第11話:神話級・孫の手クッキング
「ギュオォォォォン!」
俺たちを乗せた古竜は、王都から遥か遠く離れた山脈の谷間へと着陸した。
すっかり日も落ちて辺りは薄暗く、今夜はこの大自然の中で野営をするしかなさそうだ。
「め、盟主様……! ここは私が、お世話係として夕食の準備をいたします!」
アリアが目を輝かせて立ち上がった。
先程のダイブ事件から、彼女の俺に対する好感度(と勘違い)は完全にストップ高を記録しており、何が何でも甲斐甲斐しく世話を焼きたいらしい。
「ドスンッ!!」
そんなアリアの前に、ちくわがどこからか狩ってきた獲物を誇らしげに放り投げた。
それは、路線バスほどの大きさがある四足歩行の巨大な魔物だった。
「おおっ、これは『ベヒーモス』! 大地を揺るがす特級の魔獣です! さすがはちくわ様、素晴らしい獲物です!」
アリアは自分の腰のナイフを抜き、嬉々としてベヒーモスの解体に取り掛かろうとした。
ガキィィィィンッ!!
「きゃあっ!?」
けたたましい金属音と共に、アリアのナイフが根元からへし折れてしまった。
「鋼をも凌ぐと言われるベヒーモスの毛皮……! 私の安物のナイフでは、傷一つ付けられません……!」
アリアが絶望したようにへたり込む。
どうやら、いくら上等な肉(?)でも、硬すぎて調理すらできないらしい。
『異世界転生・召喚板』
144 名前:名無しの転生者
お、キャンプ飯配信キタコレ
145 名前:名無しの転生者
ベヒーモス肉とか絶対美味いやつじゃんwww
146 名前:名無しの転生者
でも硬すぎて調理不可とか草
147 名前:名無しの転生者
イッチ、ここはアレの出番だろ。
【安価】最強の硬度を誇る肉の調理法 >>150
148 名前:名無しの転生者
ちくわの炎で黒焦げにする
149 名前:名無しの転生者
そのままかじりつく(ワイルド)
150 名前:名無しの転生者
深夜のテレビショッピング風に、「奥さん!お肉が硬くてお困りでしょう?でもこの『村長の孫の手』があれば……ホラこの通り!」とカメラ目線で言いながら肉を引っぱたく
「……また寸劇から入るパターンかよ!!」
誰もいない大自然のど真ん中で、俺は一人、頭を抱えた。
しかし、このままでは夕食抜きだ。やるしかない。
俺はコホンと一つ咳払いをし、目の前の虚空に向かって、満面の営業スマイルを向けた。
「そこの奥さん! 特級魔獣のお肉が硬くて、調理にお困りじゃありませんか!?」
「め、盟主様……? 奥さん……?」
アリアがポカンとしている。
「でもご安心ください! この『村長の孫の手(神話級)』があれば……ホラ、この通りッ!!」
俺は腰から黄金のオーラを放つ孫の手を引き抜き、流れるような動作でベヒーモスの鋼の肉体めがけてフルスイングした。
ドグシャァァァァァァァンッ!!!!!
ピコォォォォォォンッ!!!!(※スキル確定音)
凄まじい衝撃波が森を揺らし、ベヒーモスの巨体がボンッと音を立てて弾けた。
土煙が晴れた後に残っていたのは、なんと毛皮や骨が完璧に除去され、一口サイズのサイコロ状に切り分けられた、美しい霜降りの『極上ベヒーモス肉(A5ランク相当)』の山だった。
151 名前:名無しの転生者
ファッ!?
152 名前:名無しの転生者
解体から筋切りまでワンパンで完了してて草
153 名前:名無しの転生者
孫の手(万能調理器具)
154 名前:名無しの転生者
深夜の通販番組でこんなん実演されたら絶対買うわwwww
「なんということでしょう……!」
アリアが信じられないものを見る目で、霜降り肉の山に駆け寄った。
「あの絶対硬度を誇るベヒーモスが一瞬にして解体され、さらに肉質が絹のように柔らかく変化している……! まさに究極の錬金術……! 盟主様が先程唱えられた『テレビショッピング』とは、古代の錬金大魔術の詠唱だったのですね!!」
「うん、もう好きに解釈してくれ……」
アリアのガバガバな深読みに訂正を入れる気力もなく、俺は崩れ落ちた。
その後、ちくわが吹いた火でこんがりと焼かれたベヒーモスのサイコロステーキは、俺の人生で食べたどの肉よりも美味かった。
一口食べるごとに体力が全回復し、魔力ステータスが一時的にカンストするオマケ付きである。
「美味しいです、盟主様! こんなに素晴らしいお食事、エルフの王族でも口にできません!」
「キュルルン!(もっと食う!)」
満面の笑みで肉を頬張るアリアと、尻尾を振って肉の山を貪るちくわ。
美味しいご飯を食べられたのだから、俺の尊厳(と羞恥心)くらい、安い代償……なのかもしれない。




