第12話:盗賊団襲来! からの……ラジオ体操第一
ベヒーモスの極上ステーキを平らげ、大自然の中でふかふかの落ち葉(と、ちくわの巨大な腹)をベッドにして一晩を明かした翌朝。
俺たちは次の街を目指して、森の街道を歩いていた。
目立つからという理由で、ちくわには「待て」をして森の上空を適当に飛んで索敵(という名の散歩)をしてもらっている。
「盟主様! 今日も空気が美味しいですね!」
アリアがご機嫌な様子で隣を歩く。エルフだけあって、森の中は本当に生き生きとしている。
平和だ。昨日の夜までの怒涛の展開が嘘のように、穏やかな異世界ファンタジーを満喫している。
……なんてフラグを立てたのが悪かったのか。
ガサガサッ!
「ヒャッハー! 止まりな!!」
前方の茂みから、汚い革鎧を着た武装した男たちが十数人、下品な笑い声を上げながら飛び出してきた。
手にはナマクラの剣や斧。そして顔には「俺たちはモブの盗賊です」と書いてあるような、見事なまでのテンプレ悪党ヅラだ。
「運が悪かったな兄ちゃん! 命が惜しけりゃ、その身ぐるみと……そっちの上玉のエルフを置いていきなァ!」
……うん、知ってた。
異世界の街道って、どうしてこうも治安が悪いんだろうか。
『異世界転生・召喚板』
155 名前:名無しの転生者
出たあああ! ヒャッハー系盗賊団!
156 名前:名無しの転生者
世紀末みてえなモブだなwww
157 名前:名無しの転生者
イッチ、朝の準備運動にはちょうどいいな。
158 名前:名無しの転生者
よし、じゃあ寝起きの体をほぐすか!
【安価】朝の清々しい迎撃方法 >>165
159 名前:名無しの転生者
普通に孫の手で殴る
160 名前:名無しの転生者
土下座して靴舐める
(中略)
164 名前:名無しの転生者
「俺に近づくと怪我するぜ」と中二病全開で警告
165 名前:名無しの転生者
満面の爽やかな笑顔で「新しい朝が来た!希望の朝だ!」と歌いながら、ラジオ体操第一の『大きく背伸びの運動』を全力で決める
「だからなんで戦闘中に体操させようとするんだよお前らァァァァッ!!」
心の中でのツッコミも虚しく、俺の体は自動的に「体操のお兄さん」のような完璧な姿勢で直立不動の態勢に入った。
「あァ? なんだテメェ、急に背筋を伸ばして……ビビってんのか!?」
盗賊のリーダー格が斧を振り上げ、俺に斬りかかってくる。
俺は満面の、それこそ歯がキラリと光りそうなほどの爽やかな笑顔を作り、高らかに歌い始めた。
「あたらし〜い朝が来たっ! きぼ〜うの朝だっ!」
「は……? なに歌って……」
俺は両手を体の前からゆっくりと上へ持ち上げ、胸を大きく開いた。
「腕を前から上に上げて、大きく背伸びの運動〜っ!!」
ピコォォォォォォンッ!!!!
清々しい朝の森に、チート補正の確定音が鳴り響いた。
その瞬間。俺が天に向かって突き上げた両手から、規格外の『重力反発エネルギー』が天を衝く光の柱となって立ち昇った。
「ヒャ、ヒャベェェェェェェェェ!?」
「大きく背伸びの運動」によって発生した局地的な重力逆転現象により、斬りかかってきたリーダーはもちろん、周囲にいた十数人の盗賊たちは、悲鳴を上げる間もなく「ロケットの発射」のような凄まじい速度で上空へと射出されていった。
ヒュウゥゥゥゥゥゥゥ……(星になる音)
166 名前:名無しの転生者
ラジオ体操wwwwwww
167 名前:名無しの転生者
盗賊団、見事なロケットスタートで大草原
168 名前:名無しの転生者
大きく背伸び(物理法則の背伸び)
169 名前:名無しの転生者
朝から腹痛えwww 致死量のラジオ体操やめろwww
「ふぅ……深呼吸〜」
俺は体操の動作に逆らえず、ゆっくりと腕を下ろして息を吐いた。
光の柱が消え、後には綺麗に整地された地面と、遥か上空でキラリと光る星(盗賊たち)だけが残った。
「め、盟主様……今のは一体……!?」
背後で見ていたアリアが、両手で口を覆って震えていた。
「あ、ああ、いや。これは俺の故郷に伝わる、朝の健康体操でね……」
「なんと……! 自らの肉体を天地の理と同期させ、宇宙の気を巡らせることで敵を天高く排除する……これが、盟主様の故郷の『タイソウ』! なんて恐ろしく、そして美しい武の極地……!」
アリアはキラキラとした目で俺を見つめ、見よう見まねで「腕を前から上に上げて……」とラジオ体操の真似事をし始めた。
エルフの美少女が真剣な顔でラジオ体操をしている姿は、なんとも言えないシュールさがあった。
「ギャウ!」
そこへ、上空の散歩から戻ってきた古竜のちくわがドスンと着陸した。
その口には、先程空へと射出された盗賊団のリーダーが、哀れな姿でくわえられている(※食べてはいません)。
俺の『5chスキル』による無慈悲なギャグ補正は、どんなシリアスな異世界の悪党も、一瞬でギャグ時空の犠牲者へと変えてしまう。
「……よし、街へ行こう。なんかもう、色々疲れた」
俺はため息をつきながら、神話級の孫の手を杖代わりにし、アリアとちくわと共に街道を歩き出すのだった。




