【第1話_透き通る光】
教室のざわつきが、いつもより少し高い。
チャイムが鳴る前から、生徒たちはそわそわしていた。
「今日、転校生くるらしいぜ」
「どんな子なんだろ〜」
「うちのクラスって珍しくない?」
そんな声が耳に入ってくるけど、
雨は窓にもたれたまま、聞こえないふりをしていた。
興味なんて、なかった。
どうせすぐ、こっちを“ヤンキー”って目で見るようになる。
今までそうだったみたいに。
ガラッ。
扉が開いて、担任が入ってくる。
「じゃあ紹介するぞ。今日からこのクラスに入ることになった——」
その後ろに、ひょこっと姿を現したのが透だった。
淡い光に透けるような髪。
整った顔立ち。
そして、どこか人懐っこい雰囲気。
教室が一瞬で明るくなった気がした。
「水瀬透です。よろしくお願いします」
その声は驚くほど澄んでいて、
まるで名前みたいに“透き通る”感じだった。
周りの女子がざわっとした。
「かわいい…」
「絶対いい子じゃん」
「人気出そう〜」
雨は興味なさそうに窓の方を向いた。
けど、なぜか耳だけが彼の声を追ってしまう。
「席は……雨の隣しか空いてないな」
その瞬間、教室の空気が変わった。
「え、あの雨の隣……?」
「かわいそ」
「初日から厄介じゃね?」
透の足が一瞬止まる。
——どうせ避ける。
他の転校生も、最初だけで結局同じだった。
そう思って目をそらそうとした時、
「よろしくね、雨くん」
ふわっと笑顔が向けられた。
まっすぐで、濁りがなくて、
“嫌がってる気配”がまったくない笑顔。
雨は思わず固まった。
なんでだよ。
なんでそんな顔向けるんだよ。
透は、周りを気にしないみたいに
自然な動きで椅子に座り、机を整える。
「…名前、綺麗だね。雨って」
またあの透き通った声。
距離が近いわけじゃないのに、なんか心に届く。
雨はそっぽを向き、ぼそっと返した。
「……別に」
透は小さく笑う。
「そっか。でも僕、好きだな」
その瞬間、
雨は胸の奥がきゅっとなるのを感じてしまった。
初対面なのに。
名前しか知らないのに。
“この子は、他のやつと違う”
そんな予感だけが、
静かに心の底で灯った。




