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大勢の前で婚約破棄を言い渡されましたが、それは幸せへの道の第一歩でした  作者: 明衣令央


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第5話・フレルデントからの迎え


 いつの間にか眠っていたアリアが目を覚ますと、馬車は停止していた。


 馬車を降りているのか、向かいに座っていたはずの姉のサリーナの姿はなく、アリアは首を傾げる。


 病み上がりのアリアの体調を考え、フレルデントにはゆっくり向かおうと言っていたから、今日宿泊する予定の町か村に着いたのかもしれないと思ったが、それならどうして姉は自分を起こしてくれなかったのだろう。


 窓から外を見てみると、まだ日は高く、この場所は町でも村でもなく、街道の途中のようだった。




「あら、アリア、起きたのね」




 馬車を降りて探しに行こうかと考えていると、サリーナが馬車に戻ってきた。


 筆談用のノートに、ここはどこなのかと書いて尋ねると、サリーナは困ったように笑い、言った。




「ここは、ウクブレストの領地を出て、フレルデントの領地に入ったところよ。もう少し行ったら、少し大きな村があって、今日はそこで一泊しようと思っていたのだけれど……その、迎えに来るっていうから、ここで馬車を止めて迎えを待っているの……」




 アリアは首を傾げた。


 迎えに来るのなら、こんな道の真ん中ではなく、もう少し進んだところにある村まで行って待った方が良いのではないかと思う。




「あのね、アリア……。私はちゃんとステファンに、アリアを連れてゆっくりと戻るから、って手紙を書いたのよ。でも、心配だから迎えに行くって、先程鷹が手紙を運んできて……」




 サリーナの夫は、ステファン・ダーフィル公爵子息だ。


 姉たちは仲が良いのだなぁと微笑ましく姉を見つめると、彼女は、ふう、と悩まし気にため息をついた。




「やっぱり、わかっていないわよね」




 困り顔の姉を見て、アリアはどうしたのだろうとまた首を傾げた。


 もしかして自分の看病で長く実家に戻っていたから、夫であるステファンに叱られてしまったのだろうか、と思う。


 もしもそうなら――アリアは彼にいろんな意味で謝らなければと思った。


 サリーナの夫であるステファンは、フレルデントの王太子リカルドの従兄であり、右腕とも言える存在で、リカルド王子と共に、あのパーティーにも出席していたのだ。


 ディスタルとスザンヌに嵌められてしまったとはいえ、彼らを歓迎する場で失態を犯した自分は、姉の事も含めて彼に誠心誠意謝るべきだとアリアは思った。


 そして、許されるなら、リカルド王子にもお詫びしたい。




「サリーナ様、来られたようです」




「わ、わかりました。アリア、あなたは少しここで待っていてねっ」




 御者の男に呼ばれたサリーナは、アリアを置いて慌てたように馬車を降りていった。


 姉の様子がおかしいような気がするが、どうしたのだろう?


 そんな事を考えながら、大人しく馬車の中で待っていると、ゴウ、と音を立てて激しい風が吹き、地震でも起きたかのように馬車が激しく揺れた。


 馬車を引く馬の嘶きがまるで悲鳴のように耳に届き、窓から入ってきていた光が、まるで闇に包まれたかのように消える。


 何があったのだろう?


 外に出て行った姉は無事だろうか?


 馬車の中に居るようにとサリーナは言ったが、アリアは心配になって馬車の扉を開けて外に出た。




「アリア!」




 馬車から降りると、サリーナがアリアの名を呼んだ。


 どうやらサリーナは馬車を降りたところに居たようだった。




「やぁ、アリア。だいぶ元気になったようだね」




 サリーナと隣には、体格のいい男性が居た。彼はサリーナの夫であるステファンだった。


 ステファンはアリアを優しく見つめると、




「アリア、いいかい、かなり驚くと思うんだけど……落ち着くんだよ、いいね?」




 と言い、どういう意味なのだろうと、アリアは首を傾げる。




「アリア……アリア・ファインズ?」




 あまり耳にした事のない声が聞こえ、アリアはそちらへと顔を向け、目を見開いた。


 どうしてここに、彼が居るのだろう?




「やぁ、アリア。ステファンと一緒に、迎えに来たよ。ようこそ、フレルデントへ」




 そこに居たのは、フレルデントの王太子、リカルド・フレルデントだった。




「アリア、体調はどうだい?」




 リカルドは優しく、気さくにアリアに話しかけてきてくれた。


 だが、アリアは何故この国の王太子が自分を迎えに来るのかがわからずに、混乱して固まってしまっていた。


 だが、自分を心配そうに見つめ、優しく声をかけ続けてくれるリカルドを見ているうちに、アリアは少し落ち着いてきた。


 どうして彼が自分を迎えに来てくれたのかはわからないが、大丈夫だという事を伝えて、彼に謝らなければならないと思った。




 だが、声が出ない今の自分が誰かに何かしらを伝えるには、筆談用のノートとペンが必要だった。


 馬車の中に置いてきたそれらを取りに戻ろうとして、アリアはふと、こんなに暗くて文字が読めるだろうか、と思う。


 そして、まだ日は高かったはずなのに、どうしてこんなに暗いのだろうとも。




「アリア、どうしたんだい?」




 リカルドは、アリアの記憶では確か、確か綺麗な金色の髪に、明るい緑の目をしていたはずだ。


 なのに、今は何かの影になって、その金色は本来の輝きを隠されていた。


 ここは街道の途中……影になるような建物など、なかったはずだ。


 では、この影は、何の影なのだろう?


 アリアはリカルドの背後の、大きな影を作っているモノへと、おそるおそる目を向けた。


 そして――。




「っ……」




 喉を潰されて声が出ない中、精一杯の悲鳴を上げて、アリアは気を失った。


 リカルドの後ろに居たモノは、乗ってきた馬車の十倍はあるであろう、巨大なドラゴンだったのだ。


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