第3話:魔法少女(おっさんメンタル)の無慈悲(むじひ)なるハートビーム
「ふっ、俺の右腕の黒炎竜が疼き出したようだな……案内しろ」
俺は右腕を左手で強く押さえ込み、前髪の間から鋭い視線を放った。
穴があったら入りたい。前世を含めてもぶっちぎりで人生最大の黒歴史更新である。
しかし、エルフの少女の反応は俺の予想とは全く異なるものだった。
「こ、黒炎竜……!? まさか貴方様は、伝説に語られし『深淵の盟主』様なのですか!?」
「えっ? あ、いや、えっと……」
「ああ、なんて頼もしい……! 私の名前はアリアと申します! どうか、村をお救いください!」
アリアは目をキラキラと輝かせ、俺の痛々しい中二病発言を「恐るべき強者の証」として完璧に誤変換してしまった。
異世界人、ネットスラングへの耐性が無さすぎる。
『異世界転生・召喚板』
36 名前:名無しの転生者
チョロインきたああああああ!
37 名前:名無しの転生者
異世界特有のガバガバ解釈たすかる
38 名前:名無しの転生者
イッチ、深淵の盟主(笑)頑張れよwww
スレ住人たちに盛大に煽られながら、俺はアリアの案内でエルフの村へと急いだ。
◆◇◆
森を抜けた先にあったエルフの村は、まさに地獄絵図の一歩手前だった。
木の柵は破壊され、数百は下らない筋骨隆々のオークたちが、下卑た笑い声を上げながら村を包囲している。
「くっ……もうあんなに……!」
アリアが絶望の声を漏らす。
俺も内心パニックだった。さっきは猪1匹だったが、今回は数百匹の化け物軍団だぞ!
39 名前:名無しの転生者
うお、オークめっちゃいるじゃん。
40 名前:名無しの転生者
典型的な「くっころ」展開になりそうな陣形してんな。
イッチ、早く助けないと薄い本になっちまうぞ。
41 名前:名無しの転生者
よし、じゃあ一気に殲滅するか!
【安価】500匹のオークをどうやって倒す? >>50
42 名前:名無しの転生者
普通に剣で無双
43 名前:名無しの転生者
メテオ召喚
44 名前:名無しの転生者
屁で吹き飛ばす
(中略)
49 名前:名無しの転生者
土下座して命乞い
50 名前:名無しの転生者
魔法少女の変身ポーズを決めてから、両手でハートを作って「キュンキュン・ハートビーム♡」
「お前らいい加減にしろよォォォォォォォッ!!!」
俺の悲痛な叫びが森にこだました。
なぜだ。なぜ俺の命運(とエルフの村の存亡)がかかっているのに、こいつらはネタに走るんだ!
「深淵の盟主様……?」
不思議そうな顔をするアリア。オークたちも「なんだあいつ?」という顔でこちらを見ている。
やるしかない。
俺は覚悟を決め、ガニ股気味にステップを踏み、腰に手を当ててクルリと一回転した(※魔法少女の変身ポーズのつもり)。
そして、オークの軍勢に向けて両手でハートマークを作る。
「キュ、キュンキュン……ハ、ハートビィィィィムッ……♡」
泣きながら叫んだ。
ピコォォォォォォンッ!!!!
その瞬間、俺の両手のハートマークから、目が潰れるほどのピンク色の極太レーザーが発射された。
それはただの光ではない。キラキラと輝く星屑やリボンのエフェクトを伴った、純度100%の『破壊エネルギー』だった。
「ブモォォォォォォ!?」
「ギャアアアアアアアアア!」
ドドドドドゴォォォォォォンッ!!!
ラブリーでキュートなピンクの波動砲は、オークの軍勢を呑み込み、周囲の地形ごと彼方へ吹き飛ばした。
しかもエルフの村やアリアには一切のダメージ判定がなく、オークだけが綺麗に(文字通り)浄化されていく。
51 名前:名無しの転生者
威力えぐwwwwwww
52 名前:名無しの転生者
どんな顔して撃ってんだよwww腹痛いwwww
53 名前:名無しの転生者
魔法少女(変態)爆誕の瞬間である
ピンク色の光が収まった後には、オークのオの字も残っていなかった。
静まり返る村。ぽかんと口を開けるエルフたち。
アリアは震える声で、俺に向かって膝をついた。
「あ、あのような可愛らしい詠唱と所作で、かくも恐ろしい絶望の光を放つとは……! さすがは深淵の盟主様……!」
「違う。俺はただの鈴木一太だ……」
俺の心は別の意味で浄化(限界)を迎えそうだった。
ネット民の悪ノリで世界を救う、俺の地獄の異世界生活はまだ始まったばかりだ。




