第7話:命名『ちくわ』〜恐るべき血喰らいの竜と、王都へのヤンキー・フライト〜
「ゴロロロ……ニャァァン……♡」
街の東門。かつて絶望の象徴であった漆黒の古竜は、完全に牙を抜かれ、俺の足元で巨大な腹を見せて転がっていた。
神話級・孫の手の快感からすっかり抜け出せなくなったらしい。俺が少し動くだけで「もっと掻いて!」と言わんばかりに巨大な鼻っ柱をすり寄せてくる。
「……すっかり懐かれちゃったな。なあ、お前名前とかあるのか?」
俺が何気なく古竜に問いかけた、その瞬間だった。
『異世界転生・召喚板』
90 名前:名無しの転生者
お、ペットの命名イベントじゃん!
91 名前:名無しの転生者
ここは俺たちに任せろイッチ!
92 名前:名無しの転生者
よし、このスレでドラゴンの名前を決めるぞ!
【安価】古竜の名前 >>95
93 名前:名無しの転生者
バハムート
94 名前:名無しの転生者
ポチ
95 名前:名無しの転生者
ちくわ
「安直ゥゥゥゥッ!!!」
俺は頭を抱えた。いくらなんでも伝説の古竜に対して、スーパーで100円で売ってる練り物の名前はないだろう!
しかし、俺の口はスキルの強制力によって勝手に動かされてしまう。
「お前の名前は……今日から『ちくわ』だ!」
俺がビシッと古竜に向かって指を差すと、古竜は嬉しそうに「キュルルン!」と鳴いて尻尾を振った。
周囲で固まっていたギルドマスターや防衛隊員たちが、ざわめき始める。
「ち、ちくわ……? 聞き慣れぬ響きだが、古代の言葉か?」
「ハッ! ギルドマスター、もしや『血』を『喰らう(くわ)』という意味では!?」
「なんと……『血喰らい』!! かつて世界を恐怖に陥れた暴虐の竜にふさわしい、恐ろしくも禍々しい真名を与えなさったというのか!!」
アリアも両手を胸の前で組み、うっとりとしたため息を漏らした。
「『血喰らい』……盟主様のネーミングセンス、底知れぬ恐怖とカリスマを感じます……!」
「違う! 魚のすり身を焼いた平和な食べ物のことだ!!」
俺のツッコミは誰にも届かない。こうして、この異世界において『ちくわ』という言葉は、未来永劫「血に飢えた最強の魔獣」を指す恐ろしい単語として歴史に刻まれることになってしまった。
96 名前:名無しの転生者
血喰らいで草
97 名前:名無しの転生者
異世界人の深読みスキル高すぎだろwww
98 名前:名無しの転生者
よしイッチ! ペットも手に入れたし、いよいよ俺たちを追放したあのムカつく王様に挨拶しに行こうぜ!
99 名前:名無しの転生者
お、ついに王都帰還か!
【安価】王都に向かってちくわで離陸する時のポーズとセリフ >>105
「……またかよ! 普通に乗せてくれよ!」
100 名前:名無しの転生者
普通に背中に乗る
101 名前:名無しの転生者
口の中にくわえてもらう
(中略)
104 名前:名無しの転生者
優雅にティータイムしながら「お嬢さんの瞳に乾杯」とアリアを口説く
105 名前:名無しの転生者
ちくわの頭頂部でヤンキー座りをして、木刀(孫の手)を肩に担ぎながら「全国制覇行くぜオラァ! 夜露死苦ゥ!」と叫ぶ
「だからなんでいつも俺の黒歴史ノートの1ページみたいなことさせるんだよォォォッ!!」
泣き叫びながらも、俺はちくわ(古竜)の巨大な顔をよじ登り、その角の間に陣取った。
そして、強制的にヤンキー座りの体勢を取らされ、神話級の孫の手を木刀のごとく肩に担ぐ。
「アリア! お前は背中に乗れ!」
「は、はいっ!」
アリアがちくわの背中に飛び乗ったのを確認すると、俺はヤンキー特有のガン飛ばしフェイスを作り、街の住民たちに向かって咆哮した。
「全国制覇行くぜオラァ!! 夜露死苦ゥゥゥッ!!」
ピコォォォォォォンッ!!!!
ちくわの全身が、ヤンキーの特攻服よろしく真紅のオーラに包まれる。
「ギュオォォォォォォッ!!」
ちくわは暴走族の爆音マフラーのような凄まじい咆哮を上げると、音速の壁をぶち破り、王都へ向かって弾丸のように空へと射出された。
ドゴォォォォォンッ!!
「盟主様ぁぁぁ、速すぎますぅぅぅぅ!」
「俺も風圧で顔の形がヤバいィィィィィ!」
106 名前:名無しの転生者
ヤンキー竜騎士爆誕wwww
107 名前:名無しの転生者
夜露死苦(物理破壊)
108 名前:名無しの転生者
王様、今頃震えて眠ってるだろうなwww
背後に特大の飛行機雲を引きながら、俺とちくわとアリアは、俺を無能と見下し追放した王様のいる王都へ向けて、爆音の空の旅を開始したのだった。




