【第4話_君だけを】
放課後、チャイムが鳴ると同時に、担任がひょいっと顔を出した。
「今日の掃除当番、雨と……あ、水瀬。掃除用具ロッカーも頼むな」
「……は?」
雨は思わず眉をひそめる。
(よりによって……こいつと二人かよ)
透は嬉しそうに小さく頷いた。
「よかった、雨くんと一緒だ」
雨は思わず心臓が跳ねるのを感じた。
ふざけんな、そんな顔すんな……ドキッとするだろ。
仕方なく二人で掃除用具ロッカーへ向かう。
中は空っぽで、ほこりも少しだけ。
透がしゃがんで棚を拭きながら、ふと雨を見上げる。
「ここ、けっこう汚れてるね。雨くん、上の方お願いしてもいい?」
下から見上げる透の瞳は、相変わらず透き通っていて、
雨はほんの一瞬、視線をそらす。
(なんだよ……近いんだよ……)
と、その瞬間——。
ゴゴッ……!!
校舎が小さく揺れ、
ガタンッッ!!
掃除用具ロッカーのドアが勢いよく閉まった。
「ちょ、ちょっと……!」
「うわっ……閉まっちゃったね」
暗い、狭い、二人きり。
透がすぐに雨の腕を掴む。
「大丈夫? 怖くない?」
その声が、いつもより少し低くて、優しくて……
雨は心臓が爆発しそうだった。
「べ、別に……怖くねぇよ」
(嘘だ。こいつが近すぎて心臓がヤバいだけ)
透は雨の顔を覗き込み、ふっと微笑む。
「ほんとに? 声、震えてるよ?」
「……っ、してねぇ……!」
逃げ場がない。
透が自然と一歩近づくたび、雨の呼吸が乱れていく。
「雨くん。大丈夫。俺、ここにいる」
その距離、その声、その手の温度。
全部が、雨の心をぐしゃぐしゃにかき乱す。
ほんの数分のはずなのに、
二人で閉じ込められたロッカーの中は、永遠に続くみたいに甘かった。




