マティオリ インカーナ(見つめる未来)
月曜日、朝のホームルーム。
この高校は六月に球技大会がある。十月には体育祭もある。
しかも、十一月には学校祭。受験を控えた三年生にとっては地獄の一年となるだろう・・・。
そんな訳で、今朝のホームルームと一時限目は球技大会に向けた役員と種目決めとなった。
幸い、月曜の朝の俺たちA組は0時限目があるので、一時限目は自習というわけだ。
まずは大会役員を決める。
担任が立候補を聞く。が、率先して手を挙げる奴なんていないだろう。
「はい!」
おっと? ビックリだ。俺の前の席の相田くんが挙手をしたぞ?
「じゃあ、私も」
そう言って手を上げたのは丸山さん。
「他にいなかったら、このクラスの大会役員は 相田くんと丸山さんになるけど、いいかな?」
北村先生がみんなに聞く。
チラホラと拍手が聞こえ、役員はこれで決まりだ。
スゲーな相田くんと丸山さん。
ホームルームが終わり、次は出場する種目を決める番。
さて、俺はどうするか? 得意な球技なんてないんだけど・・・。
「エミくんは何にする?」
「俺、球技は何をやってもダメなんだよね。どうしよう・・・」
「確かに、エミくんって球技はダメダメだね」
剣道 二段。合気道 五段。
あー! 全く球技と関係ないじゃん!
「え? 青井くんって球技は苦手なの?」
話しかけてきたのは後ろの席の加藤くん。
「そうなんだよね。ドッジボールとか避ける専門だったし」
「ヨケセンだね? 俺も俺も!」
お? 加藤くんとは仲良くなれそうだぞ?
「マジで? それじゃ大会の時は一緒にいようぜ。なんかホッとしたんだけど」
「え? ガチ? 青井くんと?」
「え? って、傷つくんだけど・・・」
すると、加藤くんは小声になっていう。
「青井くんは人気あるから、俺と一緒だと迷惑でしょ?」
「俺は損や得で友達を作らないよ・・・。せっかくの高校生だぜ、一緒に楽しもうよ。てか、俺って人気あるの?」
「は? 気づいてないの?」
「は? って、もしかしてセリカのこと? 芹香は姉さんだよ?」
「いや、そうじゃなくて・・・」
加藤くんの顔は面白いほどに七変化をしている。
「エミくん、加藤くんをイジメているの? 大丈夫、加藤くん」
「いや、ちょが・・・違くて・・・」
加藤くん、ちょがって。
「芹香、お前の言い方がキツいんだよ。ごめんね加藤くん」
「なんでよ! ビシビシ! くらえワンパン! ビシビシ!」
「いや、ワンパンじゃねえし。 ヨンパンだし」
「ハイハイ、みんな静かに。って、騒いでいたのは名物姉弟だけだけど。それじゃ種目決めをやるから、相田くんと丸山さんは司会をよろしく」
あれ? 俺と芹香って名物なのか?
「加藤くん、俺と芹香って名物なの?」
「言いづらいけど、一年で知らない人はいないんじゃないかな? と思うよ」
ガーン・・・。
顔に縦線、ガーン・・・。
衝撃の事実を突きつけられ、俺と加藤くんはハンドボールの補欠となった。
* * *
放課後・・・。
帰りのホームルームが終わり、俺は加藤くんを呼び止めた。
「ヘイヘイ、加藤くん」
加藤くんはビクッとし、振り向く。
「な、なに?」
「明日の放課後ってヒマかーい?」
「べ、別に用事はないけど・・・」
「やった! そしたら、ハンドボールの練習をしない?」
「俺でいいの?」
「いいの? って、同じ補欠じゃん? 俺の球技ダメダメ具合を思い知るがいい!」
「オ、オッケー・・・」
「やった! それじゃ、俺は今日はバイトだから。また明日!」
俺は加藤くんと別れた。
「加藤くん、ごめんね。エミくんって結構さ、イケイケなところがあるから、嫌な時はちゃんと断ってね? 無理だけはダメだよ。それじゃまた明日ね。バイバイ。」
「待てぇ! エミ、一緒に帰るぞ!」
すごいな、あの二人。
こりゃ名物になるな・・・。




