Closed World Online
これも勢いです。見直してしていますが、誤字脱字等ございましたら恐縮ですが報告してくださると助かります。
「は!?メイは何も気づいてなかったのかよ!!」
ゲーム内で久しぶりに会った弟、尭に出会い頭に言われた言葉は呆れを通り越して本当に驚いている様だった。
「うん、さっぱり」
「ありえない……」
尭の話を要約すれば私が現在進行形でプレイしているVRMMORPGオンラインゲームがデスゲームとなってしまったらしかった。VRシステムをゲームとして利用するのは世界初の試みだということで一躍有名になり全世界のゲーマー達を騒がせたオンラインゲーム。
Closed World Onlineー「閉ざされた世界」、なんて題名に世界を救うのはあなた次第だ、という実に単調で明確なキャッチフレーズ。世間からは略してCWOと呼ばれ、発売から一週間だというのにも関わらずゲーム人口数は今までに発売されてきたゲームの群を抜いているという。そんな、世間を騒がせたオンラインゲームが、デスゲーム化したらしい。
いつものメンバーでモンスターを狩っていたところ、そろそろ昼ご飯の時間だと気づいた尭が一度パーティから抜けログアウトしようとするとなんとログアウトができなかったらしい。おかしい、バグだろうか、そう感じながらもステータスやフィールドに異常はないかと確認していたところ自分宛、いや正しくはプレイヤー全員に向けてのお知らせが更新されていたことに気づき読んでみると、その内容は「世界を救うまであなた達をここからだすことはできない」ということだった。焦った尭は急いで私に連絡をとり、話し合わなければと思ったらしかった。
「いやあ、しかしデスゲームかあ」
「そんなほのぼのしてていいのかよ!?デスゲームだぞ!!」
はははははと笑えば肩をがっしりと掴まれ大きく揺さぶられた。そんなに焦るほどのことだろうかというのが私の意見なのだが。
「遊びじゃないんだ、本当に命がかかってるんだよ。姉ちゃん。わかってよ」
心配なんだ、そうつづけられた言葉にああ姉ちゃん愛されてんなと馬鹿なことを考えていた。ゲーム内では姉弟とバレないようにハンドルネームで呼んでいる弟が心配のあまりいつもの姉ちゃん呼びに戻っているという事実がどうしようもなく可愛くて私は思わずガシガシと尭の頭を撫でた。
「いやでもね、人間死ぬときは死ぬから」
「不謹慎なこと言うなよ……」
「それに、悪魔でもこれはデスゲームになったってだけの話だろ?」
「だけってなんだよ、結構やばいことだぞ」
姉ちゃんはことの重大さがわかってないんだ、そんな感情をこめた目でじっと見つめられる。
「でも、ゲームなことに変わりはない」
「いや、そうだけど!」
「元から一度も死なないを前提にした縛りプレイをしてると思えばいい。ゲームなんだから、楽しまなきゃ」
そう言うと尭は怒りを通り越してあきれたように、大きなため息をついた。
「人生楽しんだもん勝ちっていうしさ」
へらへらと笑いながらそう告げると「メイらしいや」といって尭はさっきの強張っていた表情を緩ませて笑った。
「でもやっぱりメイだけじゃ心配だし、パーティ組もうよ。危なっかしい」
「その心配はないよアキ。ソロプレイヤーとして頑張る」
「はああああああ!??本気で言ってんの!?」
馬鹿じゃねーの、やっぱり死にたいの、勇敢と無鉄砲は意味が違うんだよ、なんて暴言もとい正論が尭の口からこぼれる。
「いや、どうせならソロで世界救いたい」
「ほんっとバカだよね!!ていうか自分でデスゲーム化からプレイヤー救うつもり!?」
「だって、考えてみろ。このゲームの世界観は病原ウイルスが円満し死滅する予定の世界だぞ。ウイルスが他の世界に干渉し、広がるのを防ぐために閉ざされた世界、それを救うのはプレイヤー。みたいな内容だったはずだ。つまり、よくあるデスゲーム化の小説では率先してゲーム攻略をしてデスゲームからの解放か、町などのモンスターがでない安全地帯で待機か、なんて選択肢があったけれどここでは何もしないでウイルスに殺されるか、何かしてモンスターに殺されるか、そして何かして世界を救うかの三択だ。誰かがどうにかしないといけない」
つらつらとでてきた言葉を言えば尭は項垂れた。
「こういう姉もつと本当大変。弟の身にもなってみろよ……普段はバカなくせに変なところで機転がきくしさあ……。唯我独尊っていうかさ、もう勝手にすれよ。止めないから。けど死んだりしたら許さないから」
「死ぬわけないだろ」
自信たっぷりにそう言えば「その根拠のない自信はどこからでてくるんだか」と嘲られたが気にしない。じゃあ俺はメンバーのところいくからな、といって背中を向けてエスケープでエリア移動した弟に向けて軽く手を振った。にしても、これから忙しくなりそうだ。私はこれから待ち受けているであろう困難に、期待に胸を躍らせた。別に苦しかったりつらいのが好きなわけではない。ただ、スパイスのきいていない人生など生きている意味がないと思うのでちょっとばかり新鮮で、初めての体験に私は正直言って興奮した。