第22話:魔王軍四天王の絶望〜魔界最強の騎士、みかんの皮の汁(神話級)に沈む〜
「鈴木殿、このふざけた服(猫耳メイド服)はいつになったら脱げるのだ……?」
「さあ……王様の命令の効力が切れるまでじゃないですか? 似合ってますよ、マコさん」
奈落の迷宮、最下層。
王様ゲームの絶対命令により、ねじ曲がった2本の角と背中のコウモリの翼をフリフリの猫耳メイド服に押し込まれた魔娘は、普段の威圧感との凄まじいギャップに羞恥で顔を真っ赤にして震えながら、コタツでみかんを食べていた。
萌え萌えキュン(致死量の魔力爆発)の直撃を受けた女神エルミナは、コタツの端でタオルケットを被って「もうお嫁にいけない……」とシクシク泣いている。
カオス。この世の全ての混沌を詰め込んだような空間だ。
その時、ダンジョンの冷たい空気を引き裂くように、玉座の前に巨大な氷の魔法陣が浮かび上がった。
『パキィィィィィィンッ!!』
絶対零度の吹雪と共に空間が割れ、中から白銀の甲冑を纏い、巨大な氷の剣を携えた冷酷な騎士が現れた。
「魔娘様!! 定期報告が途絶えた上、魔力反応が著しく乱れていたため、我ら四天王が筆頭、氷嵐の剣鬼ヴォルザードが急ぎ救援に駆けつけ――」
片膝をつき、忠誠を誓うように頭を下げる四天王ヴォルザード。
しかし、彼が顔を上げた瞬間、その言葉はピタリと止まった。
「――駆けつけ、まし……た……?」
彼の目に飛び込んできたのは、神話級のコタツ。
そして、その中で猫耳メイド服を着て顔を赤らめながら、みかんの薄皮をチマチマと剥いている、敬愛する魔界の姫君の姿だった。
「あ、ヴォルザード。お疲れ」
魔娘が、メイド服のフリルを揺らしながらみかんを差し出す。
「ま、魔娘様ァァァッ!? な、なんですかその破廉恥極まりないお姿は!! 普段の威厳と可愛らしさのギャップで我の精神が崩壊しそうです!! しかもなぜ、人間やエルフと共に『謎の四角い箱』に入ってくつろいでおられるのですか!!」
「いやぁ、この箱、足元が温かくてな。お前も入るか?」
「正気を失っておられる!!」
ヴォルザードは血走った目で周囲を見渡した。
そして、みかん箱を被った不審者(俺)と、その隣で寝ている古竜に狙いを定めた。
「おのれ人間!! 貴様らが我が君に幻術をかけ、そのような辱めを与えているのだな! 万死に値する!!」
四天王筆頭の怒気により、奈落の間の気温が急激に低下する。
彼の氷の剣が吹雪を纏い、俺の首めがけて振り上げられた。
『異世界転生・召喚板』
299 名前:名無しの転生者
四天王キタコレwww
300 名前:名無しの転生者
そりゃ魔界のお姫様が猫耳メイド服着てたらキレるわな草 ギャップ萌えの破壊力ヤバいww
301 名前:名無しの転生者
イッチ、コタツから出ずにサクッと迎撃してやれ!
【安価】コタツ特有の四天王撃退法 >>305
302 名前:名無しの転生者
コタツ布団の静電気で感電させる
303 名前:名無しの転生者
足の親指で攻撃
304 名前:名無しの転生者
熱いお茶をぶっかける
305 名前:名無しの転生者
食べ終わったみかんの皮を指でギュッと折り曲げ、皮から飛ぶ『黄色い汁』を四天王の目に直撃させて「目潰しッ!!」と叫ぶ
「だからなんで小学生のコタツ遊びで魔界最強の騎士を倒そうとするんだよォォォ!!」
俺の嘆きも虚しく、スキルの強制力が俺の指先を支配する。
俺はコタツから一歩も出ず、手元にあった『食べ終わったみかんの皮』を二本の指でつまんだ。
「死ねぇぇぇっ! 氷嵐絶華斬!!」
絶対零度の斬撃が迫り来る中、俺はみかんの皮を、ヴォルザードの顔面に向けてギュッと折り曲げた。
「目潰しッ!!!」
ピコォォォォォォンッ!!!!
確定音が響き渡る。
ただのみかんの皮から飛び散った微小な柑橘系の汁。
しかし、スキル『5ch』の概念改竄により、その一滴は【|神をも溶かす究極の光学腐食兵器】へと変貌した。
プシュッ。
「――ギャアアアアアアアアアッ!?」
黄金のレーザーとなったみかんの汁が、四天王ヴォルザードの目に(兜の隙間を縫って)直撃した。
「目、目がァァァッ! 燃える! 凍てつくはずの我が魔氷の瞳が、凄まじい酸のエネルギーで溶かされていくゥゥゥッ!」
ヴォルザードは剣を落とし、顔を覆ってのたうち回った。
さらに、みかんの汁の飛沫が彼の白銀の甲冑に触れた瞬間、ジュワァァァッと音を立ててオリハルコン級の装甲がボロボロに溶け落ちていく。
306 名前:名無しの転生者
みかんの汁(神話級レーザー兵器)
307 名前:名無しの転生者
リモネンのポテンシャル高すぎて大草原
308 名前:名無しの転生者
ムスカ大佐みたいな悲鳴上げてて草
「ひ、ひぃぃぃっ! まさかヴォルザード殿の絶対氷装甲が、果実の皮から放たれた一滴の汁で完全崩壊するとは……!」
風呂上がりのリッチ・キングが、ガクガクと骨を震わせる。
そして、一部始終を見ていたアリアが、いつものように感涙を流し始めた。
「ああ……! あの黄色い果実の皮……あれはただのゴミではなく、太陽の魔力を凝縮した『黄金の聖盾の破片』だったのですね! それを指先の圧力のみで臨界点まで圧縮し、邪悪を浄化する極光の矢として放つ……! 盟主様は、食事の残骸すらも神殺しの兵器へと変えてしまわれるのですね!!」
「ちげーよ! みかんの皮の汁が目に入ると痛いってだけの話だよ!」
「お、恐るべし人間……! ワ、ワタシの負けだ……ッ!」
完全に甲冑を溶かされ、ボロボロの全身タイツのような姿になった四天王筆頭ヴォルザードは、涙目で俺の前に平伏した。
「よし、負けを認めるなら、そこの隅っこに座れ」
俺が指差すと、ヴォルザードはすごすごとコタツの隅の空きスペースに正座した。
「罰として、お前は今日から『みかんの皮剥き係』だ。俺たちが食べる分のみかん、全部綺麗に皮を剥いてから渡せよ」
俺がそう命じると、横でみかんを食べていた魔娘が威厳たっぷりに口を挟んだ。
「おいヴォルザード。我の分は、皮だけでなく『白いスジ』も完璧に取ってから渡すのだぞ。少しでも残っていたら承知せんからな」
「は、はいぃぃ……! 喜んで剥かせていただきますぅぅ!」
かくして、魔界最強と謳われた氷嵐の剣鬼は、コタツの隅でプルプルと震えながら、ひたすらみかんの白いスジを綺麗に取り除くという「全自動みかん剥き機」として再就職を果たした。
奈落の間のコタツの人口(とカオス度)は、また一つ増えるのだった。




