第13話:門番の焦燥〜うちのチワワ(※古竜)は噛みませんよ〜
ラジオ体操による強制宇宙旅行から無事に(?)生還した盗賊のリーダーを衛兵所に突き出すため、俺たちは最寄りの大きな商業都市へとやってきた。
しかし、街を囲む巨大な石壁の門前で、当然の如く足止めを食らうことになった。
「ひぃぃぃぃぃっ!! こ、古竜だぁぁぁっ!!」
「鐘を鳴らせ! 総員、戦闘態勢ェェェッ!」
関所を守る門番たちが、顔面を蒼白にしながら槍を構え、街の防衛装置である魔力砲が一斉にこちらを向く。
無理もない。いくら俺の後ろで「おすわり」をして尻尾を振っているとはいえ、見上げるほど巨大な漆黒のドラゴンが街にやって来たら、パニックになるのは当たり前だ。
「あ、いや、違います! こいつは俺のペットで、ちゃんと躾けられてて……!」
俺が必死に弁明しようとした、その時だった。
『異世界転生・召喚板』
170 名前:名無しの転生者
出たな、ペット連れ特有の入城拒否イベントwww
171 名前:名無しの転生者
そりゃラスボス級のドラゴン連れてたらそうなるわ草
172 名前:名無しの転生者
イッチ、ここは堂々と嘘を突き通すんだ!
173 名前:名無しの転生者
【安価】門番への完璧な言い訳 >>178
「やめろ! ここでふざけたら本当に魔力砲で蜂の巣にされるから!」
俺の切実な願いも虚しく、スレの勢いは止まらない。
174 名前:名無しの転生者
着ぐるみです
175 名前:名無しの転生者
俺の母ちゃんです
176 名前:名無しの転生者
乗り捨てのレンタカーです
(中略)
178 名前:名無しの転生者
門番の肩をポンと叩き、真顔で「何を言ってるんですか? こいつはちょっとデカくて鱗が生えてるだけの『血統書付きのチワワ』ですよ。ほら、震えてるでしょ?」と堂々と言い張る
「どこの世界に体長20メートルのチワワがいるんだよォォォォォ!!」
心の中で盛大にツッコミを入れたが、スキルの強制力はすでに俺の身体を支配していた。
俺は構えられた槍の切っ先をスッと避けると、震える門番の隊長の肩に気さくにポンと手を置いた。
「な、なんだ貴様……! 命が惜しくな――」
「何を言ってるんですか隊長さん?」
俺は最高に澄み切った真顔を作り、背後の巨大な古竜をビシッと指差した。
「こいつは、ちょっとデカくて鱗が生えてて口からブレスを吐く程度の、ただの『血統書付きのチワワ』ですよ。……ほら、怯えて震えてるでしょ?」
俺がそう言うと、ちくわは空気を読んだのか「プルプル……」と巨大な身体を小刻みに震わせ(その振動で周囲の地面に震度3くらいの地震が発生し)、「キュゥゥン♡」と可愛らしい鳴き声を上げた。
ピコォォォォォォンッ!!!!
脳内に響く確定音。
その瞬間、俺の放った「チワワ宣言」が強力な【概念改竄バフ】となり、門番たち、いや、この街にいるすべての者の脳内常識を強制的に書き換えた。
「……あ、あれ?」
門番の隊長が、ぽかんと口を開けた。
「なんだ……よく見たら、ただの少し大きめのチワワじゃないか」
「本当だ。血統書付き特有の高貴な鱗だなぁ。それに、あんなにプルプル震えて……可哀想に」
「おい皆、武器を下ろせ! ただの可愛いチワワちゃんだ!」
「「「チワワなら仕方ないな!!」」」
なんと、魔力砲は引っ込み、門番たちは一斉に警戒を解いて笑顔になり始めたのだ。
179 名前:名無しの転生者
認知の歪みエグすぎて大草原
180 名前:名無しの転生者
催眠アプリかな?
181 名前:名無しの転生者
「チワワなら仕方ない」wwwww
「ええええええ……」
俺は戦慄した。この『5ch』スキル、物理法則を捻じ曲げるだけじゃなく、人間の認知機能まで破壊できるのか。
すると、俺の後ろで一部始終を見ていたアリアが、またしてもハッとした表情で両手を組んだ。
「そうか……! 『チワワ』とは、対象の認識を歪め、己の姿を矮小な存在へと偽装する古代の幻惑魔法の名称! つまり、この血喰らい様は、盟主様の『チワワ』の魔法によって、門番たちの目には無害な小動物として映っているのですね……! なんて恐ろしく、慈悲深い大魔術!!」
「うん。もうお前の中ではそういうことでいいよ……」
「よし、通ってよし! チワワちゃんの粗相には気をつけてくれよな!」
笑顔で親指を立てる門番に見送られながら、俺たちは街の門をくぐった。
「ギュオォォォン♡(ちくわの鳴き声)」
嬉しそうに俺にすり寄ってくる、体長20メートルの超巨大チワワ(古竜)。
道行く人々が「あら、可愛いチワワね」「ちょっと鱗が鋭いけど血統書付きかしら」と微笑ましく見守ってくる異様な光景の中、俺の胃痛はさらに加速していくのだった。




