【第2話_嫉妬、?】
転校してきて、まだ数時間しか経っていないのに、
透は、驚くほど自然にクラスの輪に溶け込んでいた。
「水瀬くんってさ、マジで優しいよな〜」
「ノートめっちゃ綺麗じゃん!教えて!」
「え、すごい声いい!読んで読んで!」
どこを見ても、透の周りには人が集まってる。
透は困ったように笑いながらも、
一人ひとりに丁寧に返していた。
その様子を、雨は窓側の席で横目に見る。
(……好きにしろよ。オレには関係ねぇし)
そう思って教科書を開くけど、
目が文字をまったく追わない。
透の笑い声だけ、やたらと耳に残る。
「水瀬くん、今日一緒に帰ろ?」
「寮、案内してあげるよ!」
女子の声。
透は戸惑って笑って答える。
「え、あっ……うん、大丈夫だよ」
その瞬間、胸の奥がぎゅっとしぼられた。
理由なんて考えたくもない。
けど、気づいたら肩に力が入ってる。
(……別に。オレは誰と帰ろうが興味ねぇし)
机の端に爪が食い込む。
気持ちを振り払うように立ち上がろうとした時、
背後からふっと声がした。
「雨くんって、いつもそんな顔してるの?」
振り向けば、透がいた。
さっきまでクラスの中心にいたはずなのに。
雨は反射的に言い返す。
「……は?どんな顔だよ」
透は少しだけ首をかしげ、
困ったように笑う。
「なんか……ずっと寂しそう」
心臓が、跳ねた。
(一番言われたくねぇこと言ってくんな……)
「寂しくなんか——」
言いかけたところで、
透の姿がまた別の子に呼ばれて遠ざかる。
「透、こっちこっちー!」
透は「ごめん、あとでね!」と笑って走っていった。
雨はその背中を見つめて、
自分の胸のざわつきを押し殺す。
(なんで、オレが……)
窓から差し込む光が、
透のいた場所だけをやけに明るく見せていた。
その光に、
雨はほんの少しだけ目をそらす。
(……マジで、なんなんだよ、お前)
——その感情が嫉妬だなんて、
雨はまだ認めるはずもなかった。




