曼珠沙華(また会う日を楽しみに)
エミールとデジレの会話 『』カッコはフランス語とします。
「」カッコは日本語と解釈して下さい。
『ねえ、エミル? 何を責められていたの?』
俺と姉さんは駅前のドトールでお茶をしている。
『ああ。サクちゃんが函館に引っ越すらしくて』
『はぁ? なんでエミルが責められているのよ!』
デジレ姉さんは声を荒げた。
ちなみに会話はフランス語のため、今の俺は他のお客さんから見ると、姉さんに怒られているように見られていることだろう・・・。
『いろいろな偶然が重なってね』
『偶然って?』
いや、納豆の件はともかく、サクちゃんのパンツの色と柄まで答えたことは言えないでしょ!
『まあ良いわ。エミルがいいのならね』
『えへへ。こんな事はいつもの事だからね』
姉さんは呆れた顔をした。
俺たちはお互いに注文したコーヒーに口をつける。
『そうそう。この前、エミルとセリカが抱き合っていたじゃない?』
ブフォッ!
俺はコーヒーを吹き出す寸前で押し止まった。
むしろ、陸上で溺れかけてしまった・・・。
『別にそんなんじゃ・・・』
『私は賛成よ?』
『賛成って、なんの事?』
『セリカの事よ。愛しているんでしょ?』
ブフォッ!
ブフォッ!パート2である。
『うん・・・』
『アーン残念。私がエミルと結婚したかったわ・・・』
『姉さんにそう言われると嬉しいよ』
姉さんは嬉しそうにコーヒーを飲んでいる。
『ねえエミル』
『何?』
『エミルと私との距離は?』
『ん? 距離って?』
『私のまつ毛がエミルの頬を掠める距離?』
キャー!!
聞いていたんかーーい!!
俺は恥ずかしすぎてバックで顔を隠した。
『エミル、カッコ良かったわよ。あんなセリフが言えるなんて立派なプレイボーイね』
『お願い・・・。忘れて・・・』
『お前のまつ毛が俺の頬を掠める距離が好きだ』
『頼む姉さん! 言わないで!』
姉さんは恥ずかしがる俺を見て楽しそうに笑っている。
「セリカのまつ毛が俺の頬を掠める距離が好きだ」
「いや、姉さん。日本語で言っちゃダメでしょ」
隣の大学生風の女性が、俺のことを生暖かい目で見ていた・・・。
・〜・〜・〜・
ドトールで恥ずかしい思いをした後、俺と姉さんは帰宅した。
「遅かったね。二人でどこに行っていたの?」
芹香はすでに帰宅していたようで、夕飯の支度を始めていた。
「エミルとデートよ、たまには良いでしょ?」
「うーん。まぁ、たまになら良いよ」
芹香がご機嫌な様子で姉さんと話している。
「ねえ芹香?」
「何?」
「さっきエミルに聞いたのよ」
「何を?」
芹香が聞いても姉さんは微笑んでいる。
「何を聞いたの?」
「ふふーん」
姉さんは笑顔ではぐらかそうとしている。
「ちょっとエミくん? 何を言ったの!」
「いや、俺は別に・・・」
てか、言えねーし?
「セリカのまつ毛が、俺の頬を掠める距離が好きだ」
姉さんが芹香にそう言うと、俺はまたもや恥ずかしくて、床をゴロゴロと転がってしまった。
芹香は持っていたオタマを手から落とし、お手本のような体育座りをし、顔を隠している。
「はいはい。二人ともこっちにいらっしゃい」
姉さんはソファーの真ん中に座り、俺たちを両側に座らせた。
「あなた達はもう兄妹じゃないのよ?」
姉さんは俺たちを抱き寄せた。
「お互いに愛しているのなら恋人になりなさい」
「うん」
俺と芹香は示し合わせたように声を揃えて返事をする。
「よし、いい子たちね」
俺たち三人はしばらくこの体勢でいた。
「エミくん、姉さんの胸に興奮しているでしょ・・・」
「そ、そんなわけ無いだろ!」
「じゃあ何で、いつまでも胸に顔をあてているのよ!」
「違う、姉さんが!」
「エミルは甘えん坊さんね」
「ちょっと、姉さんエミくんを離して!」
何だよこれ・・・。




