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透き通る雨に揺られて  作者: YUKI
《第2章》この気持ち
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【第6話_真っ直ぐな思い】

暗いロッカーの中。

さっきよりも空気が重く感じる。

「……っ、は……」

浅い息が、どんどん乱れていく。

「ちょ、待って……本当に苦しそうじゃん」

すぐ近くで焦った声が響く。

「だい、じょ……ぶ……だから……」

そう言った瞬間、身体から力が抜けるように沈む。

「大丈夫って言うやつほど大丈夫じゃないんだよ…!」

腕を強く支えられる。

その手の震えで、どれだけ心配してるかすぐわかる。

「……なんで隠すんだよ。無理しても意味ないって…」

声が低くて、ほんの少しだけ怒ってる。

でも、その奥にあるのは“心配”だけ。

「……寒い……」

ぽつりと落ちた弱い声。

「……っ」

一瞬黙って、それからすぐに腕を回してくる。

「ほら、こっち向いて。狭いけど、少しでも楽になるようにするから」

ぎゅっと抱き寄せるってより、支えるために近くなる距離。

息と息がふれるくらい近い。

「……もっと寄っていいよ。震えてる」

静かな声で、優しく促される。

「……ごめ、んな……」

力のない声。

「謝んな。…心配させたくない気持ちはわかったから」

小さく息を吐く気配。

ほんの少しだけ、ほっとしたような音。

「でも、倒れられるより…頼ってほしい」

その一言は、暗いロッカーでもちゃんと伝わるほど真っ直ぐで。


ロッカーの外から、遠くで誰かの足音がした。

「……っ、誰か来たかも…!」

透が顔を上げる。

腕の中で、雨の呼吸はまだ浅い。

「透ー!?雨ー!?そこにいる!?」

担任の慌てた声が近づいてくる。

透がドアを拳で叩く。

「ここです!ロッカーの中に閉じ込められてます!」

「今、開けるからな!」

金属のぶつかる音、カギをこじ開ける音。

外の空気が流れ込んでくる。

眩しい光に、雨がわずかに目を細めた。

「……よかった、お前ら無事で……って雨、大丈夫か!?」

先生が駆け寄ってくる。

透は少し強い声で言う。

「体調悪いの、隠してたみたいで…呼吸も乱れてます」

「そんな無理したのか……保健室行くぞ!」

肩を貸されながらロッカーから出る瞬間。

ふらついた雨を、透が反射的に支える。

「わっ……」

倒れかけた身体を、透の腕がしっかり受け止める。

「ごめ……っ」

弱い声が、透の胸元に落ちる。

「いいよ。しばらく俺に寄りかかってて」

優しく言われて、雨は少しだけ目を閉じる。

「透……」

名前を呼ぶ声はかすれていたけど、ちゃんと届く。

「うん。ここにいる」

短く、それだけ。

でもその言葉は、不安ごと包み込むように温かかった。

保健室への廊下を、透はゆっくり歩く。

腕の中の雨の体温が弱くて、だからこそ絶対離さないと決めたような表情で。

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