イントロダクション!
※当作品は発行元である株式会社ポニーキャニオン(ぽにきゃんBOOKS)に許諾のもと、掲載を行っております。
『緊急無線!ブロードウェイ62丁目で銀行強盗発生!犯人グループは車で逃走中!』
「はいはい!こちらサンダーバービー。いま光の速さで現場に向かってるよ!」
「こちらクリスタルイヴ。シカゴ通りでアイスを食べてましたわ。いま行きますの」
「OK!こちらフレイムテイル。燃えてきたわね!みんな、気合い入れていくわよ!」
白昼、サイレンの鳴り響く大都会バスターポリス。ショッピングで賑わうストリートの人だかりを分けて、複数台のパトカーが走る。飛び交う警察無線。
銃声の響くダウンタウンには緊迫感が漂っていた。フルアクセルで暴走する犯人の車に、警察のパトカーは追いつけそうにない…!
『位置情報!犯人グループはシカゴ通り12番地周辺を逃走中!人質がいます!』
「クリスタルイヴ、犯人がそっちに行くわ!車を停止させて!手段はなんでもいい!」
「…ザザッ…わかりましたわ」
追跡するパトカーに向かって銃を発砲しながら走る犯人グループの逃走車。その先の交差点に待ち構えるのは、ファーのついたフードをかぶった少女、クリスタルイヴ。
「みなさん、離れてください」
夏でも分厚いコートに身を包んだクリスタルイヴは、野次馬に注意を促しながら神経を集中する。氷結する瞳。吐く息は次第に白くなり、彼女の周りに漂う冷気を感じさせた。
「いきますわよ。……『絶対零度【コールドタッチ】』!」
冷気に凍てつく手の平を地面について発揮したクリスタルイヴの能力【ギフト】は、周囲50m四方の熱を一瞬にして奪い、
交差点一帯を氷づけにした!滑る路面にハンドルを取られた暴走車は、無理に立て直そうとしたブレーキによって車体をスピンさせ、
滑るまま信号機に横腹をぶつけて、大きな音を出しながら停止する。
「…こちらイヴ、犯人グループの逃走車を止めましたわ」
「さすがね!いまサンダーバービーがそっちに向かってるわ!」
「了解」
…無線に気をとられて、クリスタルイヴは後ろの影に気づかない。逃走車からフラフラと出てきた犯人は銃を構え、そしてクリスタルイヴを狙う!
「あああぶなああああああい!」
間一髪、クリスタルイヴを銃弾から救ったのはサンダーバービー!ランニングシューズにボーイッシュな金髪をなびかせながら、イヴを助け出し、走る!
凶弾を逃れたイヴは氷の壁の後ろに隠れ、バービーは余裕の笑みを浮かべながら犯人たちに接近する。
「いくよ!『電光石火【ライトニングランナー】』!」
目にも留まらぬ超光速移動で銃撃をすべて避けるサンダーバービー!速過ぎるその姿は視界から消え、犯人グループはキョロキョロとあたりを見渡している。
ギフトを発揮したサンダーバービーを目で追える者はいない!
…と、そのとき、犯人の後ろ、人質の側でコソコソしてる人影が。人質の縄を解こうとしているのは、いつのまにか背後に回り込んだバービー。
モタモタしている!意外と不器用だ!こういう細かい作業が苦手なのが惜しい!
足音を立てずゆっくりバービーに近づく犯人。そして、静かに銃を構えたその照準がバービーを捕らえた…!不敵にニヤリと笑う犯人、このままではサンダーバービーが危ない!
「『炎の牢獄【ファイヤードーム】』!」
その時、どこからか聞こえたその声と同時に、犯人の周りを灼熱の炎の壁が囲んだ!火にまかれそうになりながら動揺する犯人グループ。
そして、その炎の壁の中から悠然と現れたのは、ベリーダンサー姿の少女。燃え盛るポニーテイルを揺らしているのは、そう!
スリーエレメンツのリーダー、炎のスーパーヒロイン・フレイムテイル!
「火遊びはおしまいよ、銀行強盗さん♪」
炎の渦の中に犯人を閉じ込め、余裕の表情でウィンクをして見せるフレイムテイル。しかしその瞬間、事故車から漏れたガソリンが炎に引火、爆発を起こした!
「きゃあ!?」
爆風に吹き飛ばされたフレイムテイルは、おもわず炎の壁を解いてしまった!
「いたたた……」
ジャキ…!
「え?」
起き上がりざま、犯人グループに銃口を突きつけられたフレイムテイル、絶体絶命!
《どうなるフレイムテイル!CMの後はスリーエレメンツの素顔に迫る!》
……………。
「へぇ、これが最近話題のフレイムテイルね」
「ん?あぁ。かっこいいよなー」
「…ねぇちょっと、ポテトチップ食べた手で私の漫画読まないでよ」
「ん?大丈夫大丈夫、油つかないように気をつけてるから」
「やめなさいってば」
バスターポリス42番通りに面したリーズナブルなシェアハウス。それがここ、ヒロイン学園【アカデミー】学生寮、通称ヒロインハウス。
カレッジタウンのいたるところに建てられているこの寮は、どれも外観は屋外階段が設置された赤レンガ造りで、学生にも人気なオシャレ学生寮。
建物のサイズによって若干差はあるみたいだけど、大体は5人ずつくらいが住める感じかな。
大きな共有リビングと個別の部屋があって、キッチンやバスルーム、ランドリーはみんなでシェアする感じ。
駅からちょっと離れてるのが難点だけど、家賃は安いしそれくらい仕方ないわよね。
《なんと!フレイムテイルの炎で銃口の溶けた銃は、そのまま暴発!》
《スリーエレメンツの活躍で事件は解決した!犯人グループはその後…》
共有リビングに置いてあるテレビから、人気ヒロインの特集番組が流れている。桜も散りきった少し暖かい春、ゴールデンウィークの終わり頃。
私、生田目亜衣【なまためあい】とシェアメイトの悠美【ゆうみ】はのんびりした感じで、宿題したり、漫画を読んだり。
1938年、超人的能力を持った人間『ヒーロー』が誕生した。突然変異か、地球外生命体によるものか、人為的な_実験によるものか、
その発祥の原因についてはいまだにハッキリとしたことはわからないけど、その頃を境に世の中には次々とヒーローが生まれるようになった。
約1万分の1くらいの確率で生まれる(遺伝のときもあるけど)そのヒーローは皆、"ギフト"と呼ばれる能力を持っており、
ある者は怪力を発揮し、ある者は空を飛び、ある者はレーザービームを操っては正義のために戦った。でも、それと同時に色んな社会問題が起きたりもした。
例えばヒーロー差別の問題とか、能力の悪用、能力犯罪組織による事件、ヒーロー不要論とか、ヒーロー待望論とか、他にも色々。
私達は歴史の教科書くらいでしか知らないけど、世界のピンチを救ったスーパーヒーローの話なんかも沢山あったりする。
でも、それはもう昔の話。現代では悪はほとんど衰退して、世の中はかなり平和になっている。
だからといってヒーロー職がなくなるってわけでもなくて、悪い人がいればそれを懲らしめるのはやっぱりヒーローの勤め。
警察と消防とヒーローと、って感じで、ヒーローはいまも平和を守る象徴として活躍している。
そんな中、私たちギフト能力者を良識あるちゃんとしたヒーローに育てることを目的に作られたのが私達の通う学校『国立スーパーヒロイン学園【アカデミー】』。
大都市バスターポリスの6つに分かれる行政区の、特に学生を育てることに特化した区画――カレッジタウンに建てられたこの学校は、
全部で4つあるヒーロー学校の中では唯一のヒロイン女子校でもある。この学校でみんなは、自分の能力と向き合って進路を決める。
ヒーロー向きの人はヒーロー職に就くし、ヒーロー向きじゃない人はギフトにあった仕事を選ぶ。
最近では、ちょっとしたアイドルみたいな雰囲気のヒーローチームもあったりして、ヒーローの役割も結構広くなってきてたり。
《水も滴るイイ男、アクアマグナム! 手ぐしでキマる、動きのある髪へ――レジェンド・ワックス ~君も、ヒーローになれる~》
そうそう、たとえばこんな感じ。さっきのフレイムテイルみたいに実戦での活躍がメインのヒロインもいると思ったら、こんな風に芸能活動をしてるアイドルヒーローもいる。
一世代前は男性ヒーローが活躍することが多かったけど、最近は男性アイドル事務所が目立つようになって、どちらかというと現場で活躍するのは女性ヒロインの方が多かったりする。
「そうだ、そういえばハルカさんから聞いたんだけど、新しい子が入るみたいよ。同い年の」
「入るって、どこに?」
「ここよ。私達のシェアハウス。空部屋がまだ二つあるでしょ?4号室に入るらしいわ」
「へぇ~!新しい子か」
「ちなみにその子、『ラブリーテディ』って名前のヒロインらしいわ」
「…す、すごいヒロインネームだな…」
「名前はアレだけど、噂ではかなりの実力みたいよ。悠美と同じA級ヒロインだって。全戦全勝のスーパールーキーで、解決した事故や事件は100件以上って話よ」
「へぇー、そんな子いたんだ。そりゃ超すごいなぁ!」
「この子がいれば私達のチームの偏差値も上がりそうね」
その日の昼過ぎ、ごく普通の引越しのトラックと一緒にその子はやってきた。
当作品は毎日朝7時更新です!
尚、こちら第1巻を公開しつつ、2巻以降も良いタイミングで公開をしていく予定です!
全国書店にて第1巻好評発売中!
また、スペシャルボイスドラマもニコニコ動画にて無料公開中です!
http://ch.nicovideo.jp/superheroineacademy
熊瀬川リン:三森すずこ
生田目亜依:内田真礼
超野悠美:諏訪彩花
剛力ハルカ:早見沙織
和迩黒子:竹達彩奈