもなく、ただいつものように寝て、そのまま死ぬ。これもまた一つの選択肢だろう。別に無理してまで何かしたい訳じゃない。
それに、この方が俺らしい。いつもと同じ日常の中で最期を迎える。良いじゃないか。
「もしも人類が滅ぶとしたら、最後に何したい?」
夢の中で、俺は一人の少女に質問された。確か前にもこんな質問されたな。その時俺は何て答えたんだっけ?
「ねえ、聞いてる? 何したい?」
少女が頬を膨らませながら回答を急かす。
そうだな、もしも出来るのなら、
「お前に会いたい……かな」
「残念だけど、それは無理だね。って言うかそれは願いでしょ?」
「……そうだな」
俺の最愛の人は、もういない。もう二度と会えないのだ。ただし、生きてる内は……だが。
「俺さ、そっちに行ったら真っ先にお前探しに行くからな?」
「ふふ、頑張ってね!」
「あぁ! じゃ、また後で」
「うん! 待ってるよ、絶対に見つけてね?」
「勿論だ。絶対に会いに行く」
俺の言葉を聞いた少女は、満面の笑みで消えていった。
直後、光が俺を包み込む。優しく、暖かい光が俺を満たす。
終わりはいつ来るか分からない。でも、終わりは必ずあるし、必ず来る。そう言うもんだ。
始まりはいつ起こるか分からない。だが、終わりの次は必ず始まりがある。
俺の物語は終わっていない。むしろ、今から始まるのだ。
お疲れ様でした。