第4話:エルフの秘宝(ゴミ)と、神話級の孫の手
ピンク色のハートビームでオークの軍勢が塵となった後、俺はアリアに連れられて村の中心にある集会場へと案内された。
そこには、白髭を長く伸ばした、いかにも長老といった風貌のエルフの村長が待っていた。
「おお……貴方様が村を救ってくださった、深淵の盟主様ですか。あのような恐ろしくも神聖なる光の魔法、エルフの長い歴史の中でも見たことがありませぬ。村を代表して、深く御礼申し上げます」
「あ、いえ……どうも」
村長が深々と頭を下げる。周囲のエルフたちも一斉に平伏した。
いたたまれない。俺はさっきまで「キュンキュン♡」とか言ってターンを決めていたただの高校生(男)なのだ。
「盟主様、この恩義に報いるため、我が村に伝わる『エルフの秘宝』をどうかお受け取りください」
そう言って村長が恭しく差し出してきたのは、美しく透き通るような緑色の宝石が埋め込まれた、見事な白銀の弓だった。
「これは『世界樹の弓』。使い手の魔力に応じて、決して外れることのない光の矢を放つ、我が村の国宝です」
おおっ、これぞ異世界ファンタジー!
伝説の武器ゲットイベントだ。しかもカッコいい。これは素直に嬉しい。
俺がウキウキで弓を受け取ろうと手を伸ばした、その時。
『異世界転生・召喚板』
54 名前:名無しの転生者
おっ、報酬イベントじゃん。
55 名前:名無しの転生者
イッチ、そんな弓よりアリアちゃんを貰え!
56 名前:名無しの転生者
弓とかエイム力ないと使えんぞ。
ここはイッチのメインウェポンを決める大事な安価だ。
57 名前:名無しの転生者
【安価】イッチが選ぶ真の報酬 >>60
「……やめろ! 俺はあの弓が欲しいんだ! 安価やめろぉぉぉ!」
俺の悲痛な心の声はネットの海には届かない。
スレの勢いは加速し、無情にも運命の>>60が決定した。
58 名前:名無しの転生者
アリアちゃんの手を取ってプロポーズ
59 名前:名無しの転生者
村長(意味深)
60 名前:名無しの転生者
世界樹の弓を鼻で笑い、村長が背中を掻くのに使ってた『孫の手』を奪い取る
「だからなんでお前らはそう、人の感動をぶち壊すんだよ!!!」
俺は血の涙を流しながら、差し出された美しい『世界樹の弓』を「フンッ」と鼻で笑ってスルーした。
そして、戸惑う村長に歩み寄り、彼が腰に差していた使い込まれた竹製の『孫の手(ただの棒)』をひったくった。
「め、盟主様……? それは私が日頃、背中の痒いところを掻くのに使っているただの竹の棒ですが……」
「この程度の宝よりッ! そちらの杖の方が余程すさまじい魔力を秘めているわッ!!」
俺は半ギレで叫びながら、孫の手を天高く掲げた。
ピコォォォォォォンッ!!!!
例の如く、チート補正の確定音が脳内に響く。
すると、俺が握りしめた『ただの孫の手』から、突如として天を衝くほどの黄金のオーラが噴き出した。
「な、なんだこの尋常ではない魔力は……!?」
「孫の手が……黄金に輝いている……!?」
地鳴りが起き、風が巻き起こる。
ただの竹の棒だったはずのそれは、俺のスキル補正によって物理法則を捻じ曲げられ、まるで神の雷を宿したかのような荘厳なアーティファクトへと変貌を遂げてしまったのだ。
61 名前:名無しの転生者
うおおおおお!孫の手(神話級)キタコレwww
62 名前:名無しの転生者
画面がシュールすぎるだろwww
63 名前:名無しの転生者
イッチのメインウェポン【孫の手】で確定して草
村長は震える膝をつき、大粒の涙を流してひれ伏した。
「おおお……伝承は真実であったか! 『真の神滅の杖は、最もありふれた形をして村の長に受け継がれる』と! 私が今まで背中を掻いていた棒切れこそが、真の秘宝だったのですね! それを見抜くとは、流石は盟主様!!」
「いや、絶対そんな伝承ないだろ……」
エルフたちは完全に感極まり、神々しく輝く孫の手と俺に向かって祈りを捧げ始めた。
アリアに至っては尊さのあまり失神寸前である。
「……これから俺、この『孫の手』で戦っていくの……?」
俺の異世界での相棒(メインウェポン)が、世界樹の弓から『村長の孫の手(神話級)』に確定した瞬間だった。




