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【第16話_位置情報】[透目線]
透はそっと手を離し、リビングに向かう。
カーテンを開けると、外はまだ小雨が残っていて、街路樹の葉に雨粒が光っている。
(……気をつけないと)
スマホを取り出し、通知欄に目をやる。
何も届いていない——と思った瞬間、透の心臓がぎくっとなる。
“位置情報の履歴”
小さな通知が無言で画面に浮かび上がる。
「……やっぱり、親か」
透は深呼吸して画面を閉じる。
雨には余計な心配をかけたくない。
だから、普通に笑顔を作って朝ごはんの準備を始める。
そのとき、雨が布団から顔を出して言った。
「透、なんかそわそわしてるね…」
透は一瞬ぎくりとしたが、すぐに笑った。
「え?そ、そうかな…ただ、ちょっと朝が早くて」
その言葉に、雨は小さく首を傾げる。
でも透の必死の笑顔に、問い詰めるのはやめたようだ。
「……じゃあ、今日も一緒に学校まで行く?」
透は頷き、心の奥で決意する。
(今日は普通に、何も起こらない一日にする……でも、何かあったら雨を守らなきゃ)
外に出る前、透はふとスマホを手に取る。
通知はもう消えている。
でも、心の片隅で、今日一日“安心できない何か”が隠れていることを感じていた——
それは、雨にとってはまだ知る由もない、
透の小さな戦いの始まりだった。




