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スーパーヒロイン学園  作者: 仰木日向
スーパーヒロイン学園
7/22

第3話『超人ハルカ①』 - The Incredible Halka

※当作品は発行元である株式会社ポニーキャニオン(ぽにきゃんBOOKS)に許諾のもと、掲載を行っております。

 バスターポリス中枢区、スクエアガーデン。庁舎のあるバスターポリス中心地のここでは、経済や政治を動かす機関が集まっている。必然、この街で起こる犯罪は、学生区とは危険度がまるで違う。


 逃げる一人に追う三人、そして、それを見守るもう一つの影…。


『緊急無線!脱獄囚トリガーアニーがスクエアガーデン周辺を逃走中!ギフト犯罪者です!』

「こちらスリーエレメンツ、フレイムテイルです。管轄外ですが、緊急応援を行います!」

「ねぇテイル、トリガーアニーってたしか銃乱射しまくる頭おかしい奴だよね。大丈夫かな」

「バービー、大丈夫じゃないから私たちがいくんですわ」

「そういうことよ。燃えてきたわね、いくわよみんな!」


 背の高いビジネスビルディングが立ち並ぶスクエアガーデン。もちろんこの地区には、中枢を守るヒーロー達がいる。しかし、状況として最適と判断すれば、一番近くにいた公認ヒーローが現場に入り対応するということもある。


 迷路のようなビルの森をとんでもない速度で走るオープンカーの逃走車。脱獄囚"二丁拳銃のアニー"はただ逃げるだけでなく、通過したすべての信号機を撃ち抜き、次々と交通を麻痺させていった。


「あれどうやってんの!?フルアクセルで走りながら一発も外してないよ!?」

「…トリガーアニーのギフトは『百発百中【ウィリアム・テル】』ですわ。弾の届く距離ならどんな遠距離でも絶対に命中させる、犯罪者に持たせたら最悪のギフトですわね」

「使い方一つよ。どんなギフトも、悪いことに使えば危険なギフトになるわ」

「…バービー、先回りして逃げ道を塞いで!」

「オッケー!」


 フレイムテイルとクリスタルイヴをおいて、サンダーバービーは電光石火となりトリガーアニーを追う!超高速移動によるバービーの追跡は瞬く間にトリガーアニーに追いつき、車の真横を並走した!


「逃がさないよーっ!」

「ん?なんだぁ?ヒャハアハハ!」


 いかにも人相の悪い、ネジのとんだトリガーアニー。銃犯罪者によく見られるトリガーハッピーの傾向があるアニーは、撃てば撃つほど狂気が増している。このまま人通りの多い場所に出たら確実に被害者がでてしまう…!


「必殺!バービー画鋲!」


 サンダーバービーはアニーの車を追い抜かし、アニーの行く手の先に車をパンクさせる大きさと強度のある特性の撒きびしを撒いた!

 前方完全不注意のアニーは、思惑通りバービー画鋲を踏み、車を大きくスピンさせて柱に激突、しかし、訓練された身のこなしで車から飛び出して道路に着地した!


「テイル!イヴ!鉄砲女を止めたよ!」

「さすがですわね、いま追いつきますわ!」


 凍らせた地面の上をスケート靴で疾走するクリスタルイヴ!

 あと、フレイムテイルは後ろの方で一生懸命走っている!


「はぁ…はぁ…っ…イ、イヴ、アニーを凍らせて確保して!」

「ええ!もちろんですわ!」


 スクエアガーデンのビル街裏通り、サンダーバービーとクリスタルイヴに挟まれたトリガーアニーは、なおも余裕のある顔で二人のヒロインを見て不気味に笑う。


「…なぁんだ、『グローリーデイズ』 のヒーローかと思ったら、お子様ヒロインチームのスリーなんとかじゃねぇか。あたしも舐められたもんだね」


 不敵な笑みを見せるトリガーアニー。単なる犯罪者とは明らかに違う、ギフト犯罪者特有の危険な気配が漂う。


「観念してもらうよ!トリガーアニー!」

「…お嬢ちゃん達、早く家に帰って宿題しなきゃダメだろ。先生に怒られちゃうぜ」

「高校生だと思って甘く見たら、痛い目に遭いますわよ!」


 クリスタルイヴは、すべての温度を奪う手、絶対零度【コールドタッチ】を構え、アニーと睨み合う。


「…なぁ、氷のお嬢ちゃんと雷のお嬢ちゃん、あんたたち、とっくにあたしの射程距離に入ってんだけど、生きて帰れると思ってんの?」

「! あぶない!イヴ!」

「!?」


 西部劇のような目にも留まらぬ早さで二丁拳銃を抜いたアニーは、イヴとバービーを同時に狙撃した!


「っ…!あぶないところですわ…!」


 氷の壁を作って間一髪弾を止めたイヴ。バービーは瞬足で攻撃をかわし、どこかに消えた。


「っははは!すごいなぁ氷のお嬢ちゃん!何発まで耐えられるのかな!?」


 アニーはイヴに標的を絞り、何十発という弾を乱れ撃った。どんどん削れていくイヴの氷壁は、もうもちそうにない…!


「イヴ!」

「そこかぁ!」


 バービーの声が聞こえた方に、目も向けずに銃を乱れ撃つアニー。曲芸の域にあるとんでもない速度の二丁拳銃は、防御するイヴを追いつめ、逃げるバービーを狙い続けた。


「イヴ!がんばって!」

「……だめ、もう氷が…!」


 銃弾に削られた氷壁に大きな亀裂が走り、ついに割れた。その瞬間…!


「火炎放射【ファイヤーストーム】!」

「!?」


 身をひるがえして火炎放射をよけたアニー。

 体制を整えて見上げたその前に佇むのは、燃え盛るポニーテイル!

 そう!スリーエレメンツのリーダー、炎のスーパーヒロイン、フレイムテイル!


「火遊びが過ぎたようね。許さないわよ、トリガーアニー!」

「…そういや3人いたんだっけね、スリーエレメンツちゃん」


「バービー!イヴをお願い!」

「させるかよぉ!」

「それはこっちのセリフよ!炎の牢獄【ファイヤードーム】!」

「…なっ!」


 フレイムテイルの放った炎の牢獄が、トリガーアニーを囲む!

 視界を遮られたアニーは、標的の狙いようがなくなった!


「…派手な技使うじゃねぇか。あんたサーカスに出たら人気者になれるぜ」

「じゃああなたは火の輪くぐりのライオンね。おとなしく言うことを聞いてもらおうかしら」


 炎の牢獄【ファイヤードーム】の中に、火だるまになって姿を現すフレイムテイル。

 燃え盛るポニーテイルはいつも以上に熱く猛る!


「なるほどね、そりゃあいいや。ところでお嬢ちゃん、あたしの売りは二丁拳銃なんだが、ピストルの弾を飛ばすために必要なものはなんだと思う?」

「……どういうこと?」

「こういうことだよ!」


 アニーは、カウボーイジャケットの内側に大量に仕込んでいる火薬ストッ

クを根こそぎ引きちぎり、それをフレイムテイルの方に投げた!


「!」


 炎に引火し、フレイムテイルの前で大爆発する火薬箱!

 間一髪爆発に巻き込まれることを逃れたフレイムテイルは、地面に倒れている!


「…ゴホッ…なんて奴なの…!」

「残念だったな炎のお嬢ちゃん、あの世で会おうぜ…!」

 フレイムテイルと十分距離をとった射程から、トリガーアニーが銃口を向ける…!

「…!」

「テイル!」

「だめ!逃げて!」

「友達にさよならしな!ヒャアハハハハ!」


 パンッ!


 トリガーアニーの引き金は、ためらいもなく引かれた。


「…っ……!」

「あ、あれ……?」


 目を伏せていたフレイムテイルの前にそびえ立つ、銃弾を素手で受け止めた謎の大きな影。


「あ、あなたは…!」


 そこに現れたのは、緑色の肉体美!はち切れんばかりの筋肉に包まれた巨体…!

 謎の覆面ヒーロー、マイティマッスル!


「マイティマッスル様…!」


 逆光に映えるマイティマッスルの姿に、フレイムテイルはすっかり見とれている。

 一切言葉を発することなくただ静かに巨体を振るわせるマイティマッスルは、ゆっくりとトリガーアニーに向き直りつつ、みなぎる筋肉をさらにビルドアップし、鋼のような胸板を見せつけた!


「マイティマッスル…!非公認【もぐり】のヒーローか!」


 マイティマッスルは、覆面の下から静かにアニーを睨みつけ、歩み寄る。


「くるんじゃねぇ!」


 アニーは銃をとり、マイティマッスルを撃つ!しかしその銃弾はすべてマイティマッスルの胸板に食い込み、そして弾かれて地面に落ちていった。


「……なんだてめぇ、化け物かよ!」


 マイティマッスルは、アニーに向かって駆け出す…!


「ちょっ…!ちょっと待ておい!うわぁあああ!」


《どうするトリガーアニー!CMの後はマイティマッスルの謎に迫る!》

《ここまでの放送は、ビリーズ事務所の提供でお送りしました》


「わぁ~!マイティマッスルだぁ!かっこいい~!」

「ピンチに登場するあたり、王道のヒーローって感じよね」

「すごい筋肉だなぁ。動きづらそうだ」


 ヒロインハウスのリビングでリンちゃんの作ったチーズケーキを食べながら過ごすお昼。

 チーズケーキには亜衣ちゃんがレーザーで焼き付けた絵(たぶんこれはイカかしら?)が描いてある。さっき悠美ちゃんが「目のあるヒトデ」って言って亜衣ちゃんを怒らせてたし、きっとこれはイカですわよね。


 ゆったりと過ごしながらヒーローの特集番組を見る私たち。

 テレビには、{謎の↑強調点}覆面ヒーローが映っている。


「…リンちゃん、このケーキとってもおいしいですわね。今度作り方教えてもらえるかしら」

「あ、はい♪簡単ですよ♪」

「亜衣ちゃんの絵も、とっても素敵よ♪」

「あ、ありがとうございます。ネコって描くの難しいですね…」


 …ネコでしたのね。危ないところでしたわ。


「ううん、とっても上手♪」

「悠美、あんたそういえばマイティマッスルとは会ったことあるの?」

「ん~、一回だけチラッと見たことはあるけど、それくらいだなぁ。出てきてもあっという間に事件解決しちゃうから、目撃者も少ないんだ。映像に映ってるなんて珍しいね」

「え!?悠美ちゃん!マイティマッスルに会ったことあるの!?すっごーい!」


 …………。


「…リンちゃんはこのヒーローが好きなんですの?」


 私は、紅茶を飲みながら聞いてみる。


「はい♪マイティマッスル、かっこいいんですよ♪ハルカさんもきっと好きになりますよ!」

「…そうですわね。うふふ♪今度また教えてもらえるかしら」

「ハルカさん、なんでもリンに話合わせなくて大丈夫ですよ」

「あら、そんなことありませんわ。とってもおもしろそうですもの」

「ねぇねぇ悠美ちゃん、今度マイティマッスルに会ったら、その…サインとかって頼めたりしないかな…?あ、でもこういうのって迷惑だよね…」

「ん?ああ、会えるかどうかはわからないけど、じゃあ覚えとくよ」

「やったぁ~!ありがとう悠美ちゃん♪」


《キマッたぁー!マイティマッスルの決め技、マイティジャイアントスイングが炸裂!》

《事件を解決したマイティマッスルは、おそるべき跳躍力で現場から飛び去っていった。トリガーアニーの身柄は…》


「…ところで、マイティマッスルって何者なんだろうな」

「悠美はなにか心当たりがあるんじゃないの?」

「ううん、全然。あれはどうみてもA級だけど、A級の男性ヒーローって時点でかなり絞られるからなぁ。非公認じゃヒーロー庁のデータベースにも載ってないし、誰かが変装してやってるとしても、怪力系であそこまで超強烈なのはいないしなぁ」

「見た目も強烈だしね。あれだけ目立つ体で変装ってのは無理なんじゃないかしら」

「覆面してるのはなんでなんだろうね~」

「きっと顔に自信がないんだな」

「…いや、なにか事情があるんでしょ。昔のヒーローはみんなマスクをしてたみたいよ」

「じゃああれだ、ヒーローオタクとか?古いヒーローのスタイルにこだわってるとか」

「絶対喋らないのもなんでなんだろうね~」

「なんていうか、ちょっとキザだよな」

「あら、いいじゃない。私は好きよ。おしゃべりな男より断然渋いわ」

「ハルカはどう思う?」

「え?」


 ……なんて答えようかしら……。


「…そうですわね、きっと恥ずかしがり屋さんなんじゃないかしら♪」

「なるほど~!」


 納得してるのはリンちゃん。ほかの二人は私のコメントに苦笑いしてる。そんなみんなを横目に、ケーキをもう一口。


*~*~*~*~*~*~*


 お昼過ぎ、リンちゃんはゴールデンウィーク明けの初登校に備えて買い物、亜衣ちゃんは自室でお勉強、悠美ちゃんは『夕飯までにもどるよ ゆーみ』っていう、紙からはみ出しそうなダイナミックな字の書き置きをしてどこかに行っているようだった。


 私は、みんなが見ていないことを十分に用心しながら、洗面所で上着を脱ぐ。


「…痛っ…た…。やっぱりアザになってますわね…」


 胸と鎖骨の間にある複数の小さな丸いアザ。ピストルの弾は止められなくはないけど、ギフトを解くとやっぱり少し痛む。


「今度からは銃弾は全部手づかみで防ぐようにしましょ…」


 謎の覆面ヒーロー、マイティマッスル。それが私のもう一つの姿。


 本当はこんなことやりたくないのだけれど、困っている人がいると見過ごすわけにもいかず、居合わせた場合だけに限って私は政府非公認でヒーロー活動をしている。


「…はぁ…なんで私、こんなギフトなのかしら…」


 私がこのギフトに生まれたのは、遺伝が半分、運が半分。建築現場で働いていたお父様が元々もっていた能力が、怪力系上級ギフト『親父大黒柱【パワーリフト】』だった。普通の社員だったお父様は若い頃からその能力で活躍して、いまでは大手不動産建築管理会社「ヒーローズマンション」を一代で築いたやり手の社長だったりする。そして、その一人娘が私。


 お父様のギフトは重いものを持ち上げる時に発揮されるものだったけど、私は、どういうわけかそれよりもさらに強力なギフト『男前十万馬力【マッスルベルト】』が発現してしまった。しかも、A級素質のA級生まれ、鍛えるまでもなく最高レベルの能力者として。


 怪力系の中でも群を抜いて最強といわれているこのギフトは、ヒーロー史的にも前例は一人しかいないらしく、その超人は緑色の筋肉の怪物として有名だった。


 …もちろん、私も、ギフトを使うと肌が緑色に変色する。

 それだけじゃない。普通にしてる時は華奢な体だけど、ギフトを使うと体中の筋肉がメキメキと隆起して、骨格も変わって、身長すらも変わってしまう。見た目だけでいうと、どこからどうみても男性、しかもボディビルダーを10人合体させたみたいな凄まじいマッチョマンになってしまう。


「……はぁ……」


 私はもう、それが嫌で嫌で、もう本当にたまらなく嫌で、誰にも話してない。みんなには、私のギフトはE級の『子守唄【ララバイ】』だと言っているけど、本当はそんなギフトもっていない。でも、E級だと言ってしまえばほとんど効かない能力ということで、実際はもっていなくてもそれ以上追求されることはなかった。


 慎ましくおしとやかに過ごしたいのに、どうしてもギフトがそれを許さない。それこそ、固いジャムのフタを開けようとするだけでジャムの瓶を握力で粉砕してしまったり、そういうことはしょっちゅうある。お父様に一軒家ではなくシェアハウスに暮らしながらの通学をお願いしたのも、共同生活の中でしっかり能力を使わない癖を身につけるためだった。実際、ここでみんなと暮らすようになってからは、屋敷にいた時よりかなり慎重に生活できていると思う。


「強いギフトを欲しがってる人なんて沢山いるのに、不公平な話ですわ…」


*~*~*~*~*~*~*


「ふふ、気持ちいいお天気」


 お買い物帰り、近くの自動販売機で買ったミルクティーを飲みながら公園のベンチでのんびり日向ぼっこをしている私。お買い物の時に気をつけるのは、持てるからって何十キロも買い物してはいけないということ。一回の買い物は手提げ袋に入る量までと決めている。


 カレッジタウンには公園も多くて、ジョギングをしてる人や犬の散歩をしている人、学生、子供を連れたお母さんなんかが行き交っている。そんな景色をゆったりと眺めて過ごすのが、私の好きな時間だった。こういう風に普通に、この景色の中の一人の普通の女の子として毎日を送れたら、どんなに素敵だろうと思う。


「…ん?」


 ぼんやりと空を眺めている私の手に、なにかビー玉くらいのサイズの金属の玉があった。


「…………」


 どうやら、考え事をしながら無意識のうちに空き缶をコネコネしていたらしい私は、空き缶を高密度の小さな丸い玉にしてしまったみたい。それを見て、思わずため息が出てしまう。


「…普通の女の子…にはほど遠いですわ……」


「おい、なんだあれ、火事じゃないか?」

「うわ、ホントだ。近いなぁ」


 …!


「火事ですって…?」


 目をやると、その先には一筋の黒煙。場所はここからそれほど遠くない。…様子を見に行こうかしら。消防はどれくらいでくるのかしらね。現場に行った方がいいですわよね。でも…。行ったら結局またあの姿にならなきゃいけないだろうし…。


「…考えてる場合じゃありませんわね。行かなきゃ」


 火災が起きているのは、ウェストサイド地区とカレッジタウンのちょうど間くらいの場所に位置するビジネスホテルだった。火事の原因はタバコの不始末かしら。ホテルの場合はベッドや燃え草が多いから、火事が大きくなるとそう簡単には消火できなくなる。早く手を打たないと…でも、どうしよう…。やっぱり行くしかないかしら…。


「…おお!ヒロインだ!よかった!」


 え!?誰のこと!?私!?


「頼んだぞー!」


 あ、なんだ、私じゃないのね。

 集まった人たちの視線は私ではなく、こちら向かってきてるヒロインの誰かに向いていた。

 よかった!さすがヒーローの街バスターポリスですわね!


 だったら邪魔をしても悪いと思い、私は胸を撫で下ろしつつ様子を見ることにした。万が一助けが必要なら、そのとき手伝えばいいわよね。


 …そこ現れたのは悠美ちゃん、レディダイナマイト! よかった。あの子が対応しているなら大丈夫ですわ。


 …え!?


「みんなどいてー!いっくぞぉおおおおおお!」


 悠美ちゃんは、ホテルの火災を消すために近所の学校から{プールを根こそぎ}持ってきた!

 ええええ!?悠美ちゃんそれどうする気ですの!?


「どーーーん!」


 ええええええええ!?


 ざっばーーーーーんとプールごと水をぶっかけた悠美ちゃん。ビルの火災は消えたっていうか、そもそもビル自体がプールのコンクリートによって深刻な崩壊をしたので、必然的に火事は鎮静した。 


「 一 件 落 着 ! 」


 やりきった顔でみんなを振り返る悠美ちゃん。こ、これはひどいですわ…!家具を壊したり、亜衣ちゃんから聞く噂とかでなんとなく知ってはいたけど、まさかこれほどだったなんて…。


「またなんかあったら呼んでよ!じゃあね~!」


 仕事が終わるとパパッと立ち去る悠美ちゃん。でも、これはこれでケガ人も出てないし、ある意味ではスピード解決だったのかしら。悠美ちゃんなりの判断として一番いい方法を選んだのかもしれませんわね。


 ズズン…ズズ…


 ん?なにかしらこの音。地鳴り?いや、そうじゃないありませんわね。

 この音は、もしかしてあのビルから聞こえてきてる…!?


「うわぁー!崩れるぞ!みんな離れろ!」


 ええ!?悠美ちゃん、あとはほったらかしなんですの!?

 時間差をあけて倒壊するホテル。その近くには、野次馬にまぎれて家族連れの姿もあった。


「そこにいては危ないですわ!建物の残骸が飛んでくる!早く離れて!」


 …だめですわ、建物が崩れる音で声が届かない…!小さな男の子がぼーっとビルを見てる。早く離れて!


「こうしちゃいられませんわ…!」


 私は、男前十万馬力【マッスルベルト】の一部だけを解放して、足の筋肉を瞬間的に増強させる。

 ロングスカートをはいていてよかったですわ。これなら、とりあえず筋肉質になった足は人目につかない!

 超人的な跳躍力を見せた私は、時速100キロくらいの速度で男の子のところまで猛ダッシュした。その瞬間、男の子の上に建物の柱が倒れてくる…!


「あぶない!」


 とっさにギフトを解放した私は、右肩から先だけ男前十万馬力【マッスルベルト】を発揮して倒れてくる柱を受け止めた。お洋服の腕の部分を引き裂いてあらわになった隆々とした緑色の右腕。男の子の両親は、泣いている男の子をつれて安全な場所に走っていく。そして、どんどん倒壊していくホテル。私も、他に助けが必要な人がいないかを確認して、ビルから離れた。


当作品は毎日朝7時更新です!

全国書店にて第1巻好評発売中!

また、スペシャルボイスドラマもニコニコ動画にて無料公開中です!

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熊瀬川リン:三森すずこ

生田目亜依:内田真礼

超野悠美:諏訪彩花

剛力ハルカ:早見沙織

和迩黒子:竹達彩奈

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