表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
大勢の前で婚約破棄を言い渡されましたが、それは幸せへの道の第一歩でした  作者: 明衣令央


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
42/49

第42話・後悔


 ディスタルの身柄は、三日後にウクブレストに引き渡される事になった。


 戦いがあった国境あたりまで、ウクブレスト側がディスタルを迎えに来る事になっている。


 リカルドがそれをディスタルに伝えるために、彼に与えた部屋を訪れると、ディスタルはベッドの中で目を閉じていた。


 眠っているわけではない事は、彼の口元が笑みを浮かべている事が物語っていた。


 随分楽しそうだ、と思いながら、リカルドはディスタルに声をかけた。




「ディスタル、三日後にウクブレストに君を引き渡す事になった」




 リカルドがそう言うと、ディスタルは目を開け、リカルドを見た。




「おい、リカルド。俺は、ウクブレストに戻れるのか?」




「あぁ」




「そうか。ありがとう。礼を言う」




 ディスタルは少し目を細めて笑った。


 あぁ、まるで憑き物が落ちたような顔をしている、とリカルドは思った。


 彼の口元の笑みといい、今の憑き物が落ちたような笑みといい、彼にこんな表情をさせているものに思い当たり、ため息をつく。




「ディスタル、アリアの歌を聴いていたのか?」




 アリアは、先ほどまで行っていた、ディスタルの処遇をどうするかという会議には、出ていなかった。


 彼女はフレルデント王宮に戻って来てから、疲れているにもかかわらず、ずっとロザリンドの薬草園で歌っていた。


 今回の戦いで、ウクブレスト兵の治療に、多くのポーションが使われて、蓄えがなくなってしまっため、新たにポーションを補充しなければならない。




 また、彼女はディスタルやスザンヌに利用され、傷ついたウクブレスト兵を憂いていた。


 だから、良い薬草が育ちますように、良いポーションが作れますように、傷ついた人たちの怪我が早く良くなりますように。


 そんな祈りを込めて、彼女はずっと歌っているのだ。




 アリアの歌の効果は、薬草園だけではなく、彼女の歌声を耳にした者全てに届いていた。


 傷ついたウクブレスト兵は、少しずつ回復に向かっているはずだ。


 そしてアリアの歌声は、ディスタルに貸し与えているこの部屋にも届いていた。




「俺は、この歌声を消そうとしたのだな」




「そういう事、だね」




「アリアは……この癒しの歌声は、俺のものだったのに……。俺は自らこの歌声を手放してしまったのだな」




「後悔しているとしても、返す気はないからな」




 そう言って睨みつけると、同じようにディスタルもリカルドを睨みつけてきた。




「返してもらうつもりなど、なかったさ。俺は、お前からアリアを奪うつもりだった」




「そんな事はさせないさ。それに、それができないのは、さすがにもう理解できただろう?」




 ディスタルが再びアリアを奪おうとすれば、リカルドが手を下すまでもなく、ディスタルは今度こそドラゴンたちに八つ裂きにされるだろう。


 それがわかっているのだろう、あぁ、とディスタルは頷いた。




「ところでディスタル……。どうしてウクブレストに戻りたいと言い出したんだ?」




 リカルドがそう問いかけると、




「故郷に戻りたいという気持ちがおかしいか? 普通の事だと思うが?」




 と、ディスタルは、はぐらかそうとした。


 だがリカルドはそれを見抜き、言えよ、と理由を促す。


 ディスタルの性格なら、捕虜になった時点で自ら命を断っていてもおかしくない。


 それが、彼は大人しく捕虜となり、ウクブレストに戻りたいのだという。


 何かあるとしか思えなかった。


 ディスタルは暫くの間考え込んだが、やがて頷き、口を開いた。




「もしも今後……父やターニアが助けて欲しいと頼んできたら、手を貸してやってほしい」




「あぁ、わかった」




 意外な事を言われ、リカルドは驚いたが、頷いた。


 そして、続けられた言葉を聞いて、さらに驚く。




「だが、それ以外は、もう関わるな。何もしなくていい」




「おい……本当に、一体があった……?」




「リカルド……おそらく、今、ウクブレストは……」




「え?」




 ディスタルの話を全て聞き終えたリカルドは、真剣な表情で、わかった、と頷いた。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ