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【悲報】異世界転生して与えられたスキルが『5ch』だった件〜無能と追放されたが、ネット民の集合知で最強へと成り上がる〜  作者: 烏丸ぽっぽ


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16/22

第16話:異世界ダンジョンRTA


 右手には竹の棒(神話級の孫の手)。

 胴体には「みかん(産地直送)」と書かれた段ボール箱(絶対防御装甲)。

 そして背後には体長20メートルのチワワ(という概念に改竄された古竜ちくわ)。


 街行く人々の二度見とドン引きの視線を一身に浴びながら、俺たちは冒険者ギルドで依頼されたSランククエストの目的地、『奈落の迷宮』の入り口へとやってきた。


「盟主様、ここが『奈落の迷宮』です……! 全100階層からなる凶悪な地下ダンジョンで、無数の致死トラップと迷路が冒険者を阻みます。最深部に到達するには、熟練のパーティでも数年はかかると言われており――」


 アリアがご丁寧にダンジョンのヤバさを解説してくれる。

 いかにもなファンタジーのダンジョンだ。巨大な石扉の奥には、どこまでも続く暗い階段と、不気味な松明の灯りが揺らめいている。


 数年がかりのダンジョン攻略。普通なら胸が躍る大冒険の始まりだが、俺には嫌な予感しかしなかった。



『異世界転生・召喚板』

204 名前:名無しの転生者

お、ダンジョン配信キタコレ!


205 名前:名無しの転生者

みかん箱装備した変質者がダンジョン挑む図、シュールすぎて草


206 名前:名無しの転生者

100階層とか普通に攻略してたら何日もかかるぞ


207 名前:名無しの転生者

よしイッチ、ここはサクッと終わらせようぜ!

【安価】最速のダンジョン攻略法 >>215


208 名前:名無しの転生者

ちくわのブレスでダンジョンごと消し飛ばす


209 名前:名無しの転生者

スコップで一直線に穴を掘る


(中略)


214 名前:名無しの転生者

罠を全部顔面で受け止めながら進む


215 名前:名無しの転生者

RTA(タイムアタック)名物『壁抜けバグ』。入り口の角に向かって後ろ向きにジャンプしながら臀部(ケツ)を激しくぶつけ続け(ケツワープ)、物理演算(コリジョン)をバグらせて最深部のボス部屋に直行する



「いやお前ら、ここ現実世界(異世界)だからな!? ゲームのバグ技なんか通用するわけねぇだろ!!」


 俺の魂からのツッコミも虚しく、スキルの強制力は発動した。


 俺はアリアを小脇に抱え(お馴染みの米俵スタイル)、入り口の壁の「(コーナー)」に向かって背中を向けた。


「め、盟主様? 入り口はあちらですが……」


 戸惑うアリアを無視し、俺はみかん箱を被ったまま、壁の角に向かって後ろ向きにジャンプし、己の臀部(ケツ)を激しく打ち付け始めた。


「ヤッ! ヤヤヤヤヤヤヤッ!!!」

 ダダダダダダダダッ!!!!!


 ピコォォォォォォンッ!!!!


 確定音が鳴り響く。

 ただの奇行でしかなかった「壁へのケツぶつけ」が、スキルの補正によって『異世界の物理演算(コリジョン)の限界を突破する行為』へと書き換えられた。


 その瞬間、俺とアリア、そして後ろについてきていたちくわの視界が、ぐにゃりと歪んだ。

 石造りのダンジョンのテクスチャが剥がれ落ち、灰色の裏世界(ポリゴン空間)が広がる。


「キャアアアアアアアッ!? め、盟主様、世界が崩壊して……っ!?」

「ごめん! 俺もこれどうなってるか分かんない!!」


 俺たちは壁をすり抜け、通常のマップ構造を完全に無視して、灰色の亜空間を猛スピードで落下していった。

 階層を示す文字が、視界の端でありえない速度で切り替わっていく。


『1階層』『15階層』『50階層』『99階層』――。

 そして数秒後。


 ズドォォォォォォォォンッ!!!!!


 俺たちは天井を突き破り、全100階層の最深部、ラスボスが待ち受ける『奈落の間』へと直接落下した。

 もうもうと舞い上がる土煙。

 そこには、このダンジョンの主であり、魔王軍の幹部でもある恐るべき不死の王(リッチ・キング)がいた。


「フハハハ! 我は死と絶望を統べる――って、え?」


 玉座に座り、恐ろしげな口上を述べようとしていたリッチ・キング。

 だが、彼は今、最高級のシルクのバスローブを羽織り、頭にタオルを巻き、片手にはホットミルクの入ったマグカップを持っていた。

 完全にお風呂上がりのリラックスタイムである。


「あ、どうも」


 みかん箱を被った俺は、孫の手を持ちながら気まずそうに挨拶した。



216 名前:名無しの転生者

ケツワープ成功してて大草


217 名前:名無しの転生者

RTA世界記録更新おめでとう!!


218 名前:名無しの転生者

魔王軍幹部、完全にお風呂上がりで草生い茂るwwww



「き、貴様ら……一体どこから現れた!? この奈落の間に至るには、無数の罠と死闘を数年がかりで越えねばならぬはず……!」


 バスローブ姿のリッチ・キングが、カタカタと骨を震わせて狼狽する。

 すると、俺の脇に抱えられていたアリアが、興奮した様子で目を輝かせた。


「ああ……なんという神業! 空間の『(コーナー)』に己の肉体を幾度も叩きつけることで、この世界の次元の境界を破壊し、事象の地平(ショートカット)を突き抜けるとは……! これこそが、時空魔術の最高峰『ケツ・ワープ』!! 盟主様の前では、100階層の迷宮など、ただの紙切れも同然なのですね!!」

「ちげーよ! ただのゲームの不具合(バグ)の悪用だよ!」


「ケツ・ワープだと……!? そ、そのような恐るべき次元魔法の使い手がいるとは……!」


 アリアのガバガバな解説を真に受けたリッチ・キングは、持っていたホットミルクを落として絶望の声を上げた。


「ギュオォォォォン(※ちくわの威嚇)」


 さらに、背後に控える古竜のちくわが睨みを利かせると、リッチ・キングは悲鳴を上げてその場に土下座した。


「も、申し訳ありませぬぅぅぅ! お風呂上がりで戦う準備もできておりません! 宝は全て差し上げますので、どうか命だけは……!」


 開始わずか1分。

 異世界最恐のダンジョンは、みかん箱を被った男の「ケツワープ」によって、文字通りのRTA(リアルタイムアタック)で陥落したのだった。


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