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大勢の前で婚約破棄を言い渡されましたが、それは幸せへの道の第一歩でした  作者: 明衣令央


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第8話・喉を潰した呪いと精霊の加護


「アリア、着いたよ。ここだ」




 リカルドがアリアを連れてきたのは、フレルデントの王宮の裏手にある、森の中の館だった。


 リカルドが到着すると、館の中から何人もの人間が出て来て、膝をつく。


 そして最後に、かなり年配の老女が現れた。




「おやまあ、年寄り使いの荒い坊が来たよ。朝から緊急の使いを寄越して、年寄りを叩き起こして、ひどい坊だねぇ」




「もう、そんな事を言って! 僕が会いに来る事になって、嬉しかったくせに、素直ではないですね」




「おうおう、生意気に、坊が言うようになりおったわ」




 リカルドは老女に近づくと、抱き締めて頬に唇を寄せた。


 老女は楽しそうに声を上げて笑うと、リカルドの少し後ろ、ステファンやサリーナと並ぶアリアへと優しい目を向ける。


 老女の目は、リカルドと同じ明るい緑色だった。




「大ばば様、こちら、サリーナの妹で、アリア・ファインズ公爵令嬢。アリア、こちらは僕のひいお祖母様のロザリンド様。この国の最高薬師で、魔術士でもあられる方だ」




 アリアは驚きながらも、ロザリンドに笑顔でお辞儀をした。


 声が出ない事は、サリーナが代わりに伝えてくれた。




「そうかい、声が……。可哀想にねぇ。でも、心配するでないよ。お前さんは、大事にされている。いろんなものが、お前さんを守っているから、安心おし。喉も、必ず治るよ。さぁ、奥においで。診てあげよう」




 ロザリンドはそう言うと、ゆっくりと屋敷の奥へと戻っていった。




「ほら、アリア、行こう」




 リカルドに促され、アリアはロザリンドの後についていく。




「おやまぁ、これは酷い事になっているねぇ。やっかいな毒に加え、やっかいな呪いをかけられたものだ」




 ロザリンドはアリアの喉に手を触れ、喉の奥を確認し、顔をしかめて言った。




「このやっかいな毒と呪いは、本当なら確実にお前さんを殺すものだったようだね。まだこの呪いからは、憎しみの感情が感じられるよ」




 本当なら殺されていたと聞いて、アリアは血の気が引いた。


 自分は殺されなければならないくらいの罪を、犯してしまったのだろうか?


 そうでなければ、何故あの女性は……スザンヌは、自分をここまで憎み、殺そうとしたのだろう。


 震える体を、隣に座っていたサリーナが優しく撫でてくれた。




「あぁ、怖がらせてすまなかったねえ。だけど、安心しなさいな。お前さんは今、ちゃんと生きているだろう?」




 はい、と返事が出来ない代わりに、アリアは頷いた。




「それはね、お前さんを、精霊たちが守っているからなんだよ」




 それは一体、どういう事なのだろう?


 精霊たちに守られている……それが本当なら、とても光栄な事ではあるが、アリアにはそれが何故なのかわからなかった。




「精霊がどうしてお前さんを守ってくれるのが、不思議かい?」




 アリアは頷く事で返事をした。




「それはね、お前さんが精霊に愛されているからだよ。こんなに綺麗な魂は、久しぶりに見たよ。精霊たちは、綺麗なもの、清らかなものが好きなんだ。お前さんには見えないかもしれないが、私には見える。お前さんの周りには、いろんな精霊が居て、お前さんを守ってくれているんだよ。精霊たちの加護が毒の効力を弱め、本当なら死んでいたはずのお前さんを助けてくれたんだ」




 アリアは信じられない気持ちでロザリンドの言葉を聞いていた。


 ロザリンドの話を嘘とは思わなかったが、自分のどこにそんなにも精霊から愛される資質があるのだろうと思う。




「不思議だろうが、本当の事だよ。今も、お前さんの周りを飛び回っているのさ。お前さんの声が出るようになるのを、望んでいるようだね」




 声……。


 アリアは喉をそっと抑え、声を出してみようとした。


 だけど、針で刺されたような痛みを感じ、咳込んでしまう。




「かなり痛そうだねえ。無理をするでないよ。喉に優しい薬を作ってあげようね。後からダーフィルの館に届けさせるよ」




 ありがとうございます、と唇の動きだけで答えると、ロザリンドはまた優しくアリアを見つめた。




「呪いの方は……こちらは少し時間をおくれね。解く方法を探してみるよ。なぁに、坊がずっと大事に想っていた娘だ、この年寄りがちゃあんと治してやるさね」




「お、大ばば様っ!」




「え? 坊、もしかして、まだなのかい?」




 焦ったようなリカルドと、驚くロザリンド。


 その様子を見ていたステファンは派手に吹き出し、サリーナは俯いて必死に笑いを堪えていた。


 何があったのかわからないアリアだけが首を傾げ、周りを見回す。


 アリアは恋愛事にとても鈍かったのだ。




「こ、こほん……あー、そうさね、多分、そういうところも、精霊に愛されているところなのだろうねぇ。今は見えなくても、お前さんはいつか、周りを飛び回る精霊たちを見る事ができるかもしれないよ」




 自分の周りを飛び回る精霊たちを、いつか見てみたいとアリアは思った。


 そして、ロザリンドの他にも精霊たちが見える人は居るのだろうかと、ノートに書いて尋ねてみる。


 ロザリンドは優しく微笑むと、少し考えて口を開いた。




「そうだねぇ、私の知っている限り、二人居るねぇ……。精霊の姿を見られる者というのは、あまり居ないものなんだが、一人は、この坊だよ。この子には見えているし、お前さんと同じように精霊たちにとても愛されている……。そしてもう一人は……ウクブレストの、今の王だよ。あの小僧には、見えているようだねぇ……」




 リカルドが見えるというのは、なんとなく頷けた。


 アリアには精霊たちの姿は見えなかったけれど、リカルドは様々なものから愛される存在だと感じていたのだ。


 だけど、ウクブレスト王の名前が出た時、意外過ぎてアリアは驚いた。




「精霊が見える者、愛されている者は、他の者よりも魔力が強い事が多い。あのウクブレストの小僧は、だからこそお前さんを息子の妻にしたかったんだろうよ。だけど、こんなに傷つけて……あの小僧が王になってウクブレストは持ち直したかと思ったが……」




「大ばば様……」




「おや、すまないねぇ。おしゃべりが過ぎてしまったようだ。また坊に怒られてしまったよ」




 ロザリンドは楽しそうに笑い、またアリアを優しく見つめると、アリアの薬を作るために立ち去った。



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