第6話:古竜(エンシェント・ドラゴン)襲来!?
神話級・孫の手の真なる力
「戦闘力53万……! そ、そのような莫大な魔力を隠し持っていたとは……!」
半壊したギルドの奥から現れたのは、筋骨隆々で顔に大きな傷のあるギルドマスターだった。
彼は俺の持つ『孫の手』を見るなり、ゴクリと唾を飲み込み、そして深く頭を下げた。
「鈴木様、先程はウチの馬鹿共が無礼を働き申し訳ありませんでした! Sランク冒険者として、どうかこの街を……いや、国をお救いいただきたい!」
「え? 国を?」
俺が間の抜けた声を出すのと同時に、街中にけたたましい警報の鐘が鳴り響いた。
カン! カン! カン! カン!
「ギ、ギルドマスター! 大変です!」
青ざめた顔の受付嬢が叫ぶ。
「街の東門に、伝承にしか存在しないはずの『古竜』が飛来しました! すでに防衛隊は壊滅状態です!」
「なんだと!? くっ、よりによってなぜ古竜クラスが……! だが、我々には今、希望の光がいる!」
ギルドマスターをはじめ、目を覚ましたモブ冒険者たち、そしてアリアまでもが、期待に満ちたキラキラとした目で俺を見つめていた。
いやいやいや! 無理だから!
俺、中身はただの平和ボケした現代日本の高校生だから!
しかし、俺の意志とは無関係に、目の前の半透明ウィンドウは激しくスクロールを始めていた。
『異世界転生・召喚板』
79 名前:名無しの転生者
お、緊急クエスト発生キタコレ
80 名前:名無しの転生者
古竜とかラスボス手前のイベントじゃんwww
81 名前:名無しの転生者
よしイッチ、街の英雄になるチャンスだぞ!
【安価】古竜の撃退方法 >>85
82 名前:名無しの転生者
剣(孫の手)からビーム
83 名前:名無しの転生者
痺れ生肉を目の前に置いて食べなかったところを「お腹空いてないのかよ!」と逆ギレキック
84 名前:名無しの転生者
土下座して見逃してもらう
85 名前:名無しの転生者
神話級の孫の手で古竜の顎下を全力で掻きながら、「よーしよしよしよし! いい子でちゅねー!」とムツゴロウさん化して手懐ける
「……また俺の尊厳を削る気かお前らァァァァッ!!」
◆◇◆
街の東門は、絶望に包まれていた。
見上げるほど巨大な漆黒の鱗を持つドラゴンが、天に向かって咆哮を上げている。その一鳴きだけで、周囲の家屋の屋根が吹き飛ぶほどの暴風が巻き起こった。
「グオォォォォォォォォッ!!!」
炎を吐き出そうと、古竜の喉の奥が赤く発光し始めたその時。
「よーしよしよしよしよしよしッ!!!」
俺は安価の強制力に突き動かされ、古竜の足元まで光の速さでダッシュ(スキル補正による超高速移動)すると、大空高くジャンプした。
そして、古竜の巨大な顎の下に張り付き、神話級アーティファクト『孫の手』で、その硬い鱗の隙間をガリガリと全力で掻きむしった。
「いい子でちゅねー! ここが痒かったんでちゅかー!? よーしよしよしよしッ!」
半泣きで赤ちゃん言葉を叫びながら、古竜の顎下を孫の手でスクラッチする。
ピコォォォォォォンッ!!!!
脳内に響く確定音。
その瞬間、ただの物理的な摩擦だったはずの『孫の手による掻きむしり』は、スキルの絶対法則によって【対象に究極の快楽と服従を与える神話級マッサージ】へと昇華された。
「……ピギィッ!?」
古竜の喉の奥で燃え上がっていた炎がシュンッと消滅する。
恐ろしい爬虫類の瞳が、トロンとだらしない形に変化した。
「ゴロロロ……キュルルルル……♡」
あろうことか、最強の存在であるはずの古竜は、巨大な体を地面に投げ出し、猫のように喉を鳴らし始めたのだ。
俺が孫の手を動かすたびに、古竜はビクンビクンと身をよじって喜んでいる。
86 名前:名無しの転生者
草
87 名前:名無しの転生者
ドラゴンが猫になっとるwwwwww
88 名前:名無しの転生者
さすが神話級(村長の孫の手)だぜ!
痒い所に手が届く究極の武器!!
89 名前:名無しの転生者
イッチの赤ちゃん言葉キツすぎて画面見てられないwww
防衛隊員も、駆けつけたギルドマスターも、全員が武器を落としてポカンと口を開けていた。
アリアだけは、両手を組んでうっとりとした表情で呟いた。
「ああ……恐るべき凶悪な古竜すらも、慈愛に満ちた言葉(赤ちゃん言葉)と、その神なる御手(孫の手)で浄化なされるとは……! 盟主様は、やはり神の化身……!」
「違う……俺はもう、恥ずかしくて死にたい……」
巨大な古竜を愛玩動物へと変貌させ、俺は意図せず「最強のテイマー」としての称号まで獲得してしまうのだった。




