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透き通る雨に揺られて  作者: YUKI
《第2章》この気持ち
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【第9話_胸の中】

玄関を入って、ふたりが靴を脱ぐ。

その瞬間だった。

ふらっ──。

「っ……!」

雨の視界が揺れる。

さっきから続いていた頭痛が一気に強くなり、息が浅くなる。

透がすぐに異変に気づく。

「雨?」

返事をしようとしても、声にならない。

ふっと膝から力が抜ける。

ぐらり。

──落ちる、と思った瞬間。

強く、しっかりと誰かの腕に引き寄せられた。

「ちょっと!雨っ!!」

透の胸に倒れ込む形になり、雨はかろうじて腕を伸ばすけど、掴めるものは透のシャツだけ。

「ご、ごめ……」

「謝るな。立ってられないじゃん…!」

焦った声。

でも優しくて、必死で。

雨の心臓は体調よりも、透の腕の温度のせいで速くなる。

透は一度も手を離さず、ぎゅっと抱き締めたまま体を支える。

「無理したの?ずっと」

雨は否定しようとする。でも言葉が出ない。

「……隠さないでよ。俺、雨が倒れるのなんて…見たくない」

そう言って、透は雨の額にそっと手を当てる。

「熱あがってる……」

一瞬で表情が変わった。

今度は優しさだけじゃない。

“守りたい”がむき出しになった顔。

「もう立たなくていい。俺が運ぶから」

「む、無理……っ」

「無理じゃないよ。ほら、腕まわして」

透の声がいつもより低くて、甘くて、命令みたいで。

雨は逆らえない。

震える腕で、透の首にそっと手を回す。

その瞬間。

「……いい子」

耳元で落ちたそのひとことに、雨の体温は一気に上がる。

透はひょいっと抱き上げるようにして、雨の身体を支えたまま部屋の奥へと歩き出した。

「ベッド、どっち?」

胸の中、揺れるような安心感。

雨は小さく指さすだけで精一杯。

透はその方向に向かいながら、小さく笑った。

「倒れるまで隠すなんて、ほんと…雨らしいよね」

その言い方は、優しさと好きが混ざった音。

ベッドまで運ばれた雨は、透の腕から離れるのが少し寂しく感じてしまう。

でも──。

透はすぐ隣にしゃがみ、雨の頬に手を添えた。

「もう大丈夫。俺が見るから」

距離が近い。

息がかかる。

鼓動が重なる。

倒れたはずなのに、雨の胸はさっきよりずっと熱くて苦しい。

──ここから、さらに甘くなる予感しかしない。

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