グラマトフィラム(誰にも負けない友情)
四月十一日、金曜日。今日は二時限目より体力測定。
真新しいジャージを着て、それぞれ屋外グラウンドや体育館に向かう。
俺は翔と一緒に測定巡りをする事になった。
腕立てなどの測定は二人組で片方が記入係をするようにと言われたからだ。
ちなみに翔はアイダファミリーの藍田 翔の事だ。
「なあ瞬。今日の放課後ってあいてるか?」
「ああ、ごめん。九時までバイトだ」
「え? バイト? 大丈夫か?」
「学校から許可は貰っている」
「そうか…」
「誘ってくれてありがと。翔っていい奴だな」
「ははは。下心ありきだけどな」
「はぁ? まさか芹香か?」
「いや違う! あっ、ごめん…。違くは無くて…あの…」
「別にいいって。和久井さんだろ?」
「え? 気づいているのかよ!?」
「気づいてるって言うか、翔はああ言う女子が好きかぁ…」
(コイツ、気づいてねえや…)
↑
翔、心の声。
俺たちは体育館用のシューズに履き替え、最初の測定、身長と体重エリアに向かった。
翔は176センチ。
俺の身長は179.5センチ。あと五ミリで180じゃねぇかーい!
次に体重。
翔は62キロ。俺は52キロ。
その場にいた担任の北村先生に「青井くん、痩せすぎよ」と言われてしまった。
体育館内での測定がほぼ終了したところで昼休みになった。
俺と翔は教室に戻り、昼にする事にした。
教室に戻ると、結構な人数が戻っている。
「エミくん測定表見せて」
言い終わる前に俺から表を取り上げる芹香。
「お前、友達にはそういう事をやるなよ」
「ん? エミくんどした?」
「なんでも無い」
これは俺の時だけだな…。
「ちょっとエミくん、体重が52キロってどういう事? 三食、食べてないんでしょ!」
「大声で言うなよ…」
「だいたい、冷蔵庫を売っちゃうからでしょ!?」
「はぁ!? 瞬の家、冷蔵庫が無いの?」
翔が信じられない、と言う顔をして俺に聞く。
「あー、うん。両親の遺産は大学に行く時用で使いたくないしさ。高校の施設費を入金するのに、足りなくて売っちゃった」
なおも不思議そうな顔をする翔。
いつの間にか集まってきたクラスの連中も苦笑いをしている。
「ちょっと待て! 瞬の周りに大人はいないのか?」
「大人って?」
「その、親戚とか?」
「叔父は去年死んだ。 今は叔父の家で俺が一人で暮らしているけど?」
「そう言う事なのよ。エミくんは一人だから、お母さんがウチにおいでって言ったらしいんだけどね、来ないのよ」
呆れた顔で言う芹香。
「今さらだろ? ただの社交辞令だよ」
「まったく、捻くれ者なんだから…。まぁいいわ、お弁当を食べちゃおう」
芹香はそう言って俺にお弁当を渡す。
「その前に、芹香の測定表を見せろ」
俺はそう言って芹香の測定表を奪った。
そして芹香の体重の欄を見る。
「芹香…。」
俺は満面の笑みで芹香の頭を撫でてあげた。
「キー!! 見るなぁー!! ビシビシ!」
片山 芹香、身長152センチ。
体重46キロ…。