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第2話 登校

それから、俺たちは、ここまで何があったかをお互いに報告しあった。


どうやら、萌香も俺が魔王を討伐したと同時に白い光に誘われて、地球に戻ってきていたらしい。


ただ、萌香は俺よりも目を覚ますのがだいぶ早かったらしく、俺が迎えに来るまで、ずっと、俺の心配をしてくれていたらしい。


「……なるほど。それは、すまなかった………それで、今は登校してる途中か?」

「そう!地球での恭平の家知らないし、学校行ったら会えるかなって思って……」


異世界に転移する前から、俺と萌香はクラスメイトではあったものの、それほど喋るような仲ではなかった。まして、お互いの家など知るはずもない。


だが、それは何も不思議な話ではない。


萌香は、誰にでも明るい性格でいろんな人に好かれて周りには常にたくさんの友達がいた。

対して、俺はクラスの隅でラノベを読んでいるインキャだった。接点などあるはずもない。


そう考えれば、この数年間は、めちゃくちゃ大変だったが、悪い事ばっかりじゃなかったのかもしれない。


「っていうか、恭平、それパジャマじゃん!」


萌香が俺の服を指差して、驚くように言った。

俺は萌香に会った時から、ずっとこの格好だったから、気づくには、タイミングが少し遅い気もするが、まぁそういう時もあるんだろう。気にしないようにする。


「あぁ。起きて真っ先に萌香を探しに来たからな」

「むぅ〜。嬉しいけど!でも、このままじゃ学校に遅刻しちゃうじゃん!」

「まぁ、俺的には、萌香と合流出来たし、学校に行く意味もないんだが……」


すると、萌香は人差し指を俺の口まで持ってきて押し当てながら言った。


「めっ!だよ。恭平!私達は、ただでさえこの5年間、一切勉強してなかったんだから!!色々忘れてて、周りに置いてかれてるんだよ!」

「まぁ、確かにな」


こんな可愛いことをされてNO!と言える男などこの世に存在するはずもない。俺もその例に漏れないわけで…………

俺には同調するという選択肢しかなかった。


「じゃあ、ちょっと待ってて、萌香。今、制服に着替えるから」

「OK!」


次の瞬間、俺はまるでヒーローの変身シーンかのように光に包まれた。そして、その光が消える頃には俺の服は制服に変わっていた。


さっきの転移の後、魔力を心臓で堰き止めるのは、やめてしまったものの、まだ心臓には魔法を発動できるだけの魔力が残っていた。


それに、行使しようとする魔法も簡単なものなので、イメージの構築にも時間は全くかからなかった。


「それって、パジャマを制服に変えちゃったの?」


隣で俺が魔法を使っているのを見ていた萌香が興味津々といった感じで質問してきた。


「いや、ちょっと違う。一時的に、服を制服に変えてるだけだ。今かけた魔法を解除したら、すぐに、パジャマに戻る」

「へぇ〜。そんなことも出来るんだ!やっぱ、強いね、恭平は!」

「そりゃ、萌香を守らなきゃいけないからな。これくらいの力は必要だ」

「地球で普通に暮らす分には、魔王を倒すほど強い必要はないと思うけど…………でも、嬉しい!」


そう言うと、萌香はめいいっぱいの笑顔を見せた。


「じゃあ、学校行こ?」

萌香は、そう言って俺の手を握った。

俺も萌香の手を優しく包むように握り返した。


そして、二人は学校に向かって歩き始めた。


――――――


それから、二人で、周りの風景を見ながら「やっぱり地球っていいねー」なんて言いながら、通学路を歩いていた。


異世界にいた頃は、いつ敵の奇襲があるか分からなかったから、こんなに気を休めて、二人の時間を過ごせたのは、もしかしたらこれが初めてかもしれない。


「そういえば、恭平かなり太ったねー」

萌香が少し揶揄うように言った。


「そうなんだよなぁー。俺の体は、異世界に召喚される前の姿に戻っちゃってたんだよな」

「ふぅ〜ん。まぁ、この体の恭平もかっこいいけど!」

「そう言ってもらえるとありがたいよ。でも、近いうちに、ちゃんと絞るよ。萌香の隣にいても恥ずかしくないようにな」

「今でも、十分かっこいいけど、それなら、頑張って!」


そんな他愛もない会話をしていたら、いつの間にか、通学路をかなり進んでいたらしい。


次の道を右折したら、うちの学校の生徒がほぼ全員使う大通りに出るというところまで来た。


「ここを曲がったら、私達が手を繋いでるのが、皆んなに見られちゃうね…………」

「そうだな」

「皆んな、驚くだろうなぁ〜」

「だろうな。多分、不釣り合いだって噂されるんだろう」

「そんなことない!」


その瞬間、萌香はほっぺをぷくっと膨らませ、眉間に皺を寄せがら凄い勢いで話し始めた。


「恭平は、気づいてないかも知れないけど、この5年間で恭平は、普通の人が経験しないようなことをたくさん経験して、もの凄く成長して、普通の高校生、いや大人にもないくらい余裕があって………………すごく……かっこいいよ!」

「そ、そうか。ありがとう……」


萌香が普段、見ないくらいの勢いで捲し立てたので、すこし驚いた。

でも、それだけ萌香は俺のことを愛してくれてるってわけで………………なんというか、少しむず痒い感じがする。


「…………正直、今の恭平に惹かれる女の子、いっぱいいると思う…………絶対に浮気しちゃダメだよ?…………」


萌香が俯きながら、自信なさげに言った。


だから、俺は萌香を抱きしめて、それから、

「何も心配するな。俺は、永遠に萌香一筋だ」

と言った。


「約束だよ?……」

「あぁ、約束だ」


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