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大勢の前で婚約破棄を言い渡されましたが、それは幸せへの道の第一歩でした  作者: 明衣令央


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第48話・ウクブレストからの報せ


 ウクブレストからの使者が、戦争を引き起こした首謀者であったディスタルを処刑した事を伝えてきたのは、ディスタルをウクブレストに戻して、二週間後の事だった。


 この情報はフレルデントだけでなく、他国にも伝えられ、ウクブレスト王は周りの国々に誠心誠意の謝罪をした。


 他国からは、ディスタルの死について当然の報いだという声が多く、父親であるウクブレスト王への責任問題や損害賠償を求める声も上がっている。


 その声に、誠実なウクブレスト王は一つずつ応えていくのだろう。




 確かにディスタルは大きな罪を犯したが、その死の真相は、ウクブレスト王によって、フレルデントだけに正確に伝えられていた。




 ウクブレスト王と王妃、ターニアを助け出したフレルデント軍が去った後に、王宮の地下から瘴気が吹き出してきた事。


 その瘴気が外に漏れたら、国民に犠牲が出ると考えられた事。


 瘴気を抑えるために、ウクブレスト王と王妃が結界を張っていると、ターニアがディスタルを連れて戻ってきた事。


 ディスタルが、この瘴気にはスザンヌが関わっていると言い、自分が決着をつけると言い出した事。


 ディスタルは、一時はスザンヌに体を奪われてしまったが、最後には己の中にスザンヌを封じ込めた事。


 ディスタルが死ねば、スザンヌは新たな体を探し、瘴気を放つ可能性がある事から、ディスタルはウクブレスト王の魔法により、生きたまま氷の中に封印され、ウクブレスト王宮の地下で眠っている事――。




 ウクブレスト王家は、今後、スザンヌを己の中に封じ込めたディスタルの眠りを守っていく事を使命とし、そして手紙の最後には、ディスタルは道を間違えてしまったが、ディスタルなりにウクブレストの事を愛していたはずだと綴られていた。




「リカルド、これをお前にという事だ。大変役に立ったと書かれている。あと、壊れてしまって申し訳ないと……」




 手紙と共に入っていた物を、フレルデント王はリカルドへと差し出した。


 それは、十字架のペンダントだった。




「ディスタルが何か抱えていたようだったので、御守り代りに渡しておいたんです。多少の悪い物は払えると思ったので。役に立ったのなら、良かったです」




「リカルド、お前、もしかして知っていたのか?」




 フレルデント王に問われ、リカルドは頷いた。




「えぇ。ディスタルから、ウクブレストで何かが起こっているかもしれないという事は、聞いていました」




「何故、黙っていた?」




「ディスタル自身から、ウクブレスト王やターニアから助けを求められたら応じるようにと言われたのですが、それ以外は関わるなと言われましたので……。それに、あの時ディスタルが何かを言っても、誰も信じなかったでしょう?」




 確かに、捕えたディスタルを処刑するべきだという話まで出たのだ。


リカルド以外、誰もディスタルの話を聞く者など居なかっただろう。




「あの時、この結末が予想できなかったわけじゃなかった。俺は、どうすれば良かったんだろう……」




 ぽつりと呟いたリカルドは、壊れてしまった十字架のペンダントを握りしめ、苦笑した。








 ウクブレストからの報せを聞いた後、リカルドは一人姿を消した。


 アリアはリカルドを探し、自分と彼の部屋――寝室で彼を見つけた。


 リカルドはベッドに体を投げ出し、両腕で顔を覆っていた。




「リカルド様……」




 そっと声をかけると、




「アリア、どうしたんだい?」




 両腕で顔を覆ったまま、リカルドは返事をした。


 彼は泣いているのかもしれない。


 声をかけない方が良かっただろうかとも思ったが、すでに声をかけてしまったアリアは、そのまま会話を続けた。




「大丈夫、ですか?」




「あぁ、大丈夫だよ」




 リカルドはそう言ったが、全くそうは見えなかった。


 彼はベッドに横になって、顔を覆ったままだったから。


 だけど、それでいいとアリアは思った。


 ただ、今は彼のそばに寄り添いたいと、そう思った。




「そばに居ても、いいですか?」




「……いいけど、かっこ悪い姿を、見る事になるよ?」




「構いません」




「今の俺は、君に気を遣えないかもしれないし、構ってあげられないかもしれない……。乱暴な事を言ってしまうかもし、してしまうかもしれない……。君に優しく、できないかもしれない」




「構いません。それでも、そばに居たいです」




 アリアがそう言うと、リカルドは苦笑した。


 体を起こし、腕で乱暴に目元を拭う。




「ほら、かっこ悪いだろ? 呆れたんじゃないか?」




「呆れません」




「本当?」




「えぇ」




 アリアが頷くと、リカルドは腕を伸ばした。


 来て、と言われるまま、アリアはリカルドの手に自分の手を重ね、そのまま乱暴に引き寄せられ、ベッドに押し倒された。




「ほら、優しくできない」




「それで気が紛れるなら、構いません」




「アリア……君は純粋すぎる……あと、俺に甘過ぎだ」




「そんな事ありません。それに、甘いというなら、リカルド様もです。あなたの方が私に甘過ぎで、とても優しい……」




「アリア……」




 力を抜いたリカルドの体を、アリアは抱きしめた。




「リカルド様は、時々ご自分の事を、俺って言いますね」




「あぁ、気づいてた? 感情が高ぶった時は、自分の事を、俺って言ってしまうみたいなんだ。気をつけてはいるんだけどね」




「そうなんですね、覚えておきます。じゃあ今は、感情が高ぶってらっしゃるんですね。私はそばにいますから、安心して、心を休めてください。悲しいのなら、泣いてください……。だってあなたは……」




 大切なご友人を、失われたのですから。




 そう言って背中をぽんぽんと撫でると、アリアの肩に顔を埋めたリカルドは、ありがとう、と呟いた。

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