第1話:安価で決める異世界サバイバル
「次! イチタ・スズキ! 水晶に手を触れよ!」
荘厳な王城の間。
異世界にクラスごと勇者召喚された俺、鈴木一太は、神官の言葉に従って魔力水晶に手を置いた。
クラスメイトたちが次々と『聖剣術』や『超魔導』といったチートスキルを開花させる中、俺の水晶には見たこともない文字列が浮かび上がった。
『固有スキル:5ch』
「ご、ごーちゃん……? なんじゃそのふざけた響きのスキルは! 攻撃魔法でもなければ、生産スキルでもないではないか!」
国王が顔を真っ赤にして怒鳴る。
「いや、俺に言われましても……」
「えー、鈴木君のスキル『ごーちゃん』だってー」
「ウケる。最弱じゃん」
「勇者のパーティにはいらないな」
クラスメイトたちからの冷たい視線。
そして国王から下されたのは、なろう系テンプレとも言える非情な宣告だった。
「ええい、目障りだ! そのような役立たず、城から叩き出せ! 辺境の森にでも捨ててくるのだ!」
◆◇◆
「……というわけで、開始5分で王城から追放されてゴブリンの森に捨てられたわけだが」
鬱蒼と茂る森の中。
俺はため息をつきながら、自分のステータス画面と、そこに輝く『5ch』というスキルを見つめていた。
念じれば発動するのだろうか。
俺は半ばヤケクソで、そのスキルをタップ(脳内)してみた。
ピコンッ!
目の前に、半透明のウィンドウが立ち上がる。
そこには、前世で親の顔より見たであろう、見慣れた掲示板のUIが広がっていた。
『異世界転生・召喚板』
【悲報】ワイ、異世界転生するも『5ch』という謎スキルで即追放される
1 名前:名無しの転生者
キタコレwww新しい配信者か?
2 名前:名無しの転生者
>>1 乙
また追放テンプレかよ草生える
3 名前:名無しの転生者
画質めっちゃいいな。どこの異世界?
4 名前:名無しの転生者
王様「ごーちゃん?」は腹痛かったwwww
「え……? なんだこれ」
俺の視界と連動しているのか、掲示板の住人たちには俺の状況が筒抜けらしい。
ていうか、こいつら全員「他の異世界に転生した連中」なのか!?
5 名前:名無しの転生者
イッチ(スレ主)、とりあえず周り見てみ。それ『迷いの森』系の初期マップだろ?
左の木の下に生えてる青い草、それ【マナポーションの原料】だから全部引っこ抜いとけ。
6 名前:名無しの転生者
>>5 マジレス有能
てかイッチの後ろ!ゴブリン来てるぞ!!
「えっ!?」
振り返ると、醜悪な顔をした緑色の小鬼――ゴブリンが棍棒を振り上げていた。
俺はただの高校生だぞ! 武器もないし、戦い方なんて――
7 名前:名無しの転生者
【安価】イッチの次の行動
>>10
8 名前:名無しの転生者
土下座
9 名前:名無しの転生者
逃げる
10 名前:名無しの転生者
ゴブリンの股間を全力で蹴り上げる
「ふざけんなお前らァァァァッ!!」
俺は半泣きになりながら、>>10の指示に従ってゴブリンの股間めがけて渾身の右足を振り抜いた。
ドゴォォォンッ!!
「ギギャァァァァァァッ!?」
凄まじい衝撃音と共に、ゴブリンは天高く吹き飛び、光の粒子となって消滅した。
……えっ? なんで?
11 名前:名無しの転生者
ファッ!?
12 名前:名無しの転生者
今のダメージ判定おかしくね?www
13 名前:名無しの転生者
あー、理解した。
イッチの『5ch』スキル、《《スレの安価(指示)を達成すると、その行動にチート級の補正がかかる》》バフ能力だわ。
14 名前:名無しの転生者
マジかよ最強じゃんwww
15 名前:名無しの転生者
よしイッチ、次はその辺の木の枝を拾え。
【安価】その木の枝で>>20
「……もしかしてこのスキル、使い方によってはとんでもないチートなんじゃ……?」
俺の異世界サバイバルは、顔も知らないネット民たちの『安価』に握られることになったのだった。




