INTERMISSION-II - talking about Super-Suit -
※当作品は発行元である株式会社ポニーキャニオン(ぽにきゃんBOOKS)に許諾のもと、掲載を行っております。
「みんな思ってることだとは思うんだけど」
「うん」
「昔のスーパースーツってちょっとアレだよな」
ヒロインハウスで過ごす夕方。
なんでもない会話をする私と悠美とリン。
スーパースーツっていうのは、ようするにヒーローが着てるあの服のこと。そう簡単には破れない丈夫な素材メガポリエステルで出来てるスーツで、ヒーローによっては自分の体質にあった特注品を使ったりしてる。けど悠美の言う通り、最近の新しいデザインのものはさておいて、いまだにちょっと古いっていうかダサいデザインのヒーロースーツも多い。誰が始めたのか知らないけど、なぜかヒーローって昔からタイツが主流なのよね。一体どういうセンスなのかしら。
「たしかに、昔のスーパースーツってアレよね」
「かっこいいよね~♪」
「……」
「………?」
「お、こんなにわかりやすい流れを逆走するとは、さすが無邪気なラブリーベアのリンちゃんだな」
「えぇ!? どういうこと?」
「いや、あのデザインはダサいよなって話だよ」
「そ、そうだね、かっこよくないよね…」
恥ずかしそうにうつむきつつ、クマ耳もいっしょにしょんぼりさせるリン。別に、リンがかっこいいと思うならそれはそれでいいと思うんだけど。
「…最近のはともかく、少し古いのになるとたしかにちょっとキツいわよね。たまに見かけるけど」
「いまだに全身タイツとか、ダイビングでもするのかよって感じだよな」
「リンは学校のやつ、どんなスーパースーツ注文したんだ?」
ちなみに、スーパースーツには2種類あって、一つは課外活動とかに使う個人用。もう一つは学校の授業で使う学校用だったりする。例えるなら、スクール水着と海水浴用の水着みたいな感じかな。学校用のスーパースーツは機能だけ優れてて、見た目は地味なのが多い。
「…私は普通のやつがいいって言ったんだけど、お父さんが『それじゃお前の個性が活かされない!』って言って、すごいピンク色のフリフリのやつを買ってきちゃって…」
「うわぁ」
あ…私もそれ買おうとしたんだけど。
私はお母さんに止められたのよね。
…って話は言わないでおこう。
悠美がうわぁって言ってるし。
「…でね、そしたらお母さんとお父さんが喧嘩しちゃって『こんなの着てたらイジメられるから、もっと普通の買ってきて』って」
……ピンクって、イジメられるかしら…?
普通のにしてよかった。
「なるほど、リンのお父さんはきっと、奇抜な色のランドセルを買ってくるタイプなんだろうな」
「うん。うちのお父さんちょっとそういうところあるんだ…」
「そういう親って子供の個性がどうのこうのって言うけど、ようするにそれって好みの押しつけだよな」
「…だから、最終的に買ったのは一番普通の学生用スーパースーツなんだ。お父さんは『ピンク色のやつの方がいい!』ってずっと言ってるんだけど…。一人だけそんなのってやっぱり変だよね」
「そうよ、ピンクのフリフリなんて、小学生じゃあるまいし」
そしらぬ顔で多勢のフリをする私。
ふぅ、危ないところだったわ。
「亜依ちゃんはどんなのにしたの?」
「私は普通のよ。紺と白のやつ」
全然気に入ってないんだけどね。
「悠美ちゃんは?」
「ああ、私はメーカーから送られてくるんだ。『新作スクールスーツの宣伝になるから着てくれ』って」
「すごいねぇ~!」
「さすがバスターポリス公認ティーンズヒロインね」
「あ、そうだ、メーカーから送られてきた今年のカタログがあるんだよ」
「へぇー!見せて見せて!」
悠美がとりだした、個人用スーパースーツのカタログ。トラディショナル系の全身タイツ型から、ちょっと新しいメカニック系、あとは、デザイン重視のドレスっぽいの。肉弾戦向きか能力戦向きかで結構スーツの分類も別れたりする。最近は、若い子向けの可愛いのとかカッコイイのも増えてるみたい。
「へぇ、結構いいのあるじゃない」
「亜依はどんなのがいいんだ?」
「私は、そうね…」
ティーン向けガールズヒーロー特集のページに、私はいいのを見つける。
肩に羽みたいなフワフワがあしらってある、カラーバリエーションの多いミニドレス。スカートのフリル、統一感のある色合いのスパッツ。これ可愛いなぁ。女の子アニメの主人公みたい。
…でも、あれよね、これが良いとか言ったらどうせ悠美に笑われるだろうし…。
「…私は、これかしらね」
私は、カタログ中でも一番大人しい、サーファーの着てるウェットスーツみたいなタイプの青いスーツを指差す。全然好みじゃないけど、どうせたとえばの話だしね。
「わぁ~!大人っぽいねぇ」
「へぇ~地味なの選ぶんだな。ちょっと意外だ」
「あら、そう?」
「亜依はもっとこう、可愛い系が好きなのかと思ってたけど」
…あいかわらず、勘がいいわね。
「そんなことないわ。私はこういうシックなのが好きなのよ」
「あたしはこれがいいなぁ!これ超可愛いよね。ほら、肩のフサフサとか、スカートのフリルとか」
「ほんとだ!可愛いねぇ~♪」
…悠美が選んだのは、まさに私が選ぼうとしていた可愛いスーツだった。
悠美こそ意外ね。悠美はもっとスポーツ系のやつが好きかと思ってたんだけど。
「へぇ、悠美って意外と少女趣味なのね」
なんとなく優位に立ったような気分で、私は悠美を見る。
「ん?ダメか?」
「ううん全然そんなことはないわ。実をいうと私も、一番いいなと思ったのはそれなの」
よかった。悠美がこっち側なら、私も遠慮なくこのスーツを選んで大丈夫よ…ね…あれ…?
「…へぇ、やっぱり…」
そこには、笑いをこらえてる悠美の顔が…!
「…ハ、ハメたわね悠美!」
「なんのことだ?しかしなるほど、亜依はこういうのが趣味だったのかぁ」
「違うわよ!私はそんな可愛いやつじゃなくて…もっとこう…地味な奴が好きなの!」
うかつだった。この天才バカ娘はアホだけど賢いんだった。私の趣味を知った上で誘導してきたのね!
「そうかぁ。いや、チームで統一したいなと思ったんだけど、やっぱり地味な奴の方が良いよな」
「え…」
なに?そういう真面目に選ぶやつなの?
だったら全然話は別なんだけど。
「い…いや、悠美がそれが好きっていうなら、別にそれでも、いいんじゃない?わ…私は地味なのが好きだけど」
悠美が、ニヤニヤしながらこっちを見てる。こっち見ないでよ!うるさいわねもう!
「…じゃあ、リンはどっちがいい?地味なのと可愛いの」
「私は可愛いのの方がいいかなぁ♪」
!?
「…なるほど、じゃあ仕方ないな。亜依には悪いけど、チームで統一する場合は可愛いスーツにしよう。それでもいいか?」
「べ、べ別にいいわよ。仕方ないわね」
悠美が楽しそうに笑ってる。
なんなのよもう!わざとらしいわね!
…けど、可愛いスーツ、着れるのかしら。
チームで統一っていうのも、わ、悪くないわね。
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熊瀬川リン:三森すずこ
生田目亜依:内田真礼
超野悠美:諏訪彩花
剛力ハルカ:早見沙織
和迩黒子:竹達彩奈