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大勢の前で婚約破棄を言い渡されましたが、それは幸せへの道の第一歩でした  作者: 明衣令央


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第6話・フレルデントでの生活


 アリアが目覚めると、知らない場所だった。


 彼女は落ち着いた配色の家具や調度品で整えられた部屋で、柔らかなベッドで寝かされていた。


 ここはどこだろう、とアリアは首を傾げる。


 ベッドから降りて、そばにあったテーブルへと近づくと、そこには水差しとグラスが置かれており、グラスの下に一枚のメモが置かれていた。メモには、




『アリアへ。おはよう。ここは、私の嫁ぎ先の、ダーフィル公爵家よ。また様子を見に来るので、ゆっくりしていてね。 サリーナ』




 と書かれていた。


 どうやら気を失っていた間に移動させられていたらしい。


 アリアは、サリーナに迷惑をかけてしまったのではないかと思い、小さく息をついた。




「あら、アリア、起きたのね。おはよう」




 軽いノックの後、そっとドアが開けられて、サリーナが顔を覗かせた。


 アリアは唇だけを動かして、おはよう、と言う。




「気分はどう? あなたは昨日、驚いて気を失ってしまってね、それからさっきまでぐっすりと眠っていたのだけど……」




 サリーナはそう言いながら、筆談用のノートとペンをアリアに渡してくれた。


 アリアは受け取ったノートに、「大丈夫、気分は悪くない」と書き、サリーナに見せる。


 ノートを確認したサリーナは、安心したように笑った。




「そう? じゃあ、着替えて公爵様たちにご挨拶に行きましょう。それから食事をいただいて、この屋敷の案内をするわ。自分の家だと思って、のんびりしてくれたらいいからね」




 アリアは頷くと、身支度を整えた。






「アリア、久しぶりだね。いろいろと大変だったろうが、ここでゆっくりするといい。君の治療の事もいろいろと考えているから、安心しなさい。私たちはそのための協力を惜しまないから」




「そうよ、アリア。なんならこのままずっと居て、うちの娘になってくれてもいいのよ。そうしたら可愛い娘が二人になって、私も夫も嬉しいわ。フレルデントでゆっくりと体を癒して、心身共に元気になってね」




 ダーフィル公爵夫妻は二人とも、とてもアリアに好意的だった。


 ダーフィル公爵は、パールグレーの髪に緑の目、公爵夫人の方は艶やかな黒髪に、優しい茶色の目をしていた。


 サリーナの夫であるステファンは黒髪に緑の目なので、彼は両親の外見の特徴を半分ずつ受け継いでいるようだった。




 リカルド王子の従兄である、ステファンの父親のダーフィル公爵は、現フレルデント王の実弟だった。


 自国の王家からはひどい仕打ちを受けた自分が、他国の王家にも連なる方々からこんなにも優しくされて良いのだろうかとアリアは思ったが、ダーフィル公爵夫妻の優しさに心から感謝をした。




『ありがとう、ございます』




 唇の動きと心を込めたお辞儀でしか、ダーフィル公爵夫妻に感謝の気持ちを示せられなかったが、思わず零れたアリアの涙に、ダーフィル公爵夫妻は胸を打たれたようだった。




「アリア、君の喉はすぐには癒えないかもしれないが、ここでゆっくりと治しなさい。大丈夫、絶対に良くなるから、ね」




 隣に立つサリーナに優しく肩を抱かれながら、アリアは何度も頷いた。


 そして、不甲斐ない自分がこんなに優しくしてもらえるのは、優しい両親や姉であるサリーナ、そして彼女の夫であるステファンのおかげなのだろうと思い、彼ら全てに感謝せずにはいられなかった。








「ねぇ、アリア……あなた、昨日の事は、どのあたりまで覚えているの?」




 食事が終わった後、アリアはサリーナの部屋で、お茶をいただいていた。


 そこで尋ねられ、彼女は少し考えてノートにペンを走らせた。


 アリアが覚えている事は、気づいたら馬車が停車していて、サリーナの夫であるステファンが迎えに来てくれた事と、そこにフレルデントの王太子であるリカルドの姿があった事。




「それだけ?」




 アリアはまた少し考えて、ノートにペンを走らせた。


 あれは自分の気のせいかもしれない……そうも思ったが、実際に目にしたような気もするのだ。




『ドラゴンが、いた?』


 


 アリアがノートにそう書いてサリーナに見せると、彼女はこくりと頷いた。




「ええ、居たわよ、ドラゴン。グリーンドラゴンね。あなたはあのドラゴンを見て、驚いて気を失ってしまったの。まぁ、突然目の前にドラゴンが現れたら、そうなってしまうのも無理はないわよね。ウクブレスト王国では、ドラゴンを見る機会なんてないもの」




 サリーナはそう言うと、苦笑した。




「だけど、そのおかげで簡単にこの屋敷まで運んでもらえたの。それは、とてもありがたかったわ」




 ドラゴンという生物が存在している事はアリアも知ってはいたが、実際に目にしたのは初めてだった。


 サリーナの言う通り、ウクブレスト王国では目にする機会はないが、フレルデントでは、良く見かけるものだろうか、と思う。




『この国は、ドラゴンを飼っているの? あのドラゴンは、ダーフィル公爵家のドラゴンなの?』




「いいえ、違うわ。あのグリーンドラゴンは王家のもの……ううん、リカルド王子のお友達、らしいわ」




 アリアは驚いた。


 ドラゴンがリカルドの友達だという事にももちろん驚いたのだが、それ以上に、あのドラゴンと共にリカルドがあの場に居たという事は、リカルド自らが、アリアたちを迎えに来るために、あのドラゴンを連れて来たという事になる。




『ステファン様が、リカルド王子にお願いされたのかしら?』




 ノートに書いてサリーナに尋ねると、サリーナは苦笑して首を横に振った。




「違うわ。リカルド王子が、自らドラゴンを駆って、私たちを迎えに行くと言われたのよ」




 アリアはまた驚いた。何故、と思わずにいられない。


 アリアが首を傾げると、




「多分、もうすぐわかるわよ」




 とサリーナはアリアを優しく見つめ、言った。


 サリーナが言った、その「もうすぐ」は、すぐにきた。


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