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セリカシュン  作者: 青紙 ノエ
第1章 君の知らない物語

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 デュランゴフレーム(濃厚な愛情)


 

 五月下旬の金曜日、夜九時頃。


 バイトが終わり、着替えも終わったので裏の出口に向かった。

 俺のバイト先は叔父が経営していた系列の居酒屋。

 今は叔父の知り合いが経営をしている。と言っても、俺はその社長とは面識がない。まさか俺が青井朔太(さくた)(叔父の名)の甥っ子だとは思わないだろう。


「青井くんでしょ? ちょっと待って」


 帰ろうとした俺を呼び止めたのは和久井さん。

 この人は叔父の部下で秘書も兼ねているといっていた。


「和久井さん? お久しぶりです。その節は大変お世話になりました」

「もぅ、相変わらずかしこまちゃって。瞬くんとは知らない仲じゃないんだからいいのよ?」

「そういう訳にはいきませんよ。ところで、このお店に何か用事ですか?」

「用ですかって、あなたに話があったから、家に行こうと思ったのよ。電話じゃちょっと伝えづらいし、と思っていたら従業員名簿に瞬くんの名前があったじゃない。ビックリしたわよ!」

「従業員名簿ですか?」

「ああ、今は居酒屋の系列は私が代表をしているのよ。知らなかったの?」

「いや、求人募集で見たときは代表は知らない名前だったのでバレないかな? なんて…」

「あはは、あれはグループの統括の名前。CEOってやつよ。元は銀行員だったみたいよ」

「そうでしたか」

「そうそう、瞬くんに話があるから、一緒に帰りましょ。送っていくわ」


 和久井さんはそう言って俺を車に乗せた。


「そう言えば、入学初日から大変だったわね? 芹香ちゃんに泣きながら抱き着かれたんでしょ?」

「え? なんで知って…って、もしかして…」

「桜は私の娘よ。遠回しに、お前らはエミールって呼ぶんじゃねえぞ。って言われたって、ショックだったみたいよ?」

「いや、それは…」

「あとね、芹香ちゃんが瞬くんに張り付いているから、話もできないって。悔しがっていたわよ?」

「そんなことを言われても…、俺も芹香には会いたかったし…」

「あぁ、そんな深刻に考えないで。ただ、うちの桜とも仲良くしてあげてって事だから」


 話って今の事か?


「あ、着くわね。桜の話で脱線しちゃったけど、本題に入るわね」


 よかった! 桜さんの事かと思った…。

 和久井さんは自宅前で停車させた。

 そしてエンジンを切り話を始める。


「今から話す事はとっても大事な話。質問は最後に聞くわ。いい?」

「はい」

「シェルビーさんの妹のデジレさんは覚えている?」

「はい」

「実はね、母親。瞬くんのお婆ちゃんが亡くなってね、今は一人なの」

「え?」

「質問は最後ね」

「はい」


「肉親が一人もいなくなってしまったから、デジレさんは瞬君と一緒に暮らしたいそうなの。決めるのは瞬くん。瞬くんがフランスに行ってもいいし、デジレさんが日本に来てもいいって。一緒が嫌だったら、近くに住みたいそうよ?」


 しばしの間が開いた。

 質問をしてもいいのかな…。


「俺はデジレ姉さんと一緒に暮らしたい。でも、芹香とはもう離れたくないです」


 デジレ姉さん…もしかして俺の連絡先を知らなかったのかな…。


「了解。それじゃ決まりね。ちなみに青井社長の遺言で、デジレさんが日本に来たかったら俺の家で瞬と住むようにって、なっていたのよ」


 叔父さん、いなくなってまで俺のことを…。


「泣かないの、男の子でしょ? 芹香ちゃんに笑われちゃうよ?」


 俺が泣いていると、助手席のドアが開いた。


「エミくん泣かないで。今日は一緒にいてあげるからね」


 そうだ、金曜の夜は芹香がウチに泊まるんだった。

 

「和久井さんですよね? お久しぶりです。エミくんを送っていただきありがとうございます」

「いえいえ。芹香ちゃんも大人の雰囲気が出てきたわね?」


「あっ、それは無いです」

「エミが言うな! ビシビシ! シュッシュ! ビシビシ!」



 ああ、昔と一緒だわ…。

   ↑

 和久井氏、心の声。










 


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