第8話:王城バルコニーに『絶望(特盛り)』お届けに上がりました
「ギュオォォォォォォォォォォォォッ!!」
ヤンキー特有の真紅のオーラを纏いながら、ちくわ(古竜)は王都の空を切り裂いていた。
背中に乗るアリアは「ひゃああああっ」と悲鳴を上げながらちくわの鱗にしがみつき、頭頂部でヤンキー座りを強制されている俺の顔面は、尋常ではない風圧でブルドッグのように波打っていた。
一方その頃、王城の最上階にある大広間では、国王と俺を馬鹿にしていたクラスメイトたちが、豪華な宴を開いていた。
「はっはっは! 勇者殿たちのチートスキルがあれば、我が国は安泰じゃ!」
「ええ、あんな無能な『ごーちゃん』スキルの鈴木なんて、今頃ゴブリンの餌食ですよ」
腹立たしい会話が聞こえてくる。
まさにテンプレ通りのヘイトの稼ぎ方だ。
『異世界転生・召喚板』
109 名前:名無しの転生者
王様たち、絶賛フラグ建築中で大草原
110 名前:名無しの転生者
イッチ、宴会のど真ん中に突っ込もうぜ!
111 名前:名無しの転生者
ただ突っ込むだけじゃ面白くない。
【安価】王様たちへのカッコいい第一声 >>115
112 名前:名無しの転生者
地獄から戻ってきたぜ
113 名前:名無しの転生者
パーティの主役が帰ってきたぜ
114 名前:名無しの転生者
逆に命乞いをする
115 名前:名無しの転生者
「ちわーっす! ◯ーバーイーツです! ご注文の『絶望(特盛り)』お届けに上がりましたー!」と爽やかに挨拶
「異世界にフードデリバリーなんかあるわけねぇだろォォォ!!」
もはやツッコむ気力も限界に近づいていたが、俺の身体は無慈悲にもスキルの強制力によって動かされる。
「ちくわ! あのバルコニーに突っ込め! そしてドリフトだ!」
「ギャウッ!!」
ちくわは主の無茶振りに対し、空中で器用に巨体を捻った。
王城を覆っていた強固な対空魔法結界が、ちくわの放つヤンキーオーラに触れた瞬間にパリンッ!と飴細工のように砕け散る。
「な、なんじゃあの赤い彗星のような巨大な影は!?」
「こ、こちらに向かってきます! そ、空が燃えている……!?」
宴会場がパニックに陥る中、ちくわはバルコニーに猛スピードで着弾。
凄まじい衝撃音と共に石造りの床を削りながら、ズザーーッ!と完璧なサイドブレーキを引いたかのようなドリフト駐車を決めた。
ズドゴォォォォォォォォォォンッ!!!
巻き起こった突風で宴会のテーブルが吹き飛び、王城の窓ガラスが一斉に割れる。
舞い散る粉塵の中、漆黒の古竜の頭頂部でヤンキー座りをし、肩に竹の棒を担いだ俺は、満面の営業スマイルを作って右手を上げた。
「ちわーっす! ◯ーバーイーツでーす! ご注文の『絶望(特盛り)』、お届けに上がりましたー!!」
シーーーン……。
破壊されたバルコニー。
伝説の災厄であるはずの古竜。
そして、謎の配達員風の挨拶をする高校生。
情報量が多すぎて、国王もクラスメイトたちも完全にフリーズしていた。
やがて、クラスのイケメンリーダー格だった佐藤が、震える指で俺を指差した。
「す、鈴木……!? お前、なんで生きて……ていうか、その乗ってる化け物、なんだよ!?」
「あ? これか? 俺の愛犬の『ちくわ』だけど」
俺が鼻で笑いながらちくわの顎下を孫の手で撫でると、ちくわは「ゴロニャン♡」と鳴いてバルコニーの柱を尻尾でへし折った。
116 名前:名無しの転生者
愛犬(古竜)
117 名前:名無しの転生者
絶望特盛り配達ニキwwww
118 名前:名無しの転生者
王様、完全にチビってて草
「ひっ……ひぃぃぃっ! こ、こなたは古竜!? な、なぜあのような無能が、災厄の化身を従えておるのじゃ!」
国王が腰を抜かし、玉座から転げ落ちる。
「無能? ああ、俺のスキルのことですか」
俺は立ち上がり、肩に担いでいた孫の手を国王へ向けてビシッと突きつけた。
「俺のスキル『5ch』はなぁ……お前らみたいなちっぽけな世界の常識じゃ測れない、数万人の暇人たちの悪意と集合知の結晶なんだよ!!」
カッコよく言い放ったが、よく考えたら全然誇れる能力じゃなかった。
しかし、神話級の孫の手から立ち昇る黄金のオーラと、古竜の圧倒的なプレッシャーの前に、かつて俺を追放した者たちはただ平伏し、ガタガタと震えることしかできなかった。




